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鳥公園WS「2020年に『2020』(作:西尾佳織)を飽きるほど読む」レポート

ご無沙汰しています。鳥公園アソシエイトアーティストの、そして、Youtubeの筋トレ動画のおかげで4分間の腹筋を日々のルーティンにすることに成功した和田ながらです。
2020年の7月から8月にかけて、「2020年に『2020』(作:西尾佳織)を飽きるほど読む」というオンラインワークショップを担当しました。この記事はそのワークショップの振り返りです。

ワークショップを始める前、どのようなイメージを持ってどのようにワークショップを設計したか、そもそも『2020』(作:西尾佳織)ってどんな戯曲なのか、などついては、参加者公募期間中にいくつか記事を書いていますのでそちらに説明を譲ります。

ワークショップについて その一(和田)
ワークショップについて その二(和田)
ワークショップについて その三(和田)
ワークショップについて その四(和田)
鳥公園ワークショップの詳細

では、上記の「ワークショップについて」で書いたわたしの欲望や仮定は、実際のワークショップにおいてどのような結果となったのか、検証してみます。

火金キャプチャ02

①いろんな土地からの

オンライン開催ならスケジュールさえ合えばどこからでも参加できます。都内でやっていたら関東圏の人しかアクセスできなかったということを考えれば、出会いの場としてのポテンシャルは爆上がりしてるじゃないですか。
ワークショップについて その三(和田)より

当初は東京都内のスタジオを借りて対面で実施する予定だった鳥公園ワークショップは、新型コロナウイルスの影響を受け、オンライン開催に切り替えました。
その結果、予想通りではありますが、出会いのポテンシャルが爆上がりしていました。東京を拠点にされている方が割合としては多かったのですが、京都・大阪・香川・兵庫・沖縄からもそれぞれ参加してくださった方がいらっしゃいました。交通費も移動時間も平等に負担なく、各地に散らばっているメンバーが一度に顔を合わせて声を通わせることができる。もちろんフィジカルな出会いをまるごとオンラインが代替できるわけではありませんが、馴れ初めがオンラインっていうのも悪くない話だと思いました。
WSで初めてお会いした方の中に、その後ご縁があってオフラインで対面できた方もいらっしゃいます。初めて会うわけじゃないんだけど、身体と身体にとっては初対面でもあるし…、と、なんと挨拶するのが適切なのか見失ってしまい、照れながら「初めまして」とか言ってしまいました。

②いろんな職能の人が

「上演をいったん度外視してテキストそのものにあたる」作業を、照明家や音響家のようなテクニカルスタッフをはじめ、俳優以外の専門性をもったパートナーとも一緒にみっちり過ごしてみたい、という欲望があります。
ワークショップについて その二(和田)より

今回のワークショップでは、普段読み合わせにプレーヤーとして参加しない方大歓迎、と添え、「対象」の幅を思いつく限り広げ、参加者を公募しました。

▶︎対象
照明家、音響家、美術家、衣装家、映像作家、舞台監督、演出助手、制作者、ドラマトゥルク、研究者、デザイナー、通訳、翻訳家、アーキビスト、俳優、ダンサー、作家、演出家、読書家、美食家、アクティビスト
上記のいずれかにひとつでも該当する方。経験の長短は問いません。特にテクニカルスタッフなど、普段読み合わせにプレーヤーとして参加しない方、大歓迎です。
WS募集案内より

蓋をあけてみると、応募してくださった方のちょうど半数が俳優もしくは俳優+αという属性。残りの半数は、制作者、美術家、照明家、ドラマトゥルク、研究者、演出家などなど、でした。応募者が定員を超えたために全員の方に参加いただくことは残念ながら叶わなかったのですが、「いろんな人と戯曲を読みたい!」という呼びかけが無駄ではなかったのだと思えたのは、とても励みになりました。
また、俳優の方から、多様なバックグラウンドの人と共に戯曲を読むことへ興味がある、という声が聞こえたのも、嬉しい反応でした。

③戯曲を読んで喋った

たぶんワークショップでは「なんじゃこりゃ、ここヤバい」とか「変なト書きだな!」とか「全然わからん」みたいなことを平気で言って、げらげらと笑ったりします。そして、「で、なんでこうなってるんだろう?」ということを、ほとんど脱線まがいの歩みで参加者のみなさんと一緒に考えていくことになります。ふだんのわたしの稽古のように。
ワークショップについて その一(和田)より

まさしく上記引用の通り、実際に行ったワークショップは、ぐねぐねと脱線しながら、おおいに笑い、おおいに疑い、そしてシュルレアリスティックなアイディアを投げつけ合う、まさしく稽古の初期段階のような、自由で豊穣な時間でした。

水土キャプチャ03

基本的な進め方としては「主人公やト書きの担当をローテーションしながら1セクションごとに読む→そのセクションについて議論」を繰り返していました。
議論パートでは、とにかく戯曲にツッコミまくっていた記憶があります。たとえば「ト書きが表現しすぎなのでは!?」とか、「(人をナイーブだと批評する)お前(主人公)も充分ナイーブだろ!」とか。ツッコみながらボケを分析する、ツッコみながらボケを分析する、という往復。『2020』が西尾さんの私小説的な側面を持った戯曲(かつ、自身の一人芝居として初演している)であることに起因したディスカッションも活発でした。それぞれが自分の経験や記憶をフックに連想していく場面も多々。作品の上演形式も、観客を巻き込む、ツアー型にする、など、さまざまなアイディアが生まれました。
脱線部分では、お互いの職能の実際をシェアしてみたり(たとえば美術家がどんなふうに作品に関わっているか、俳優が演技に対してどんなスタンスでいるか)、zoom越しになると捨象されてしまうのは何か考察したり。

④振り返り

参加者にとっては3時間半×5回、和田にとっては3時間半×5回×3チーム、という、とにかくぎっしり詰まった2週間半でした。
私にとっては、『2020』に深く踏み入っていけたこと、さまざまな人に出会えたこと、多様な職能の人と戯曲を読む可能性を感じたこと、オンラインでどこまで議論できるか感触がわかったこと、などなど、得られたものがたくさんありました。反省は、自分のスケジュールをぎっしり詰めすぎたこと。もう少しゆったり、時間的な射程を長めにとってもよかったかもしれません。
あと、「飽きるほど読む」というのは煽りのつもりでタイトルに入れていましたが、やはり二週間半ぐらいでは飽きませんでした。

ワークショップ終了後に参加者アンケートをとりましたが、回数や人数、長さといったワークショップの設計自体もおおむね高評価でした。なにより参加してくださった方の真摯なコメントが嬉しく、ワークショップであるのと同時にプラットフォームにもなりえたのではないか、と、小さく自負しています。

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⑤これから

ワークショップを計画していた当初は、2021年2月に横浜で和田演出の『2020』を上演しようという目論見がありました。ただ、この公演は、新型コロナウイルスの影響の長期化と鳥公園新体制そのもののコンセプトをあわせて考えた結果、行わないことにしました。
代わりに、というのがふさわしいかはわかりませんが、「公演というゴールをあらかじめ決めないまま人が集まって『2020』をつくりはじめる」というプロジェクトを始動させました。ワークショップに参加してくださった方の中から何人かにお声がけさせていただきプロジェクトチームを結成、2020年12月からオンラインで会合を重ねています。

また、この鳥公園の取り組みとは別に、このワークショップのスピンオフとして生まれる『2020』の上演がありそうです。

2020年が過ぎても、『2020』は続きます。

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