「夜叉神峠の亡霊」〜準備〜1
1988年の夏、私と村田はある計画を実行した。
あの夏に体験した不思議な出来事は32年を経った今でも鮮明に記憶している。
私と村田は16歳だった。アルバイトで多忙だった私と、毎日の部活に勤しむ村田は、週に一度だけ町道場で汗を流した。当時は少林寺拳法を学び、二人とも初段の真新しい黒帯を腰に巻いたばかりだった。15歳の秋頃、近所の体育館に少林寺道場が新しくできると知った村田は、私を誘った。その気になった私の思惑は、ただ喧嘩が強くなりたいという安易なものだったが、修練を重ねるにつれ