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【シカゴでバードウォッチング!】物騒な名前の鳥

私が好きな可愛い千鳥科の鳥に、物騒な英語の名前とひどいラテン語の学名が付けられているんです。

この鳥は千鳥らしく茶色と白と黒で、白い喉の下にはっきりと幅広の黒い縞が二本あるので、日本語ではフタオビチドリ(二帯千鳥) と命名されていて、この鳥の特徴にちなんだ名前になっています。

フタオビチドリ     ©Dan Lory

ところが、英語名は、Killdeer、「鹿を殺せ Kill-deer」というんですよ。なんと物騒なこと!ラテン語の学名は、Charadrius vociferus。英訳するとNoisy Plover、つまり「うるさい/騒がしい千鳥」。日本語の名前の方がずっといいと思いませんか。

どうしてこのような名前が付けられたのでしょうか。

1758 年に、 スウェーデンの博物学者、生物学者、植物学者であり、分類学の父と呼ばれているCarl Linnaeus が『Systema Naturae』第 10 版にこの鳥の学名を記しました。といっても、スウェーデンにいたCarl Linnaeusは、アメリカに生息している鳥を見たことも鳴き声を聞いたこともありません。そこで、アメリカにいる動植物学者にこの鳥の特徴を聞くと、飛んでいる間中甲高い声で鳴き続けるのでNoisy Plover「うるさい/騒がしい千鳥」と呼んでいるという説明があったためラテン語名がCharadrius vociferusになり、鳴き声が二音節でKill-deerと聞こえるということから英語名がKilldeerに決まったそうです。

あの可愛い千鳥にひどい名前を付けたものです。All About Birdsのサイトのここで鳴き声を聞いてみてください。全然違いますよねえ〜。高音で鳴きながら飛ぶので、聴力低下気味の私にでもはっきり聞こえますが、どう聞いてもKill-deerとは聞こえません。

とにかく、この鳥たちは、人間に不本意なレッテルを貼られてしまったと思っているでしょうね。二帯千鳥に代わって私が人間たちに抗議したいような気持ちです。(笑)

日本のコチドリは、体長16センチぐらいですが、アメリカのKilldeerは20-28センチぐらいあり、かなり大きいShorebird (岸辺の鳥) です。でも、岸辺だけでなく、短い草が生えているところ、芝生の上、たまには駐車場でも見かけることがあります。

翼を広げると、46-48センチぐらいあり、飛んでいる姿を見るとかなり大きい
ので、声を聞かなかったら他の鳥に間違えてしまうこともあります。

さて、前回は猛禽類のCooper's Hawkの子育てについて書きましたので、今回はこの愛くるしいKilldeerの子育てについてご紹介しようと思います。

Killdeerは、空き地のようにひらけている地面の上に、ちょっとした窪みを作り巣にします。近くにいくつか似たような窪みを作って、猛禽類などの目をごまかすそうです。賢いですね!

平地の窪みの巣に座っている親鳥     ©Dan Lory

地面に作った窪地の巣に産卵するので、近づいてくる人間に卵を踏み潰されないように、親鳥は巣から離れたところに行って怪我をしたようなふりをして、人間の注意を自分の方に引きつけます。下の写真は、夫が巣があることを知らずに歩いていた時に見た、親鳥が懸命に注意を引いているところです。

怪我をしているふりをして注意を自分に向けている親鳥     ©Dan Lory
怪我をしているふりをして注意を自分に向けている親鳥     ©Dan Lory

動画をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。

夫は、怪我したふりをしていた親鳥の近くの地面に四つの卵を見つけたそうです。写真のように枯れ枝が敷き詰められ、まだら模様の小さい卵がありますが、よっぽど注意して見ないと、あまりの上手なカモフラージュで見落としてしまいますよね。その巣のそばに目立つ石があったので、夫は巣の場所を覚え、日々雛の成長の様子を観察することにしました。

四つの卵がある巣     ©Dan Lory

下の写真をよ〜〜くご覧ください。一つの卵はまだ孵化していませんが、三羽の雛がいるのがわかりますか。周りに溶け込んでいて、どれが雛か見分けるのが難しいですよね。上空を飛ぶ猛禽類にはこの雛たちはどのように映るんでしょうか。どんなに上手にカモフラージュしたつもりでも、目がいい猛禽類には鳥の雛だと知られてしまうのでしょうか。

三羽の雛と一つの卵     ©Dan Lory

その後、私もやっと雛を見に行くことができましたが、本当に小さくて、チョコチョコと忙しそうにすばしっこく動き回るので目で追うのが大変でした。本当にかわいかったですよ!もちろんかなりの距離をとって双眼鏡を通して眺めましたので、ご安心ください。

Killdeerのヒナ     ©Dan Lory
少し大きくなったヒナ     ©Dan Lory

四羽の雛が巣立ってしまった後には、巣がどこにあったかわからないほど、何の痕跡も残っていませんでした。Killdeerは水鳥ではありませんが、「立つ鳥、跡を濁さず」を実行していました。お見事!

この可愛らしい雛。怪我をしたふりをして雛を守る親鳥。キ〜〜キ〜〜と甲高い声で鳴くKilldeer。私が好きな鳥の一つです。

最後に、Killdeerに感謝したいことがあるので、それを書き加えます。この記事を書くにあたって、Killdeerの名前を記した分類学の父であるCarl Linnaeusのことを学んだんですが、どこかで聞いたことがあるような名前だなと思いました。そして突然、シカゴ大学の南の緑地に立っている青銅像とピッ、ピッ、ピッと繋がったんです。その青銅像は、植物学者のLinné (スウェーデン語の発音)ですが、それがなんとこのCarl Linnaeus (ラテン語名)なんです! 今までは、なんだか偉い学者さんのようだけど、私にはなんの関係もないわと思い、知らん顔して通り過ぎていたんですが、私の好きなKilldeerのことを18世紀に本に記した人なんだと思ったら、俄然親しみを覚え、自分で写真を撮りに行ってきました。下の写真がその青銅像です。

シカゴ大学の南側のMidway Plaisance ParkにあるCarl Linné (Carl Linnaeus)の青銅像

Killdeer、あなたのおかげで点と点が線でつながり世界が少し広がった!ありがとう!




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