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びん詰め商品を通じて生産者と消費者がつながる場と地域の豊かさを再発見するきっかけをつくりたい

日本ガラスびん協会では、生産者の想いがこもったびん詰め商品を応援することで、ガラスびんを通じて“食卓から地域社会の活性化を目指す”『エシカルダイニング』を推進しています。今回はこの『エシカルダイニング』の思想に共感いただいた、『rinne ETHICAL MARKET』代表の斉藤圭祐さん(以下、斉藤)が取り組んでいる“地方から広げるエシカル消費”の活動を紹介したいと思います。

山口県下関市豊浦町の川棚温泉。豊かな自然が残るこの場所で、持続可能な生活、地球にやさしい生活をテーマに2023年の5月にオープンしたグロサリーストア『rinne ETHICAL MARKET』。斉藤さんはどのような想いでこのお店を始めたのか。そして自分の住む身近な地域社会からエシカルな思考や暮らしを体現し、広める取り組みについて、お話を伺いました。


※エシカルダイニングについて詳しくはこちら

rinne ETHICAL MARKETの外観

何もないと思っていた故郷が
とても豊かな場所に見えてきた

-『rinne ETHICAL MARKET』を立ち上げたきっかけを教えてください

(斉藤)
2019年から自分で立ち上げたプロジェクトデザインの会社で、大手企業のサステナビリティに関する事業開発や情報発信の支援を行っていました。業務に携わっていく中で、もっと自分の身近なところでサステナビリティに関する仕事をしてみたいという想いが強くなっていきました。東京などの都市部からサステナビリティを考えるのではなく、地方の地域社会の中で、自分も当事者の一人としてサステナブルな生活の方向性が見いだせないだろうかと思うようになったのです。そこで一大決心し、2年前にこの川棚温泉に移住してきました。

実際に移住して、どのような仕事をしようかと考えた時、これまで使ってきたサステナビリティ、マーケティングとかコンサルといった横文字で理論武装するばかりでは地域社会に馴染みにくいのではないかと考えました。私たちが大切にしたいのはこうした言葉ではありません。「私と妻の伝えたいことが体感できる場所をつくりたい」そして、「自然豊かな豊浦町の素晴らしさを、町の人たちとこの土地を訪れる人たちに、もっと知ってほしい」という想いで『rinne ETHICAL MARKET』をオープンすることにしました。

-なせ豊浦町川棚温泉を選んだのですか?

(斉藤)
下関の彦島に祖母の家があり、私もその彦島生まれというのがひとつのきっかけです。生まれて、一歳ごろまでいて、ほとんどは東京育ちなのですが。
東京に行ってからも、定期的に下関の市街や彦島に帰ってきてはいましたが、正直「元気がない町」だと感じていました。
しかし、2018年からサステナビリティ推進のプロジェクトに携わり、自分の中の視点やマインドが切り替わると、下関の景色が一変しました。こんなにも自然が残っていて、心豊かに生活できる素晴らしい場所ではないかと思えてきたのです。早速、下関市で持続可能な生活や地球にやさしい生活を広める活動をしている人はいないか調べたところ、豊浦町の川棚温泉にそのような活動をしている人が多くいることがわかったのです。

実際に、川棚温泉で有機農業をしている方にお会いしてみると、移住者はもちろん、元からこの土地に住んでいる人も、自然農法や再生可能エネルギーに強い関心を持っている人が多いことが分かりました。それで「この土地ならできる」と思いました。地形的にも私たちの生活に恵みをもたらしてくれる低い山に囲まれ、自然がたくさん残っており、ポテンシャルもある土地です。そしてなにより、すごく居心地が良かったのが決め手でした。

店内のエシカルダイニングセレクションのコーナーには全国のびん詰め商品が並ぶ

川端温泉は古くから
旅に出る前に英気を養う場所

-『rinne ETHICAL MARKET』で伝えていきたいこととは?

(斉藤)
店名は輪廻転生から取っています。「円」とか「つなぐ」という想いをこめており、地域の生産者と私たち、そして、お店に来た人とが出会える場所。自然環境や地域社会に配慮があり、生産者の想い(ストーリー)がこもった商品に触れることで、何か気付くことがあれば嬉しいと思っています。

-オープンしてからのお客様の反応はいかがですか?

(斉藤)
川棚温泉の人たちには温かく迎え入れていただいます。今では90歳のおじいちゃんやおばあちゃんが毎日コーヒーを飲みに来てくれますし、少しずつですが、地域の憩いの場として馴染んできているのかなと感じています。
また、エシカルな思考や暮らしを推進しているお店ということを聞きつけて、山口市や広島県、岡山県などから足を運んでくださる方もいらっしゃいます。東京で仕事をしていた時は、「エシカル」という言葉は特に環境意識が高い人にしか通じないと勝手に思い込んでいたのですが、日本全国に関心を持っている人がたくさんいるのだと実感しましたし、嬉しく思っています。

-なぜ、スムースに地域に馴染むことができたのでしょうか?

