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越境入学申請

引越しして、早4ヶ月半。住居とエンターテイメントビジネスを同時に兼ね備えているというのが決め手の一つだった。

そして予想外にも、部屋数があることでレコーディングにも使えている。外でスタジオを借りなくても、ドアを隔てて一緒に演奏しながら録れる!

いいところづくしの家だが、たった一つ、引っ越しを決めた時から、つい昨日までずっと気がかりだったことがある。

それは娘の学校のこと。今回の引っ越しに関しては、越境申請が通るだろうという、私には「根拠のない自信」があった。

次女Vitamin Eはまだ8月に高校生になったばかり。実は学校のプログラムと彼女の学力が合わず、小学校3年生、6年生の時に転校を余儀なくされた。

これまでは、それでも同じT学校区内の転校だったので、彼女の気持ち的には他のお友達と共有していたと思う。いつかまた母校の友人たちと会える、、、と。それが引っ越しを機にその夢が揺らいだ。5月末に引っ越ししてから夏休み中もずっと「私は新学期からどこの学校に行くの?」と、彼女の心はその事でいっぱいだったはず。

夏休みの補修校の折に彼女の不安は爆発し、スピーチセラピーの先生に、うっかり自分が引っ越しした事を話してしまった。スピーチの先生から「Eにとっては守りきれない秘密、、、だったと思う。聞いてしまったから、、、でも越境手続きはちゃんと済ませないと、こっそり通うことはできない」などなど個人メールまで頂いた。わかってはいたのだが、越境申請をしたくても新しいL学校区側は夏休みで誰も対応してくれず、サマースクールの方では申請が通るまで、T区の学校にそのまま通っていいと言われていたのだ。

越境申請の経緯は。。。

まずは、新しい学校から抜ける申請をしなくてはならない。申請は年々厳しくなり、まず学校区内の生徒から優先的に越境できる。そのほかの例は、親がその学校区内で働いていることの証明がない場合、ほぼ受け付けないということになっているらしい。引っ越しを決めた時、みんなから「越境できるのか」という、そのことを心配された。私も実際そのことが気になってこれまで20年弱引越しできなかったこともある。

「根拠のない自信」はあったが、念の為万が一元のT学校区に行けなかったら、、、ということを踏まえて、策を練った。

新しいL学校区で先生をしている、生徒の親御さんから、素晴らしいプライベート学校があるからと勧められた。そこは以前も学習障害の娘を気遣って推薦してもらった学校だ。あまりにも高い学費(私立大学の学費と同じくらいで年間3万ドル)で躊躇した経緯があったが、今回もそこへ行くことを勧められた。

というのも、引っ越ししたところの学校区の学力?が、今までのところと比べて雲泥の差なのだ。内心「学習障害の娘も、普通クラスに入れるのではないか?」と思わせられるほど。

実際 IEP (Independent Education Program)に入っているので、新しい学校区でも、その適用はある。(ドクターのお墨付き)でも、そのプログラムの質が期待できないというのだ。

プライベートのその学校は、なんと今住んでいる家から車で6分。奨学金の申請などしたら、ひょっとしたら、行けることになるかもしれない。。。夏休みももう終わる頃で8月に入っていたが、急遽見学させてもらうことにした。

学校のキャンパスは、絵に描いたようなリラックスできる空間。学校方針も素晴らしい。なんと生徒3人に対して先生が一人付く手厚さ。自分の娘が「学校に行きたくない、、、」と言ったら、ここに連れてきたら絶対大丈夫というような、優しさに包まれた学校だった。一年の学費が3万ドル、、、納得できる。

一緒に見学に行った肝心の娘の反応は、一言

「過保護すぎるのは嫌だ」

もし越境申請が通らなくて、L学校区に馴染めず、万が一の時のために保険のつもりでの学校見学だったが、彼女の一言で、心は揺らぐ。学校は彼女の人生のために行くのだ。彼女が一番希望していることは、「みんなと一緒になりたい」ということ。

親としては、子供の命が一番大事。身の危険を冒して新しい学校区に進学して馴染めないで、友達誰一人いない学校で、彼女の全てのやる気を削ぐようなことになったら、、、という心配。お金で解決できるのならとも考えたけれど、だからと言って「過保護すぎる」という彼女の望んでいない学校に入れることが、私たちの望んでいることとではない。。。

T学校区の彼女の通っていたクラスはその言葉通り「過保護すぎる」クラスだった。ほとんど冒険らしいことは何もなく、授業ですら「生徒にストレスをかけてはならない」という教育方針のもと、宿題はもほとんどなく、彼女にとっては刺激の少ない退屈な日々を丸三年過ごしてきたに違いない。そのうち一年半はコロナの影響も受けていたから、思い出らしい思い出、友達らしい友達もできないまま。

私も、この学級を繰り返すのなら、彼女にとって学校へ行く意味はあるんだろうかと、疑問を持っていたのだ。

そのプライベート学校見学から二日後なんとT学校区から電話があり、彼女の進学校が母校に戻ったと連絡が入った。特別学級のレジストレーションが決まっていた二日前だ。IEPはそのままだが、SPECIAL からSTEPと言うカテゴリーになり、もう少し独立して普通学級と同じカリキュラムで学べるようになったのだ。(一部のクラスを除く)

そして晴れて、一番通いたかった学校に通えることになったので、心身ともにリラックスして、新しい友達にも恵まれて、VITAMIN E は日々満喫している。まさに彼女の長年望んでいたベストの境遇だった。昔の友達と一緒の学校に行き、移動教室で勉強している。恋バナもあり、青春真っ只中。

申請の際、周りの境遇に優しい人が多く、T学校区のオフィスの人にも「Don't Give Up」と励まされ、L学校区のオフィスの人からも、「彼女のベストな学習環境を提供しましょう」と言ってもらえて、それが現実になったことに感謝します!

その間L学校区の申請はLAカウンティー申請まで繰り上がり、数ヶ月経て、今週、晴れてT学校区への正式な越境入学申請手続きが完了した。

根拠のない自信が、本当になって良かった。


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