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はじめてのアートコレクション術(その1)

「どんなことでもそうだけど、結局いちばんに役に立つのは、自分の体を動かし、自分のお金を払って覚えたことね。本から得たできあいの知識じゃなくて」 

ー村上春樹著「スプートニクの恋人」より

アートを買うということ?

こんにちは、「アート・イン・ビジネス –ビジネスに効くアートの力-」(有斐閣)の執筆陣のひとり、美術回路メンバーの若林と申します。本書の9章の中で僕たちは、アートとの関わり方の一つとして「アートを買う」ことの大切さを提案しました。そこで本連載では、「買う」ということをもっと掘り下げて、読者のみなさんと考えていきたいと思います。

日本人はアートを買わない?

日本人は世界で最も美術館に訪れてアートを鑑賞するようですが、アートを所有する、つまり「買う」ということには関心が低いようです。世界有数の経済大国でありながら、アート市場は世界の中でも僅かの割合しか占めていないようです。80年代のバブル経済の時期に、にわかにアート作品を購入し、瞬間的に大きなアート市場が生まれましたが、バブル崩壊とともに縮小してしまい、日本には根付いていかなったようです。

その背景として、アートを掛ける壁がないとか、作品をおける空間的なゆとりがないといった居住環境の問題もありますが、アートを生活空間に取り入れるというライフスタイルが根付いていないのかもしれません。しかし昔から掛け軸とか浮世絵とかを生活に取り入れてきた日本人ですから、きっと何かのマインドシフトが起きればアートのある素敵な暮らしや、アートコレクションを通じて美的センスを磨き、人生を豊かにしようと思う人々が増えていくと思います。

アートをコレクションするということ

こうした問題意識をもとに、アートに関心はあるけれど、まだ買ったことはないという方々を対象にアートの買い方やコツについてメモ的なお話ができればと思います。ただし、アートの購入といっても、単発的あるいは短期的な購入ではなく、長く続けられて、人生を通じて良質で独自性のあるコレクションを築いていくような購入を対象にしています。

もちろんアートの買い方には定型はありませんし、所詮自分のお金を使うので何を買っても自由かもしれません。あるいは、アートアドバイザーといった専門家の意見を聞いたり、優良なギャラリーに通ってとっておきの作品を譲ってもらったり、良質なコレクションを築く方法は多岐に渡ります。

しかし、今はインターネットが普及し、アートに関する様々な情報にアクセスできますし、現在はコロナ危機で行動が制限されていますが、飛行機でお気に入りの展覧会だけを見るために世界の都市に訪れることが可能になりました。また、アート自体もよりコンセプチャル化が進み、多様な表現が生まれています。21世紀も四半世紀を迎えるにあたり、アートヒストリーがまさに再編集されていると思います。そうしたまさにアートの激動期に、広い視野でアートにアクセスし、自分の眼を信じて、アートコレクションを築いていくことはとても素晴らしいことだと思います。

note1(若林)

限られた予算で豊かなコレクションを築くために 

せっかく身銭を削るわけですから、限られた予算を有効に活用しながら、良質なアートコレクションを築いていければと思います。本連載では、そのためのちょとしたヒントをお話しできればいいと思います(お節介かもしれませんが)。ただし、noteというメディアの特性上、体系的ではなく、エッセイ的に不定期に語っていきますので、お気軽にお付き合いして頂ければ幸いです。少しでも、アートコレクションの快楽を共有できれば嬉しいです(続く)。


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