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「裸足の季節」

トビウオたちの噂を聞いた、
鹿の角は流れついた古い枯れ樹を頭飾りにしてるんだって、
船着き場の桟橋は、多様すぎる言葉で埋まる、
異人が異人にかける声、ときに怒声と囃し声、

踵の削れた靴を脱ぎ捨て水のなか、
くるぶし付近に踊る小魚、
水平線から届くのは、真新しい南の匂い、
赤いブイは不安そうに揺れていた、
音なく寄せる波々は、生まれたばかりの砂を連れ去る、
代わりに虹の貝殻と、ココナッツの殻の小舟を、

波打ち際にて揺れ踊るのは星を眺めたかつての帆船、
黒い船が離岸するとき、それは沈んでゆくだろう、
そして深い夜の底、魚たちの家になる、

あの夏の、あの日のことが揺れ惑う、
幾億もの骨が混ざった砂の上、裸の足に灼けた其々、
窓辺に風でふくらむカーテン、水々たちは飛沫をあげて、
船待つ異邦人たちを、水の色の目で見てた、
光は波に砕かれて、乱れて散る散るトビウオたちと、


これはおまけ。

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