イサーンマフィアは麻薬で自由を目指す
2019年1月13日、コンケン県の小学校サッカー場で麻薬代金支払いを滞らせたとしてレート君(17)が6人にリンチされ死亡した。その模様は動画に撮影されユーザーネーム「神様ゾロ(原文音読み:テープブットゾーロー)」のフェースブックで放映された。「痛めつけるだけなら3千バーツ。動画を撮影するなら5千バーツ」という条件で少年達を集めた麻薬マフィアボスの神様ゾロ。だがまだ幼い彼等は加減が分からず殺人事件に発展。そしてやはり1月13日、黒覆面にサングラスをかけた謎の人物が、メッセンジャーを通してマスコミに、「レート君を痛めつけるように指示したが殺せとは言ってない。現場がやり過ぎたのだ。家族に補償金を毎月1万バーツ払おう。もし要らないならタンブンしよう」と釈明した。その異様な絵柄はタイのテレビでも放映され「あいつは何者だ」と世間の注目を集めた。
麻薬売買だけなら見逃すタイ警察も悪質な殺人事件と見なし本格的な捜査を開始。その後次々と神様ゾロの指示で暴行や恐喝を受けた「麻薬代金未払い者」の被害報告が相次ぎ、麻薬マフィアに監視された村の実態が暴露された。
神様ゾロの正体は、2018年6月チェンライで逮捕者多数を出し、壊滅したとされた麻薬マフィア「マントゥックメット」の最高幹部でシャン州タチレクに潜伏中のパンナウィット容疑者(30)と判明。マントゥックメットは壊滅などしていなかった。幹部達はタチレクからネットを通してタイ側の下部組織に指示を出していたのだ。
※神様ゾロことパンナウィット・プラトゥム。故郷の人によれば子供の頃は大人しかったというが、最初の妻の自殺で何かが変わってしまったらしい。
彼とそのグループは過去にも代金を支払わない者を人を雇って制裁を加えていた。通常と言うのも変だが、麻薬マフィアが末端売人に麻薬を売るときは代金引き換えが常識。その後いくら儲けようが逮捕されようが売人次第となる。だが2018年6月、マントゥックメットはフェースブックを通し、「投資も要らず会費無料、国民カードがあればいい。すぐ麻薬売人になれます。お金は麻薬が売れてから振り込んでね」と金の無い麻薬中毒者にとっては夢のような条件を提示し、イサーン中心に暴走族などの少年達を集めた。2018年6月といえばチェンライで麻薬取り締まりが厳格化した時期。前述のフェースブックの告知を当局への挑発と見なしたタイ警察はマントゥックメット構成員数十名を逮捕。だが幹部達は既にタチレクにいて、そこから告知を出していたのだった。
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