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【シカゴでバードウォッチング!】      Semipalmated Plover

暦の上では立秋も過ぎ処暑になり、暑さが収まってくる時期で、鳥類学会の人たちが秋の渡りが始まっていると声高に宣言しています。でも、実際にバーディングに行くと、鳥の数も種類も少なく、繁殖期が終わっているので鳥の鳴き声もあまり聞こえなくなっていて、ただただススキや茅が綺麗な穂を風にそよがせているばかりです。

先日の日曜日もそんな日でした。Red-winged Blackbird (前掲記事参照) の雄はほとんど渡って行っていなくなり、雌と今年生まれた幼鳥が群れをなしていたり、盛夏にやかましいほど大きい声で鳴き競っていたDickcissel (ムラグロノジコ、次回の記事の予定) はほとんど鳴かず、トンボと数種のswallow (前掲記事参照) たちがスイスイと飛んでいる静かな草原。そして、草原のあちこちで小ぶりの向日葵がススキや茅より高いところに顔を出して咲いていて、まだ夏だと主張しているようです。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」と独り呟きながら歩いていました。

ススキの上に元気な顔を出している向日葵たち     ©Dan Lory

と、突然、私の背後からス〜〜〜ッと飛んできた鳥があり、一見ツバメの一種のようでしたが、それにしては尻尾の両脇に白い部分が見え、ちょっと疑問に思いました。

私の目の高さを飛んでいったので、尻尾の両脇が白いことしかわからなかった。
上の写真のように見えていたら、ツバメとは思わなかったのですが・・・。     ©Dan Lory

すると、その鳥が前方の小径に着地してくれたんです。さあ、ここぞとばかりに双眼鏡で覗くと、それはswallowではなく、小ぶりのKilldeer (フタオビチドリ) のような鳥でした。私が、「何だ???」と思っていると、夫がいつものように "Semi・・・ Plover” と囁きました。

またちゃんと聞き取れない私は、Ploverはチドリだということだけわかり、シカゴのMontrose Beachの鳥類保護区にいるPiping Plover (前掲記事参照) のような鳥かなと推測しました。

そして後でゆっくりこの鳥の名前を聞くと、Semipalmated Ploverとのこと。さて、semipalmatedとは何か。semiとは半分を意味するラテン語の接頭辞。palmateとは、palm (掌)から派生して掌状、つまり掌のような形状、蹼 (みずかき) の意味。この鳥の和名「ミズカキチドリ (蹼千鳥)」が表すように、三本の趾(あし) の間に小さい水掻きがある千鳥ということです。

Semipalmated Ploverの脚のズームアップ。     ©Dan Lory
私は鳥の脚が大の苦手なんですが、この水掻きをお見せしたいので、目をつむって載せました。😣

この小さい水掻きがあるおかげで、採餌の際に、短い距離なら泳ぐことができます。雛もまた、親のあとをついて浅い湖の小さな小島まで短い距離を泳ぐことができるそうです。一度泳いでいるところを見てみたいですが、海のように大きいミシガン湖では絶対に泳ぐわけありませんよね。

Semipalmated Ploverは、Killdeer (前掲記事参照) に似ていると言われますが、Killdeerよりずっと小さく、首周りの黒帯は二本でなく、一本だけです。

これはKilldeer (フタオビチドリ)。二本の黒い首飾りが特徴。     ©Dan Lory

Semipalmated Ploverは、頭と背と翼が茶褐色、胸とお腹は真っ白で、前額に白い部分があり、目の周りは黒く、嘴は黒色で短く、付け根が少し橙色です。白い眉斑が少しありますが、はっきりとはしていません。そして、黒いネックレスが一本。

こちらがSemipalmated Plover (ミズカキチドリ)。一本のネックレスも細いです。       ©Dan Lory
右の趾に蹼 (水かき) が見える。斜め前から見ると、首がなくてズングリムックリしている。
©Dan Lory
「正面顔はいかが?顔とお腹の白い部分は、雪のように真っ白でしょ?」     ©Dan Lory

また、Killdeerのように巣を地面に作るので、雛がいる巣から侵入者を引き離すために親鳥は自ら囮となって「翼が折れた」ように振舞う偽傷行動をとります。餌は、虫や甲殻類です。

「おっ!獲物、みっけ!」と口を開けて興奮して近寄るところ     ©Dan Lory
「なあんだ。美味しくない虫だ!」とわかり、ムッとしている?!     ©Dan Lory

鳴き声は、こちらからどうぞ。甲高い声で短く鳴きますが、繁殖期にはテリトリーを主張したり雌にアピールするために、一秒に四回ぐらい鳴くそうです。

この鳥は、カナダ北部、アラスカで繁殖し、秋には越冬地のパタゴニアまで渡っていきます。今回私が出会った個体は、この渡りの途中でシカゴの公園に単独で立ち寄ってくれたのでしょう。シカゴに寄ってくれて、ありがとう!かけがいのない一瞬の出会いを、ありがとう!

確かに秋の渡りは密かに始まっているようです。シカゴからパタゴニアまでの距離を考えると気が遠くなりますが、無事に辿り着くことを願っています。

「ヘリコプターがうるさいなあ〜!」と上を見上げている。つぶらな瞳が可愛い。     ©Dan Lory
「疲れたので、ちょっと片足で失礼!」     ©Dan Lory
上の写真もこの写真も、ちゃんと嘴の付け根の橙色の部分が写っています。

Semipalmated Plover (ミズカキチドリ) は、日本には生息していないのですが、私が持っている『フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版』には、2006年と2007年に愛知県、2012年に千葉県で目撃された記録があると書いてあります。そしてインターネットで検索すると、2018年にも茨城県と愛知県で目撃されたそうです。ですから、運が良かったら日本でもこの鳥に出会えるかもしれませんね。お楽しみに!

右の鳥、Short-billed Dowitcher (アメリカオオハシシギ)と比べると、大きさがわかりますか。
  ©Dan Lory



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