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気分を上げて
どうも調子が戻らない、という人を秋川渓谷の散策に誘う。
目指すは室町時代創建の古刹で、この季節、境内に立つ黄金色に輝く二本の銀杏が素晴らしい。
昨年も色づき具合を見計らって行ったのに、前夜の大風で見事に黄色い絨毯になっていて、友人に見てもらおうと誘った私はがっかりだった。
初めて行った年は、ピークの色付きで、風が吹くとハラハラと黄金色の葉が夢のように舞い降りて、子供らが歓声を上げて走り回っていた。
渓谷を渡り、なだらかな里山を登って行く道傍には、野菜やきのこなどの無人販売所を庭先に置いている家が何軒かあって、これも楽しみだ。大きな柚子が5〜6個入った袋が200円、柿3個が100円、枯葉がついた地物のなめこも100円、などと嬉しいお安さで、帰りはリュックが一杯になる。
お誘いしたKさんは、ご自宅で、地域の高齢者が集うサロンを主宰しておられ、手芸教室、講演会、お花見会、食事会など多彩な企画で、常連さんが楽しみにしている。叔母も絵手紙や手芸の講師、食事作りでお手伝いをしてきた。
長年地域に貢献してこられた方が、緊急事態で活動を休止せざるを得ず、いざ再開という段になって気力が湧かないと嘆いておられる、と聞き、 気分転換になればと、叔母に声を掛けてもらった。
私がKさんにお目にかかったのは、今年の5月。春に叔母に作ったチュニックを見たKさんから、私にも、と請われてお家を訪ねたのが初対面だった。
品良く、物腰の柔らかい、チャーミングな方だ。
先代のご実家が、観賞魚を商って100年になる家で、叔母の実家の近所でもあり、楽しいから行ってくれば、と勧められて、この夏のメダカ飼育に繋がった。ご縁がキッカケで、思いがけずハマって(溺れて?)しまったのである。
出かけて行けば、こうしてひとや情報に出会い、それが次の出会いへとどんどん広がっていくのに、それをブロックするパンデミックは、なんと罪な災禍だったかと思う。
今月叔父の命日を迎える叔母には、一区切りの秋である。サロンの再開を楽しみに待っておられる皆さんの為にも、Kさんには気分を上げてもらおう。始動のエンジンを吹かさねばならないのは他人ごとではない。
色づき情報はネットでチェック出来るが、自然は人間の期待を外す。
無理のない行程、道すがらのお楽しみ、美味しい食事処まではツアー幹事として段取りできるけれど、さて、色付きとお天気はどうなりますか。
-to be continued-
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