トラウマと自律神経の結びつきパート②

前回、トラウマと自律神経の関係について知ってもらうためにそれぞれの意味と役割について書かせてもらいました。 

トラウマと自律神経の結びつきパー①はこちら
https://note.com/bir_f23f/n/nf3db6729a474


今回はその関係について述べていきたいと思います。


結論から書くと、
トラウマ(心的外傷)のきっかけとなる出来事に遭遇した時に、自律神経はその状況に応じて適切な防衛をします。これは自らの意思で選んだことではありません。
だからこのメカニズムを知っておくと過去に起こった出来事について、そしてその時自分がとった行動に対して必要以上に自分を責めることなく身体の選択に間違いはないということを理解できるのではないかと思います。


詳しく説明していきます。

人が生きていく上であらゆる危険は周囲に存在しています。
自律神経はその危険に対して常に監視し状況判断をしています。

ではどのような脅威が存在するのでしょう。
現代においては死と直結する脅威というものは少なくなってきているかもしれません。
まだヒトが今ほどの文明を持つ以前は、常に死と隣り合わせでした。捕食生物が身近に存在していたからです。

例えば、あなたが外を歩いていると肉食動物に遭遇してしまったとします。
あなたは生きるために何かしらの行動を決めなければなりません。
この時、思考で行動を判断するのではなく自律神経が最適な判断を反射的にします。

闘争/逃走とシャットダウンです。

闘争/逃走を選択した場合
どちらの場合もすぐに身体が動くように調整しなければなりません。
そのため、交感神経が優位に働き、動くために必要な身体の状態にします。
脈拍を早くし血圧を上げ、呼吸数を増やし身体中の細胞に酸素というエネルギーを送り瞬時に動けるようにします。


シャットダウンを選択した場合は、副交感神経が優位となり身体を動かすことをしません。
爬虫類が死んだふりをするのと同じ状態になります。相手を刺激しないように動かずじっとして脅威が過ぎ去るのを待ちます。
脈拍はゆっくりとなり呼吸数も減少し身体は休止状態となります。


現代で考えてみましょう。
肉食動物は周囲に身近ではありません。
脅威は人間同士となっています。
戦争体験者は対戦国の兵士、
強盗や強姦にあった人は相手、
その相手が圧倒的に強く武器を持っているかもしれません。
自分よりも圧倒的に強いものに襲われる脅威は現在も存在しています。
その時、自律神経は闘争/逃走、シャットダウンを選択します。
暴力を受けた時に、争うのか逃げるのか身体を固めて身を守るのか。
どれが生きるために必要なことかを反射的に判断します。


以前、テレビドラマでいじめのシーンが描かれていました。
いじめを受けている子は何もせず、じっと相手が止めるまで耐えてその場を乗り切っていました。
この子の自律神経はシャットダウンを選択した訳です。

いじめ以外で考えても、強者からの抑圧というのは現代社会においても多く存在すると思います。
家族の中では親。
学校の中では教師や先輩、クラスメート。
社会に出れば上司や目上の人にもいるかもしれません。
成長する中で強者からの抑圧を受けた経験があると、その時自律神経は防衛として何かの反応をしたかもしれません。

その反応が記憶され、その時と似たような場所や場面を危険と判断したら
本人のわからないうちに
何故か攻撃的な行動や動悸や息切れを感じたり(闘争)
何故かそういう場を避ける、めまいや立ちくらみを感じたり(逃走)
何故かそこから動けなくなり失神したり(シャトダウン)
自律神経が防衛反応を起こしてしまいます。


先ほど書いたテレビドラマの続きに
他の子に『なんで何もしないの?』と聞かれるシーンがありました。
そう言われたその子は、何もできなかった自分を悔やんで悩んでいました。
『何もしなかった』ということを後から考えても分かりません。
あの時闘っていたら、逃げていたらと…理屈は後付けでいくらでもできます。

ただ、何もしないというのは自律神経が反射的にしたことであり、自律神経はコントロールできるものではありません。
自ら選択した行動ではないのです。
大事なことは生きているということ、
もし、襲ってきた相手と闘っていれば、命が脅かされていたかもしれません。


今回、トラウマと自律神経について書いたのは
メカニズムについて理解することで楽になれる人がいるのではないかと思ったからです。
『自分の身体の選択に間違いはない』
これを理解することで自分に自信が持てるようになる一つのきっかけになればと思います。


パート①に副交感神経には2つあると書いていました。
これは進化の過程で新しく生まれた神経です。
その神経は古くからある神経を応援しコントロールする機能を持っています。
この続きをポリヴェーガル理論入門という書籍を参考にさせてもらいながらパート③で紹介します。

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