【写真】this light your #slowlight.
春になると思い出す。
学生のころ、西村良太という友達がいた。
音響を学ぶ専門学校だった。この、#slowlight シリーズでは、いつも末尾に、そのころ、友人であった、西村良太の名言と迷言、不可思議な行動を記して終わっているのですが、その、大阪の専門学校にいたときのこと。
僕にとっては、唯一、幸福な学生時代を過ごせた日々でした。
四月に授業が開始され、二日目には講堂での座学に参加した。席は自由だったが、僕のすぐ後ろに、西村良太とヒロアキ・コマツが座っていた。なにげない挨拶から親しくなった僕たちは、その日の昼食を共にして、そのまま、二年間を過ごす友人になった。
あのとき。嬉しかったな。健やかに笑う二人は明るくて、優しい奴らだった。
いまでも、あんなふうな、すてきな友達なんて、ほとんどいない。僕は同性の友人が極端に少ない。友人関係が長く続くことも少ない。
小学生のときから、クラス替えが苦手だった。
友達ができなかったらどうしようと、いつも、悩んでいたからだ。
大人は楽だ。ひとりでいることを心配されないくてすむ。
西村良太、ヒロアキコマツと、もう一人、忘れることのできない人物が一人いた。初日のガイダンスから、どうにも熱すぎる視線を送ってくれていた、女の子だった。背が高く、ショートカットで、全身、ハイブランドに身を包んだ、どことなくハイパーな女の子だった。見るからに、装苑や、ヴォーグを愛読していそうな、どちらかというと、服飾関連の学校の生徒のような女の子だった。
「手を繋いでもかまへん?」
彼女はいきなり、そう言った。
目には視えない。
聞こえないが鳴らされている音。
そんなものはないと人は云う。
でも、それがあることを識っている人もいる。感知の外の感覚というのは、文字情報にはあらわしにくい。
感知できないのは、野性を失っているからだと知っている。そのことを知っている人は少ない。
僕は左眼に秘密を持っている。
photograph and words by billy.
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