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昆虫のすごさって 何?

昆虫の観察会はこどもに人気

 昆虫観察会の講師をずっとやっています。毎回、観察会の始めに簡単な資料を作って、観察するポイントを説明するようにしています。
 対象は子ども、小学生の低学年が大半です。参加は親子ですので、お父さんやお母さんに受ける話も入れたりしています。
 昆虫の観察会は、人気があって募集するとすぐに埋まってしまいます。

昆虫のすごさって 何? 

 昨年の観察会では、昆虫のすごさ、すばらしさの一つとして、変態に注目しました。

 変態、つまり形態が変化すること。お父さん向けに「人も変態する、しない?」「全然意味が違う」など、軽く受けそうな話もしましたが、本題はあくまで「昆虫の変態」です。
 まず、次のような成虫と成虫の写真を何種類か見てもらいます。(実際は3種類を例にしましたが、ここでは1種類にしています)そして次のように説明しました。

キアゲハ成虫
キアゲハの幼虫

 実際の資料の文章です。

昆虫は変身する

 3種類のチョウ、すぐ下の写真は、それらの幼虫になります。チョウは大きなハネを持ち、その色、もようもさまざまです。幼虫はイモムシ。だいたいはえさとなる植物に目立たないようにくっついています。
 キアゲハは、ニンジン、ミツバなどセリ科の植物につき、少し気持ち悪い色をしていて、怒ると角を出します。
 チョウの親子は、まったく違う姿形です。これを変態といって、まさに別の生物に変身してしまう感じです。

幼虫はひたすら食べ、成虫は大空へはばたく
 特にチョウの場合、成虫と幼虫、まったく違う形をしています。生活の仕方も違います。幼虫は、えさとなる植物の葉をひたすら食べて、どんどん脱皮をして、その都度、体が大きくなります。えさの植物があれば、移動する必要はあまりありません。動かず、とにかく食べて大きくなります。
 これに対して、成虫は大きなハネをもち、体の大きさも飛ぶことを考えて幼虫より体が小さくなります。成虫は、ハネが生えてくることで遠くまで移動して、結婚相手をさがすことができます。体もコンパクトで幼虫ほど食べる必要がありません。花の蜜を吸う程度です。幼虫のように食べることばかりでなければ、結婚相手探しや産卵に時間を使うことができます。

ハネの獲得
 地球上で最初に空を飛んだのは、鳥ではなく昆虫の仲間です。3億年より前にトンボやカゲロウの祖先がハネをもっていたことが、化石の記録からわかっています。翼竜の出現は2億年くらい前なので、1億年という長い期間は、昆虫が大空を支配していたことになります。
 ハネをもつことで、生まれた場所から遠くへ移動できました。花の蜜などで食べ物もすむので、より自由に行動でき、結婚して子孫を増やすことに専念できました。このように、今も昆虫が繁栄しているのは、ハネを獲得したことが大きいのです。

アオモンイトトンボ 子孫を増やす
オオシオカラトンボが飛び立つ 縄張り確保?
飛んで獲物をとらえたアオメアブ 

 ハネを使って自由に移動して、子孫を残したり(アオモンイトトンボ)、なわばりを確保したり(オオシオカラトンボ)、エサをとったり(アオメアブ)しています。

4 変身は一瞬だが、変態には手間と時間がかかる
実は、幼虫から成虫へと全く違う形や性質になるには、それなりの手間と時間がかかります。この間に、さなぎという時期を持つことで変身の準備をしています。
 さなぎはじっとしているようにみえても、その中身は大きく変化しています。幼虫の体のさまざまな部分をいったん溶かし、一見クリーム状にして、そこから成虫のハネやあし、眼などをつくります。静かな外見からは想像もできないくらい大きな変化が起こっています。

ハラグロオオテントウのさなぎ 内部で変身中

次回は、完全変態と不完全変態

 以上、完全変態を中心にして観察会の前に説明したことです。補足として、完全変態と不完全変態のちがいにもふれました。この話は次回にまわします。
 昆虫の変態について、ナショナル・ジオグラフィックに載った記事を見つけました。この雑誌、写真がとても美しいです。自分が撮った写真と比較してしまうと・・・・。私はちなみにDマガジンで毎号拝読しています。

#日経COMEMO #NIKKEI

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