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上を向いて歩いただけなのに視野が広がった今朝のお散歩の話。

犬の散歩中にゴミを拾うようになって、もうじき1年くらいになる。

今ではどこに出掛けても沿道や茂みに捨てられているゴミばかりに目が行き、拾いたくてうずうずしてしまうというおかしな病に侵されている。


今朝、窓から雨の様子を確認していたら、散歩に出掛けるタイミングがいつもよりも遅くなってしまった。朝ドラはリアルタイムで見たいし、雨も強くなったし。手にしていたハーネスをいちど元の場所に戻し、

「今日は特別、後で行こっか」

と、私の足もとに頭を突っ込み、お尻を突き出してくねくねしている愛犬の脇腹をわしゃしゃとしてやった。


そんなこんなで、いつもとはちょっとだけ違う朝のお散歩。
空はまだどんよりしていたけれど、雨あがりのせいか、ちょっと空気が澄んでいる気がする。いつもと同じルートで行く同じ公園が、どこかちょっと違って見えた。それで、というわけでもないのだけど、ただなんとなく、敢えて「ゴミ拾いをしない日」にしてみた。

そしたら、驚いた。

いつもだったら、
例えば、切り株の上に並べられた小石を見つけて童心に帰ったり

視野が広がる_写真_石

ツツジの花がボタボタ落ちるのを想像しておかしくなったり

視野が広がる_写真_つつじ

体の何倍もある戦利品を運ぶ蟻を見てしばらく応援してみたり。

視野が広がる_写真_蟻

こんなふうに、犬がいなければ気に留めることもなかった小さな発見に心を躍らせている。


でも、今日は、そういうものには出会わなかった。なぜなら、ゴミが視界に入らないよう、敢えて顔を上げて歩いたからだ。

そしたら、背の高い木の葉がバッサバサ揺れるのが見えた。

視野が広がる_写真_ハンドベル

いつも見ている木だけど、高さや位置によって枝の揺れ方が違っていた。それも当たり前なんだけど、そんなたぶんいつも見ていた当たり前の光景がちょっと違って見えた。それはまるで、公園中の木々が両手にハンドベルを持って楽しそうに演奏しているかのようだった。

すると、木々の演奏に合わせて風が額や頬に当たるのも感じた。いや、風だっていつも感じていたはず。でもその風の動きがひらひらと舞う絹のようになんとなく見えている気がした。

視野が広がる_写真_クローバー2

愛犬が、クローバーの上に残されたどこかのワンちゃんからのメッセージを一生懸命嗅いでいる間、私は深呼吸がてら、後頭部が背中につくくらい空を見上げてみた。

そこにはたくさんの葉っぱの裏側が見えた。

視野が広がる_写真_葉っぱの裏

これもいつも見ていると思う。けれど、風に揺れ葉っぱと葉っぱがカサカサこすれる音まで聞いていなかったかもしれない。葉っぱ一枚いちまいがさらさら震え、その合間から時々顔を出す太陽の光がこぼれてきた。

「上を向いて散歩したの、初めてだ」

思わず声に出してしまったら、クローバーの茂みに突っ込んでいた鼻を持ち上げ、愛犬が上目遣いで私を見た。

視点を変えると、見え方が変わる。
頭では理解していたけれど、こういうことなんだな、と妙に納得。

私は真面目な性分のせいか、何かを始めたら「続けてなくてはいけない」と思い込んでしまうところがある。無理をしてやっているわけではないが、融通が利かないので、他にやるべきことがあってもやめることができず、無駄に忙しく過ごしてしまうことが往々にしてある。何の生産性もなく、せっかくやっていることがプラスにならないどころか、他のことができなくなったり、新しいものに目を向けるゆとりがなくなったりというマイナスまで引き起こしている可能性も無きにしも非らずだ。

時には、「敢えて何かをやらない」という選択、「敢えて違うことをやってみる」という判断が、私自身をもっと成長させてくれるかもしれない。

ちょっとしたことから、思いのほか大きな気づきを得て大満足した私は、すっかり仕事をすませてへぇへぇとパンティングしている愛犬のリードを軽く引いた。

「さ、帰ろっか」

再び雲行きが怪しくなってきた空に、まだまだ梅雨真っただ中であることを知らされる。ゴリゴリと音を立ててぐるりと首を回し、足早に公園の出入り口へと歩き始めた。

「え?」

また声にしてしまった私に、愛犬も思わず足を止める。

ーびっくりだ。
 私、地面も空も、見えている。

視点を変えれば見方が変わる、というのは予想できた。ま、そりゃそうだな、と。でも、一度視点を変えた後に同じ景色を見ても、以前と同じようには見えないことに驚いた。

視野が広がった?

無意識にしていなかったことが、一度意識すると、無意識にできるようになった。見えていなかったものが、見えるようになった、ということだ。

すごいなぁ。視点を変えると視野が広がるというのはこういうことなんだ、といこうことを、何でもない普通の日に、身をもって知ることができた。ただ上を向いて歩いただけなのに。


突然、愛犬が、公園に入ってこようとしている赤い首輪のトイプードルを発見し、そのお尻に向かって猛ダッシュした。こうやって、すごい勢いで近づいてしまうから、いつも吠えられるんだよね。

ゼェゼェ言いながらグイグイ引っ張る愛犬に「はいはい」と着いていく私。案の定トイプードルちゃんは一瞬ビクッと怯え、すぐに怖い顔してワンワンワンと吠えて愛犬を冷たくあしらった。

「たまには、アプローチの仕方、変えて見たら?」

飼い主さんの横をちょこちょこと歩いて公園の中に入っていくトイプードルをいつまでも残念そうに見ている愛犬に、私は上機嫌でアドバイスをしてあげた。

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