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どんな香水もかなわない、春の貴婦人の香り
3月29日、
朝方まで激しく降っていた雨も、
昼前にはすっかり上がりました。
買い物がてら、
近所の公園に出かけたら、
池の周りの地面から、
ボクを呼ぶ小さな声が。
よく見ると、紫色の貴婦人が、
一斉に咲き笑っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1711701795536-qpBlicI3Zn.jpg?width=800)
タチツボスミレさんかな?
「もっとちかくにいらして。」
ボクは、そっと地面にひざまづき、
この貴婦人たちに顔を寄せました。
すると、えも言われぬ芳香が!
そうか、貴女たちは、
ニオイタチツボスミレなんですね。
「そうよ、よくおわかりね。」
一年ぶりです。貴女の香り。
他のどんな花よりも甘く上品で、
顔を近づけないと気づかない程、
微かで気品あふれる貴女の香り。
「タチツボスミレさんと、
あなた、見分けがつくかしら。」
並んで咲いていてくれたら、
多分見分けがつきますが・・・
「花のいろ淡く、
青き筋も淡く、
香り無き花が、
タチツボスミレさん。」
![](https://assets.st-note.com/img/1711703060866-LqITjk6vRu.jpg?width=800)
「花の紫濃く
青き筋目立ち
香り高いのが
わたしたち、
ニオイタチツボスミレ。」
![](https://assets.st-note.com/img/1711703214991-TwAUzaWm25.jpg?width=800)
ああ、
春の貴婦人たちが放つ香りの
なんとかぐわしきことか。
春のひと時、誰にも知られず、
その香りをそっと放ちながら、
貴女はひっそりと佇むのですね。
「あなたに見つけていただけたわ。」
身近な都会の公園で、
足許に秘かに咲く貴婦人たち。
もしみなさんも出会えたら、
そっとひざまづき、
顔を寄せてみてください。
どんな香水もかなわない、
春限定の微かな芳香に、
きっと驚くことでしょう。
貴女の名は、
ニオイタチツボスミレ。
![](https://assets.st-note.com/img/1711704254149-GXuyUia5NQ.jpg?width=800)
birdfilm 映像作家:増田達彦