倍速視聴、資本論、神話、ハレム

 
『映画を早送りで観る人たち』(稲田豊史、光文社新書)は、最近よく耳にする、いわゆる「倍速視聴」を習慣とする人たちの姿を浮かび上がらせる一冊。1.5倍速どころか2倍速で映画を観る人々も珍しくない。なぜそのような習慣が流行るのか。それは「作品を鑑賞する」のではなく、「コンテンツを消費する」という姿勢だからこそ、とにかく効率よく摂取することばかりが重視されていくからだという。私自身は倍速視聴をしない。といっても、いつも配信サービスのマイリストには観たい映画やドラマが山のように登録されていて、とても全部は鑑賞出来そうにない量だ。だが、そんな映像作品が溢れる時代だからこそ、観る作品との一期一会を大切にして、真剣に観ていきたいと思うから、あくまで個人的には倍速視聴はしないと決めている。
 


『マルクスの資本論見るだけノート』は、分かりやすすぎるイラスト図解と共に、マルクスの『資本論』の基本的な用語を解説していく。『資本論』に興味はあるけれど、長いし厚いしとても手を出す気にはなれない、という人はまずはこの辺りから読んでみるのもいいかもしれない。
 同じ宝島社から出ている斉藤幸平氏監修の『マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』、あるいはもう少し分量のあるものだと佐々木隆司氏の『マルクス 資本論』なども併せて紹介しておきたい。
 


『すごい神話』
 インド神話研究者の著者による神話学入門の入門、とでも呼ぶべき一冊。神話学から『鬼滅の刃』やFGOについて縦横無尽に語りは展開していく。決してゲームは詳しくないと前置きしつつも、FGOなどのゲームに挑戦していく著者の姿には誠実さを感じる。   

 
『ハレム』
 研究者による、オスマン帝国の後宮/ハレムについての本。ハレムというと、男が複数の女を侍らせるイメージが一般的だが、実証的な研究に基づく本書は、そんな単純なイメージをやんわりと変えてくれる。読んでいると女官と宦官たちが織りなす「ハレム」という空間と制度のあらましがよく分かる。教科書などで描かれるダイナミックな「政治」が歴史の表側だとすると、それらを支える「人間関係」と「制度」という裏側を描いたのが本書ではないだろうか。
 




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