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一生保有するつもりだった株を手放し私が手に入れたもの。

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2009年から保有していた株を売った。一時は3倍の価格にもなっていたし、思い出の株だったので一生保有しようと思っていた。

でも、あっさりと手放した。

本当の価値と交換するために。

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2009年。私は証券会社の会社員だった。営業職で毎日毎日お客様先を訪問する日々。辛いとかブラックだとか、そういうのは若かったのであまり感じていなかった。それよりも先輩や上司の背中を追いかけて成長したいという思いのほうが強かった。

そんな私がストックオプションで初めて株を手にした。私にとって人生初の株。株を持っているなんて、なんだか大人になった気分だった。

そのとき株の市場環境はどん底だった。でもだからよかったのだ。株は安いときに手に入れ高いときに売って利益をだす。その後株価はどんどん上がり、一時は3倍の値段にもなった。でも私は株を手放さなかった。というか手放せなかった。

お客様には利益がでたら売却して次の商品をご案内していたのに、そのたったひとつの株を手放すことができなかった。だって思い出がぎゅっとつまった株だから。

その後も、お金が必要なときに株を売却するという選択肢もあったけれどなんとなくまだ持っておきたかった。思い出がつまった株の価値よりも手に入れたい魅力的なモノが見つからなかった。

こうなったら一生売らずに持っておくのもありだな、そんな風に思っていた。

でもそんな思い出がつまった株を、私はあっさりと手放した。株価は最高値の3倍の価格から下がってしまったのにもかかわらず。

2018年11月。娘が生まれた。

その小さな小さな体と目や口・・。おもちゃのようだけど生きている、本物の人間だ。

最初から健康優良妊婦で、最後まで超スピード安産だった私はママになるという覚悟ができあがっていたのかわからない。

生まれたあとの産院でこれからはじまる育児への不安がぶわっと湧き出て緊張のピークだった。

そんな時、仕事で毎日忙しい主人が入院中、一緒に泊まってくれると言ってくれた。

私が入院していた産院は、プラス料金を支払えば付き添いの人が一緒に宿泊することができる。個室のランクで料金は異なるがシャワー付きの部屋もある。

そんなとき、株のことを思い出した。

〝そうだ、娘が生まれたし、こんなときのためにお金を躊躇なく使えばいいんだ〟

あの株を売却しようと思ったのだ。

ネガティブな言葉を使うのが嫌いで、常に前向きに考える私。でもこれからの育児、〝この命を死なせてはならない〟と重圧に押しつぶされそうになり心も体もギリギリだった。ついにある朝、小さなことがきっかけで涙を流した。いま思うと笑ってしまうくらいどうでもいいことで。そんなときにそばに主人がいてくれた。狭い病室のベッドで一緒に寝てくれて話をした。

それだけで心がすーっと軽くなった。

もちろん一緒に過ごしてくれ私を休ませてくれた主人のパワーはプライスレスだけれど、プラスαの個室オプションを迷わず選択できたこと。

株がある、という安心感。

結局今回は主人がお金を支払ってくれたけれど、あの思い出の株は私の心の支えになった。

お金は頑張ればいつだって増やせる。
コントロールだってできるもの。
でも心のゆとりは頑張って増やすことができないときもあるし、制御不能になってしまうことだってある。

そんなとき株は使えるのだ。心のゆとりを、お金を使うことで得ることができる。

株はそのまま持っておくだけでは何もならない。お金だって使わないとただの紙切れだ。

でもそのぺらぺらの紙切れが、生きいくうえで値段以上に大きな価値と交換してくれるときがある。

あの時頑張って仕事をし株を手にし、未来を信じ投資をし、お金を増やす選択をしてよかった。投資とは未来の自分を応援することができる最高のプレゼントだ。

これからも人生で最良の選択が、いつでもできるように未来の自分に期待をして投資をし続けていきたい。

さて、娘の誕生の記念に今度は何に投資をしておこうか。そしてそのお金はいつどのように使うんだろうか。今から楽しみだ。


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