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ジムでエクササイズしているババアになりたい。

本題に入る前に、”ババア”という単語を使っていることに釈明したい。”おばさん”や、もっと丁寧に”高齢の女性”という言い方も出来たのだが、”ババア”という表現が一番しっくりきたのでこの言葉を使わせてもらった。悪い意味でなく、愛を込めて”ババア”と呼んでいることを理解していただきたい。


ジムが無料で使える券を父から貰っていた。有効期限は今月まで。あと1週間もない。今日は雨も降っているし平日の午前中なら人も少なそうだし行ってみるかと重い腰を上げて自転車を走らせた。

ジムに到着し、服を着替えて(ほとんど脱いだだけだが)、マシンへと向かう。以前ジムに通っていた時期もあったので、トレーニング方法に関してはある程度慣れていた。ジムにはダンススタジオもあって、そこではエクササイズが行われていた。トレーニングの合間に横目でスタジオを見てみると、そこにはたくさんのババアでひしめき合っていた。というかほぼババアだった。

ババアたちは決して俊敏とは言えない動きだったが、真剣な顔でエクササイズに参加している様子だった。南米のカナリアのような色のウェアを身に纏い、右足を上げたり左手を下げたりしている。

わたしも負けじと集中してダンベルを上げ下げしていると、目の前の鏡に大量のババアがスタジオから出てくるのが映り込んできた。エクササイズが終わったのであろう。どうしても気になってババアを観察してしまった。すぐに帰るババアもいたが、仲間内で立ち話をしているババアやそのままマシンを使ってトレーニングを始めるババアなど様々なババアがいた。

そのババアの姿を見てわたしはふと「歳を重ねたらこんな風になりたい」という感情が沸き起こってきた。そんなことを思ったのは初めてだったが、平日の昼前からエクササイズをして、仲間と話したり思い思いの時間を過ごす。その後はジムの一階にあるスーパーで買い物でもして帰るのだろう。なんて平和で幸せな日々なんだ。残念ながら性別な意味合いでわたしはババアにはなれない。それがとても悔しいが、あの生活なら自分も目指せるかも知れない。でもそうではなく、もしかしたらわたしはババアになりたいのかも知れない。そうジムでエクササイズしているババアに。


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