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作家インタヴュー:休日フォトグラファー丸山正志さんの“ぜいたくな瞬間”

休日フォトグラファー、丸山正志さん。
休日があると、写真を撮りに出ています。
では普段は何をしているのかと言えば、実は仕事でも写真を撮っています。職場で広報の仕事をしていて、そこで仕事用の写真を撮ることも少なくありません。
そもそも、写真を撮り出したきっかけは仕事からでした。

“休日フォトグラファー”が生まれるまで

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21世紀になってそう経っていないある日、やっと広報の仕事を覚えかけてきた頃のこと、丸山さんに指令が下りました。職場内のイベントの写真を撮ってきてほしいと。
それまでは、写真を撮っているわけでもなく、むしろ、カメラが好きでもなかったそう。
「友達と遊びに行くと、必ず一人くらい『カメラマン』っているじゃないですか。でかいカメラバッグに三脚まで持ってくるような。毎回、その重そうな装備はどうなんだ、と思っているほうだったんですよ。」
けれども、人手不足だったために、急に一眼レフを持たされて、操作方法どころか持ち方もよく分からないまま、撮影に挑みました。
「それで終わっていればよかったんですけれど……」
何十枚も撮ったうちの一枚が、先輩にホメられました。しかも、いつもあまりホメないような先輩が、「そうそう、こういうのが欲しかったんだよ!よし、これをパンフレットに使おう!」と。

そこから丸山さんが写真にのめりこむまでには時間がかかりませんでした。気を良くして、次からはすすんで撮影に名乗り出るようになりました。おずおずと?いや、積極的に「私が撮りに行きましょうか」なんて。自分のカメラも買いました。改善点を見つけ、自分で勉強もしました。

「どっこいしょ」なカメラを相棒に

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丸山さんは話します。
「何かと、どっこいしょな感覚ですね」
どうにもゆっくりしているらしい。丸山さんの相棒のお話です。

丸山さんの相棒は、もちろんそのカメラ。
愛機はSIGMA(シグマ)のデジタル一眼レフカメラ。こう聞くと、ちょっと妙な感じを受ける方もいるかもしれません。ライトユーザーにはなじみのない名前だと思うからです。ニコン、キヤノン、オリンパスといったポピュラーなメーカーではない。「シグマのカメラ使っています」と言うと大半の方は「……シグマ、ですか?」と何とも言えない表情をされることが多いそうです。
では、プロカメラマンが使っているカメラかと言うとそうでもない。シグマは、レンズメーカーの印象が強いため、シグマのレンズを持っているという人は多くても、カメラ本体を持っているという人はそう多くないからです。
なんせ、どっこいしょなカメラらしいのです。
他社機に比べて、読み込みに時間がかかったり。

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「何度もシャッターチャンスを逃したことがあります」
たとえば、イベントの場合。イベントでは、人物の挨拶や、催し物のハイライトなど、押さえなければいけないタイミングが何度もあります。人物写真では、ほんのわずかな時間差で表情はにこやかになったり、シビアになったりします。これが、愛機では大変なのだとか。
撮ってから確認するまで「えーと…少々お待ちください…えーと…あ、出た」という感覚。
「ニコンやキヤノンだと、入門機であっても連写しても書き込みが早いので、すぐ確認しながら撮影ができる。けれど、それがない。なるべく一発で当ててかないと次の場面に移ってしまいますから、せいぜい2~3枚撮って、写真を選ぶときにはその中で決めることになります」

