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「市民社会に向けた社会実験」 アリスセンター設立35年での解散

2023年度 第23期総会を前に、noteでも法人役員のご紹介兼ねて、不定期連載ですが『役員の顔』をお知らせしていきたいと思います。
まずトップを飾るのは、現在監事をお願いしている【川崎あや氏】です。川崎さんはもともと日本におけるNPO法の導入の一翼を担った方であり、NPO法人まちづくり情報センターかながわ(通称アリスセンター)を組織化し、県域の草の根的な市民活動支援を果敢にされてきた方です。現在のご所属は(一社)インクルージョンネットかながわという団体で生活困窮者自立支援活動を行っています。

監事 川崎あや氏

「市民社会に向けた社会実験」 アリスセンター設立35年での解散

35年前の1988年、横浜市中区関内の雑居ビルの一室に、まちづくり情報センターかながわ(通称アリスセンター)という団体の事務所ができました。
NPOという言葉もまだなく、市民活動もボランティア活動か、開発などに反対する市民運動というイメージが大きかった時代、市民活動の情報交流や共同作業の場づくりのために、生協関係者、市民活動関係者、労働組合関係者、学識者などによって設立されたアリスセンターは、誰からも開口一番「何をするところなの?」と聞かれる存在でした。

学生だった私は、そんなアリスセンターの事務局にアルバイトとして加わり、その後そのままアリスセンターの専従スタッフとなり、事務局長となって2006年まで約18年間従事することになったのです。

環境、福祉、平和、人権など様々な分野の課題に、市民自ら取り組む市民活動が、神奈川県内でも増えていることを背景に、そうした市民活動の情報を発信し、情報交換しながら、市民が社会を創っていくことを目指したアリスセンター。そんな目的の団体の設立も社会実験でしたが、インターネットもなかった時代に、市民活動の情報誌を発行したり、新しい活動の立ち上げを支援したり、市民活動のネットワークの「事務局」を担ったり、それまではシンクタンクが担っていた自治体の調査研究を受託したりと、今考えれば、やってきたことの多くが「社会実験」だったと思います。

アリスセンターが発信し続けた『たあとる通信』

何より、市民活動団体が会費や寄付だけでなく、受託費などを得て、専従の有給スタッフを雇うということが当時の最大の「社会実験」だったと思います。1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立し、市民の活動が、NPO法人という組織で活動や事業を継続する時代になりますが、そのNPO法の制定を求めて、全国の団体と国会に議員回りもしました。NPO法ができてからは、多くの市民活動団体がNPO法人となり、アリスセンターも1999年にはNPO法人となりました。NPO法人にボランティアとして参加することも当たり前になり、NPO法人で働く人たちも増えてきました。

私は、2006年にアリスセンターを退職した後、2014年に再度理事としてアリスセンターの運営に参加しましたが、財政的にも有給スタッフを置くこともできないまま、理事の体制も整わず会員も減少し、2023年7月にはアリスセンターの35年の活動に幕を引き解散することとなりました。

2023年4月22日、アリスセンターの最後のシンポジウム「市民社会に向けた社会実験~アリスセンターの経験をバトンタッチする1日」を朝から夜まで丸1日かけて開催し、会場、オンライン参加合わせて130名を超える方が参加してくれました。
アリスセンターが、様々な社会実験を行ってきた時代(特に初期の時代)と今は、社会の状況も大きく変わっています。小さな団体が不特定多数に情報発信することなんて考えられなかった時代と、個人でもSNS等で簡単に情報発信できる今の時代で、市民活動の手法は大きく変わっているでしょう。また、社会の課題や政策なども大きく変化しています。子育て支援や介護などは、NPOの担い手も増えて、市民の日常生活に定着しています。

びーのびーのとの出会いはNPO法ができて2年後の2000年、立ち上げ期からのその活動幅を広げていく様子を見させて頂いてきました。市民の力で、おやこの広場を創るということも、まさに「市民社会に向けた社会実験」だったと思います。そしてびーのびーのや、各地に広がっている子育て支援の仲間たちの実践は、現在も「市民社会に向けた社会実験」を続けているのだと思いますし、今後もそうあり続けてほしいと思います。

今回のシンポジウムは、市民の力が社会を変えていくということ、自分たちに必要なシステムを市民がつくっていくということ、NPOがどのような思いや問題意識で社会に定着してきたかを振り返る機会にもなりました。それでも、社会にはまだまだ取り組む必要のある課題がたくさんあります。私が今代表理事をしている(一社)インクルージョンネットかながわは困窮や困難を抱える人を支援する団体ですが、困窮や格差はますます深刻化しているようにも思います。
アリスセンターの「市民社会に向けた社会実験」が市民の活動が、こうした課題に対応するためにも、常に社会実験を繰り返していくことの大事さを伝えられたらアリスセンターの経験をバトンタッチできたのかなと思います。びーのびーのの活動もアリスセンターから継承されたものを糧に進(深)化していくことを期待し、これからも応援していきたいです。

監事 川崎あや


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