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おれの創作

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小説や短歌など、つくったものがここにあります!
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#短編小説

【小説】Strange Brew

【小説】Strange Brew

 ぼくは、人に言えない秘密を持っている。といっても、少し法を破っただけだ。みんなからは、馬鹿にされることかもしれない。ムショに入ったとしたら、きっとぼくは真っ先にいびられ役を押しつけられることになるだろう。自分の食べるものはすべてボスに奪われて、裸で踊らされて、他の囚人たちのサンドバッグになるような、そういう具合の秘密なんだ。
 そうだ、きみのその飲んでいる紅茶はうまいか?程よく深みがあるよね。沸

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【小説】化ける

【小説】化ける

 異世界、それは不気味な憧れだろうか。
 見知らぬ世界が自分のすぐ隣に存在している、かもしれない。寝床に就いて目を閉じる。自分だったらどう行動しようか、異世界では己をなぜか力量のある転生者として描いているうちに、興奮して眠れなくなってしまう。未知の世界を切り開く第一線を駆けていく私。ああ、これじゃ眠れないや、水でも飲んでリセットさせようかと瞼を開こうとするのだが、なぜか開かない。いや、開けない。瞼

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【小説】煩いの食卓

【小説】煩いの食卓

 どれだけ、周りが己を否定しようと、自分だけは自分を守らなければと思いたかった。
「バスケなんか、楽しくやれてればそれでいいって思っちゃうんだけど」
つい、口をついて出た言葉に葵は驚いてしまった。彼はおそるおそる航希の顔を見る。いや、見ることはできなかった。汗が額を伝い、手に持っていた棒アイスから溶けた水滴が地面に落ちた。
「いや、それはそうとして、あんなきつい練習がんばってる俺らすごくね?」

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【小説】 生活の隙間で

【小説】 生活の隙間で

 だだっ広い体育館にガコンと重い音が響いた。シューズが床に擦れ、軽快なステップを踏む。静かだった空間に二人の学生が登場した。バスケットボールをつくと、心臓にぎゅっと圧力がかかって気持ちがよい。二人は放課後、誰もいなくなった体育館にこっそり来て、ひたすらシュートの練習をするのが日課になっていた。天井近くの窓から西日が射し、強烈な光がゴールと重なる。ボールはゴールから外れて床に跳ねた。
「42回?」

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