(斉藤)
昔から、川棚温泉は旅に出る前に訪れて英気を養う場所とされており、他の地域の人がよく訪れていたそうです。そのせいか、川端温泉では外から入ってくる人にとても寛容で、私たちが家をリノベーションする時も、近所の人たちは積極的に手伝いに来てくださいました。
「ロハス農園」という自然にも人に優しいオーガニック野菜を栽培する農園がありますし、各ホテルのオーナーさんも川端温泉の素晴らしさを積極的に発信したいという想いが強いように感じられます。こうした土地柄が、同じ想いを持つ移住者の誘致につながり、さらに活動が加速されるという循環ができているのだと思います。

びん詰め商品は外光を浴びで見た目も魅力的に陳列されている

『エシカルダイニングセレクション@rinne ETHICAL MARKET』を通じて、地域を越えて、同じ想いを持つ人たちがつながる

-今回、『エシカルダイニングセレクション@rinne ETHICAL MARKET』を
開催された理由を教えてください

(斉藤)
ガラスびんには温もりを感じるというか、想いが詰まっているような気がして、昔からびん詰めの商品が好きなんです。中身が見える安心感やガラスならではの見た目の良さもありますが、一番気に入っているのは、びん詰めの商品はその時期の美味しいものを詰め込む昔ながらの技法であることです。今、私もこの地域の野菜をブランド化したいと思っており、スープのびん詰めの製品化を目指しています。
こうした取り組みをしている最中だったので、今回お話をいただいた時は素直に嬉しく思いました。言葉は違えども、『rinne ETHICAL MARKET』と『エシカルダイニング』の想いは全く同じだと感じたのです。また、『エシカルダイニングセレクション』のコーナーをお店に設置することで、日本中のさまざまな地域で活動している生産者を紹介できるので、ここ豊浦町で頑張っているみんなの励みにもなりますし、このお店を訪れたお客様に気付きを得てもらうチャンスにもなります。私としては渡りに船で、二つ返事で協力させていただくことにしました。

斉藤さんは、川棚温泉に移住する前は葉山に住んでいた時期があるそうで、以前、ここnoteでも紹介した、びん詰め商品を製造・販売しているファームキャニングの西村千恵さんとも面識があるそうです。地域を越えて、同じ想いを持つ人たちがつながることで、より強い「円」が生まれているのだと感じました。

※ファームキャニングの記事はこちら

-サステナビリティという考え方は都市部以外でも浸透しているのでしょうか?

(斉藤)
正直、サステナビリティという言葉だとハードルが上がる気がしますが、「三方よし」など似た意味合いの言葉は昔から存在していて、地方でも有機農業など既にサステナブルな活動を行っている人がたくさんいます。
足りなかったのは、そういう想いのある生産者と消費者をつなぐ場所です。それが私たち『rinne ETHICAL MARKET』の役目だと思っています。

びん詰め商品は、単に並べるだけでなく、生産者の想い(ストーリー)も併せて紹介

自分たちの住む地域を見つめ直し
その豊かさ・素晴らしさに気づいてもらいたい

-苦労している点は?

(斉藤)
そもそもこの地域は豊かなんです。例えば農薬をなるべく使わずに野菜を作っている親戚のおじいちゃんがいたりするので、単にオーガニックですというだけではその価値は伝わりません。ですから、例えばそこに「耕作放棄地を活用する若い農家を支えよう」といった、その土地で頑張る人の想い(ストーリー)を加えることで、当たり前だと思っている自分たちの地域のことに、今一度関心を持ってもらえるような工夫をしたいと思っています。どんなものでも伝え方次第で人々に響きやすくなると思っているので、これからも知恵を絞っていきたいと思っています。

-今後の抱負を教えてください

(斉藤)
『rinne ETHICAL MARKET』の店名の由来になった、生産者と消費者との「つながり」や「円」をもっともっと広げていきたいと思っています。その中で、いい流れが生まれ、地域で循環していくようになればいいなと思います。明日開催(※)するファーマーズマーケットもその「つながり」を広げる活動の一つ。衣食住にエシカルな思考を織り交ぜたテーマのイベントを開催することで、地域で頑張っている人を応援し、地域活性化の一助なりたいと思っています。

※11/4に「Loca Connect Toyoura 湯町の朝市」が開催されました
https://www.instagram.com/local_connect.toyoura/



斉藤 圭祐
日本サステイナビリティ推進協会 代表理事
株式会社CLAVIS HELICE 代表取締役

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