ひよこでもわかる地球温暖化入門
はじめに
生命倫理相談所[1]の水島と申します。今回は広い意味で生命倫理にも関連する環境倫理の視点から地球温暖化について一緒に考えていきましょう。
第1章 地球温暖化とは何か
まずは地球温暖化について定義するところからはじめましょう。一般社団法人日本ガス協会は次のように定義しています。
つまり地球温暖化とは人類の行動により地球全体の気温が上昇し、さまざまな問題を引き起こすというものなのです。ただし注意していただきたいのは、あくまでも今回ご紹介したものは多数意見であり、このような定義に否を突きつける専門家もいます。
たとえば地球温暖化は、あくまでも地球のサイクルによって発生したものであり、人類の活動とは無関係だと指摘される場合もあります。しかしひとまずここでは多数意見に従って議論を進めていきましょう。
第2章 地球温暖化の原因と対策
さて、さきほどの定義をいまいちどふりかえってみましょう。地球温暖化の原因は二酸化炭素(CO₂)などの「温室効果ガス」が大気中に放出されるために発生するのでした。では日本や世界はこの温室効果ガス削減に向けてどのような対策を行っているのでしょうか?
「脱炭素チャンネル」様の「地球温暖化とは何かをわかりやすく解説!仕組みや原因、今後の対策も」[3]を参考に見ていきましょう。
まず1994年「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」が発行されています。こちらは「地球温暖化防止条約」とも呼ばれています。この条約に参加した国は、温室効果ガス削減のための政策実施の義務を負いました。
1997年には「京都議定書」が採択され、先進国は1990年比での温室効果ガス削減目標を定めました。しかし温室効果ガスの最大排出国であるアメリカが離脱するといった問題もあり、効果的な温室効果ガス削減にはいたりませんでした。
その後時代はより現代に近づき2015年「パリ協定」が締結されます。パリ協定では産業革命前を基準に、平均気温上昇を「2度未満」に抑えるとしました。さらに「1.5℃未満」を目指していこうという目標を定めています。
では具体的に地球温暖化を食い止めるためにはどんな方法が考えられているのでしょうか。ここではその取り組みとして「カーボン・オフセット」、「グリーン電力証書」、「J-クレジット」をご紹介いたします。
①カーボン・オフセット
つまりどういうことかというと、温室効果ガスを出さないように努力するとともに、森林を保護し、増やすことで温室効果ガスの一種である二酸化炭素を木に吸収させようという考え方です。
もう少し詳しく見るために、「脱炭素チャンネル」様の「カーボン・オフセットとは?必要性や企業の取り組み事例をわかりやすく解説」[3]も見てみましょう。
こちらのページでは「カーボン・オフセットは、地球温暖化を防止するために、経済活動や日常生活で排出される温室効果ガスを削減しようとする考え方、あるいはそのような活動の一つです」と定義されています。また「カーボン・オフセットは1997年、イギリスのNPO団体の取り組みから始まり、アメリカ・ヨーロッパを中心に活発に行われています」とも書かれています。
つまり日本が始めたものではなく、欧米から輸入した考え方ということです。
②グリーン電力証書
「脱炭素チャンネル」様の「グリーン電力証書とは?発行事業者やもらうメリットをわかりやすく解説」ではこう定義されています。
つまりどういうことかというと、企業はこのグリーン電力証書を購入することにより、環境保全や社会貢献をしているとアピールできるというものです。
ではグリーン電力とはなんでしょうか?
