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【写真】stand by me,#slowlight

#slowlight

stand by me


 育った家の近くには廃線跡が残されたままだった。時折、黄色いディーゼルがサイレンを鳴らして、そのあたりで遊んでいる僕たちを追い払った。いまでも残っているのだろうか。もう戻ることはない。離れる前に歩いておけば良かった。

 映画「スタンドバイミー」への憧憬は、この景色から始まったに違いない。



 その廃線を南西に歩き続ければ、そこには海があった。瀬戸内海、播磨灘。喧騒の海水浴場にもよく足を運んだ。夏に台風が来るたび、誰もいない海で泳いでいた。危険についてなんて、考えないくらいに若かった。
 それから、ご来光もこのあたりでよく拝見した。



 その海岸近くにヨットハーバーがあった。取材で親しくなった、クルージング・カフェの女性陣に教えてもらったのだ。

 当時、どういうわけか、ある書籍に「イケメンクリエーターの枠で顔のわかる写真を掲載させてもらえないか」との話があった。まったく、身分不相応なので、最初は断っていたが、恩義のある人からの依頼でもあり、作品などにも触れてもらえるように頼んでおくから、とのことで、断れず、こんな写真を送っておいた。
 企画内容が変わったのか、クリエイターという紹介はされておらず、落胆した記憶がある。
「編集女子でいちばん人気でしたよ」とのお褒めの言葉をいただき、恐縮したが、いざ、その本を見ると、イケメンなんて誰一人も映っていなかった。なんとなく腑に落ちた気がした。


 ペーロン祭。みなと祭。川祭り。他にも色々と花火大会の多い地域だった。
 ビール片手に、イカ焼きや、串焼き。花火は音が好きだった。長く見ていない。行動原理はどこにいても変わらない。人混みが苦手なので、これから行くことはないかもしれない。


 感傷的になっているのは、なんとなく、疑問や不安と生きている証。僕はそもそも、とても感傷的な人間なので、それを振り払おうと強気を装うくせがある。
 思い出したくないことばかり憶えている。そんな記憶の累積に押し潰されそうにもなる。そんなわけにいくものか。
 今日も行こう。あの海へ。

 じゃあ、またね。ビリーでした。

photograph and words by billy.


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