一枚一枚を丁寧に撮るタイプのカメラ

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ちょっと専門的なことですが、そもそもデジタルで色を表現するときには、赤・緑・青という3色を混ぜることで、複雑な色を表します。赤と緑を混ぜれば黄色になるといった具合。
一般的なデジタルカメラは、この赤・緑・青を、とっても細かなモザイク画のように並べて、一枚の写真にします。
シグマのデジタルカメラはそれが特殊です。赤・緑・青で表すことは同じですが、3色の層を重ねて色を表します。世界で唯一シグマだけが採用しているこの3層の「垂直色分離方式」で色を読み取るFoveon(フォベオン)というものは、仕組みの上ではフィルムにも近く、これによって、色のクオリティーという点で他と一線を画すつくりになっているそう。その構造の分だけ時間がかかります。
丸山さんは、一枚一枚を丁寧に撮るタイプのカメラだと言う。
「緊張感はすごい。けれど、それが逆に面白い。使っているという感じがある」
レベルアップも感じられるそうだ。昔撮ったものを、同じ場所で同じように撮っても、ピントの位置やぶれ方などが上手くなっていると感じられるそう。
上達が分かれば、嬉しくなるし、またのめり込んでいく。この気持ち、皆さんもきっと身に覚えがありませんか?

フィルムからデジタルへ

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仕事でカメラを持たされた当初はフィルムで撮影していました。やり直しが効かず、すぐに確認できない緊張感がありました。その意味でフィルムを経験できたことは大きく、幸運だったと話します。
今ではほぼデジタルで撮影しますから、メモリーとバッテリーの許す限り撮り続けていられますし、確認もできます。
クセのある愛機、シグマのカメラの最大の魅力はその吐き出される色と画像。いわゆる「当たった」時の画像は息をのむと言います。
しかし最初に買ってからしばらくは思うように使いこなせず、手ブレやピンボケに悩まされました。今では失敗する時のパターンも大体分かるようになり、当たる確率が上がっていると言います。「他のメーカーには変える気ないですよ」

休みの日の撮り方は?

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休みの日になると、丸山さんは自分で見つけた撮影スポットに足を運んで、カメラを構えます。
撮り始めて、ちょっと時計を見ると30分くらい過ぎています。まだまだと思い、撮り続けていると、気づけば3~4時間経っていることもあるそうです。
何百枚か撮ってバッテリー切れになったり、喉が渇いたりお腹が空いたりして、気づいて時計を確認する。朝から撮り始めていれば、太陽はとうに頭上にありますし、夕方からなら暗くなっています。

水玉という瞬間を形に留める

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丸山正志さんの写真の中で、インタヴュアーの私が好きなのは水を写したものです。河や滝はもちろん、蛇口から流れる水のしぶきを撮った写真。いっぱいの粒に光が反射しています。
流れている水は肉眼では一筋にしか見られないから、そこにカメラの面白さがあるなあと思います。顕微鏡でのぞくように、時間をクローズアップさせてみれば、いつもとちがう景色。
カメラは、瞬間を形に留めます。
何千分の一秒を自分で選ぶ。形に留めた一葉が、何秒なのかは、それぞれにちがっています。
流れる水のしぶきを無数の水玉としてとらえる時間。それはとても短い時間です。
丸山さんは愛機と一緒になって、そのとても短い瞬間を、どっこいしょと撮ります。「手間がかかることが好き」だと言います。なぜなら、自分が撮っているという感覚を味わえるから。

好みのシャッター音と一緒に時間を忘れる

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これから選ぶとしたらどんなカメラが良いのかと聞いてみました。
「手に合う物」と丸山さんは答えました。いつも持ち歩きたくなるようなもの。カメラもレンズもいかに自分がそのクセを早く飲み込むか。それには、年に何回かの特別な日だけではなく、日常で使ってみるに限る。実際、丸山さんと愛機とは何年もの積み重ねで合ってきたところがあります。
10何万円する立派なレンズを無理して買ったこともありましたが、そのレンズと相性のよい場面に出会うまで、とても時間がかかったそうです。
道具とはそういうもの。一つのヒントは、シャッター音と話します。それはフィーリングにも近いかもしれません。
カシャン、カシャコンッ。
好みのシャッター音を聴くと、気持ちがのる。時間を忘れて、時間をかけて、撮る。あえて。
時間は瞬間の連続ですが、瞬間は伸び縮みします。
休日フォトグラファーに撮られた、写真たちには、ぜいたくな瞬間が写されています。

丸山正志さん
http://qvf04120.wixsite.com/jp1ttr

(インタビュー 2017年ほか)

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