多国籍飲み会。6月23日。
4回目の巡礼アリエル
尾根に沿うように風力発電機が並ぶ。
山頂からの景色は、登って来た方向も、これから降りる方向も全部見渡せて気持ちの良い。
山を下りたところで少し話したのは、マドリードに住むペルー人男性のアリエル。70歳代だろう。この道は4回目で冬も来ているとのこと。
「アルベルゲはいびきがうるさいしご飯が高いから、僕はいつもテントだよ。たまに自転車の巡礼者が通り抜けて行くけど、理解できない。あれでは大事な自然の音を聞くことが出来ない」
「体力的に今回が人生最後の巡礼になるだろう。でも靴を買い換えないと最後まで持たない」。そう言って穴の開きそうな擦り切れた靴を見せてくれた。
その後は、ずっと1人。午後になると、見通しの良い場所で前も後ろも誰も見えない状況が続く。暑いし日差しが痛い。
この道は5㎞から10㎞の間にひとつの町があり、アルベルゲもある。泊まろうか次の町に行こうか迷う。その日のうちに乾かすなら洗濯は16時には終わらせたいが。
木陰で靴下まで脱いで休んでいると、男性が近づいてきて「これ君の?」と言って僕のサンダルの片方を差し出した。前に休んだところでザックに括りつけ忘れたらしい。
本人に渡せるかどうかもわからないのに5㎞以上持ち続けてくれた。
名前も交換しないで、彼は爽やかに歩き去った。
次の町まで、次の町までと思っているうちにビリャトゥエルタのアルベルゲ到着が18時になってしまった。
受付で夕食はやっていないと言われ、急いで洗濯を済ませて買い物に行こうとしたら、偶然金髪坊主のアイステ(21)が到着した。
多国籍飲み会
自販機で買ったカニ味のサンドイッチで食事を済ませた後、外のテーブルでビールを飲んでいたカナダ人女性テリスタンが声を掛けてくれた。
一緒に飲み始めたら、フランス人のルイクとニュージーランド人のエンジェラ、そしてアイステが加わって、いつの間にか「多国籍飲み会」になっていた。
テリスタンは、カナダのケベック出身だからフランス語が母国語だが、英語も流暢。「昔アメリカに行った時に、フランス語訛りでバカにされないかすごく心配だった」という話が印象的。テントで移動している。
「ケベックとパリでは発音が違うよ」とパリから来たルイクが言うが、よく分からない。彼女は5年ぶり2回目の巡礼の40代。
エンジェラも2回目の巡礼で、色々おススメポイントを教えてくれた。「有名な蛇口から出るワインは明日だけど、味は最悪」だとか。
アイステも、2人で話していた時とまた違う雰囲気で楽しそうだ。
町のお祭りらしい。すぐ近くの広場では、お祭りの格好の沢山の人が集まって、バンド演奏と花火で賑やかだ。
国の違いもまったく気にならない、とても楽しくて満ちた時間だ。
タイガーバーム
「筋肉痛だ」と言ったら、アイステが「ベトナムのいいクリームだよ」と持って来てくれたのは、僕の父親が愛用していたタイガーバームだった。借りて塗ったら不思議、翌日筋肉痛は収まった。
「足の裏の痛いやつ、日本語だと肉刺(まめ)って言うけど、英語でなんて言うの」って聞いたら、Blisterということがわかった。
「今小さいのが2つあるんだよね」と見せたら、他の人の足の裏にはもっと酷いのがたくさん出来ていた。痛くて辛いのは自分だけではなかった。
今日の写真
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