「グリーン電力証書とは?」では、「再生可能エネルギーにより発電された電力」とほぼ同義だと説明しています。
再生可能エネルギーとは石炭や石油といったいずれ枯渇するものをもちいず、太陽光や風力、水力、地熱といった何度でも繰り返し使用できる=再生可能なエネルギーのことです。
こうした再生可能エネルギーを用いた発電は石炭を使用する火力発電と比べて温室効果ガスの排出量が少なく、地球温暖化対策になると期待されています。
③J-クレジット
「脱炭素チャンネル」様の「J-クレジットとは?制度の概要や価格の相場をわかりやすく解説」[4]は次のように定義しています。
J-クレジット制度を一言で説明すると「CO2排出削減に貢献すると、国からクレジットとして証明してもらえる制度」です。経済産業省、環境省、農林水産省が、主に企業向けに運営しています。
「〇〇を通して、年間~トンのCO2削減に貢献します」というプロジェクトを国に認めてもらい、成果を報告することで発行されるのが「クレジット」です。
このクレジットは売却して設備の購入費用に充てることができたり、環境対策を実施しているというPRに使う事ができたりと、様々な用途に用いられます。
これまでの②と③について共通していえることは、温室効果ガスを排出している企業に対して、アピールポイントや現金(クレジット)というメリットを与えることでそうした行為をやめさせようとしているという点です。
結局のところ企業は、いえもしくは人類はと言い換えてもいいかもしれませんが、自分にとって短期的にメリットになることしかしません。企業としては温室効果ガスを減らせても倒産してしまっては意味がありません。我々個人個人にしても温室効果ガスを減らすために飢え死にしてもかまわないとまで言う、イエス・キリストのような人間がどれだけいるでしょうか?
しかしメリットだけで地球温暖化問題を考えるのは倫理的なのでしょうか。そこで最後に地球温暖化についての倫理的な側面をみてみましょう。
第3章 地球温暖化と環境倫理、生命倫理
そもそも地球は人間だけのものではありません。本来は地球の資源を食い荒らし、環境を破壊することは倫理的に許されないはずです。
たとえば人間以外の動物の場合を考えてみましょう。ライオンが草食動物をすべて食べてしまったらどうなるでしょう。ライオンは絶滅します。
草食動物が草をすべて食べてしまったらどうなるでしょう。草食動物は滅びてしまいます。だからこそ自然界にはそうした絶滅を回避するシステムがあります。
つまりライオンがたくさん草食動物を食べていけば、草食動物の個体数が減り、強いライオン以外エサにありつけなくなり、ライオンの個体数も減ります。ライオンの個体数が減れば草食動物が増えてバランスは保たれます。草食動物と草の関係も同じです。
しかし人間だけは違います。どれだけ地球環境を破壊しても個体数が減りません。それどころかこれからも個体数は増えていくでしょう。ただし我々の子や孫は我々が破壊した環境の分のツケを払わされ、我々が味わうことのなかった艱難辛苦を味わうでしょう。
そうしたことを考えたとき、我々が取れる倫理的な態度にはなにがあるでしょうか。ひとつはこれまで見てきたように、温室効果ガスを削減したり再生可能エネルギーを使用したりすることにより、将来世代へのツケを少しでも少なくすることです。
しかし我々は見てみぬふりをしがちですが、もっと手っ取り早い方法もあります。それは人類が絶滅することです。人類が絶滅すれば、地球はその再生能力によって、長い年月はかかりますが、豊かな自然を取り戻すことができます。
こうした「人類削減計画」が登場する小説として『L change the WorLd』があり、最近では考察系YouTuberのキリンさんも動画で人類滅亡後の未来について解説しています[5]。
私はこの章で2つのことを述べました。ひとつは我々が自分の好きなように生きればそのツケとして我々の子孫が苦しむことになることでした。そしてもうひとつが、人類が絶滅することこそが地球環境のためになるのではないかということです。
これらふたつを包括した思想として反出生主義というものがあります。反出生主義は、人生は苦しみなのだから子どもを生むことをやめ、段階的に絶滅しようという思想です。
理性的に考えたとき、我々は自分の子孫を苦しめ、地球を苦しめ、あらゆる動植物を苦しめる行動を繰り返しています。そう考えたとき、理性的に滅びの道を選ぶのもひとつの「正しい」選択なのかもしれません。
さて我々人類は理性的に絶滅すべきか、それとも本能のままに生き続けるべきなのか。あなたはどちらを選びますか?
[1] https://mobile.twitter.com/bioethicsclinic
[2] https://datsutanso-ch.com/other/earth-warming.html(最終アクセス2021年9月22日)。
[3] https://datsutanso-ch.com/credit/carbon-offset.html(最終アクセス2021年9月22日)
[4] https://datsutanso-ch.com/credit/j-credit.html(最終アクセス2021年9月22日)
[5] https://youtu.be/MLr8iEttD8A