ベルリオーズ博物館に行きたい? 遠いけど面白い場所ですよ
現在では博物館になっているベルリオーズの生家に行ってきたので、そのことについて書く。
ベルリオーズ、誰?
作曲家のエクトル・ベルリオーズのこと。
代表曲? 今でもよく演奏されるのは「幻想交響曲」。これは失恋で絶望してマリファナを吸いながら書いた、美しく狂気じみた曲。
他にも、序曲「ローマの謝肉祭」、かっこいい上に編成が大きすぎる「レクイエム」、ヴィオラ協奏曲のレパートリーとしても有名な「イタリアのハロルド」など。有名な曲はあるけど、割愛。
作曲家の生家なんてものは、知らない人には楽しくない場所。これもまた、ベルリオーズを知らない人には用がない話。
ラ・コート=サン=タンドレ
ベルリオーズは1803年、フランスのイゼール地方、ラ・コート=サン=タンドレで生まれた。
ラ・コート=サン=タンドレ? それどこ? 田舎です。
観光客が行くような場所ではない
ラ・コート=サン=タンドレは、Wikipediaなんかを見るとリヨンとグルノーブルの中間あたりにある、というような書き方をされている。中間という表現には語弊があるようにも思うのだけど、それ以外に表現しようがない立地。
もし行きたければ、車で行くのが一番無難だ。リヨンからは1時間、グルノーブルからは40分ほどで到着する。
ちなみにタクシーはほとんど走っていない。配車サービスも同様。UberもBoltも、ドライバーがほとんどいない。車で行けないのなら、公共交通機関を探すしかない。
アクセスが悪すぎる
ラ・コート=サン=タンドレには駅がない。徒歩圏内にも駅はない。GoogleMapsで経路検索しても、経路が出てこない。
しかし、ベルリオーズ博物館の公式ページには、次の4つの駅からバスが出ていると書かれている。
・グルノーブル(Grenoble)
・ヴォワロン(Voiron)
・ブルゴワン=ジャイユー(Bourgoin-Jallieu)
・ヴィエンヌ(Vienne)
ここで注意すべきことは、路線が4本あるといっても選択肢が4つあるわけではないということ。なにしろ本数が少ない。さらに曜日によって運航していなかったり、停車するバス停が限られていたりする。往路はあって復路はない、なんてこともざらにある。
イゼール地方交通(Transisere)のサイトで、それぞれの路線の時刻表を検索し、行き帰りそれぞれの時間を調べる必要がある。
我々が調べた10月のある水曜日は、次の行程が見つかった。
行き:12時30分ヴィエンヌ発
帰り:18時00分ラ・コート・サン・タンドレ発
このときはこれ以外、まともに使えそうな時間のバスはなかった。1本逃すと次がない。
ヴィエンヌ駅までの電車(TER)は、1時間に1本程度ある。他の駅も同様の間隔で電車が走っている。バスの時刻に合わせて予めフランス国鉄のサイト(Oui.sncf)で切符を買っておくといい。
バスの乗り方
バスの料金は前払い。口頭でどこまで行きたいか運転手に伝え、料金を支払う。するとレシートのようなチケットがもらえる。カードが使えるかどうかは不明。
降車ボタンはない。そして、停留所の名前が表示も、アナウンスもない。乗客は降りたい停留所が近づいたところで、おもむろに席を立ち出口に近づく。おそらく地元住民しか乗らないので、停留所について知らせる必要もないのだろう。部外者には厳しい。
でもご安心を。ラ・コート=サン=タンドレのベルリオーズ広場は、終点。ヴィエンヌ駅も、終点。最悪寝てしまっても大丈夫。
着いた
ヴィエンヌ駅からラ・コート=サン=タンドレのベルリオーズ広場までは、片道1時間10分。長い。
到着すると、終点だから降りるように言われる。バス停らしきものはなく、駐車場のような広い場所にベルリオーズの像が立っている。ここがベルリオーズ広場。
ベルリオーズ像
ここからは近い。徒歩5分ほどで目的地に到着する。
歩いていくとひとつだけ、お店とも住宅とも似つかない建物が現れる。これがベルリオーズ博物館。ベルリオーズが生まれ、18歳でパリに行くまでの期間を過ごした家だ。
博物館に入る
入り口を入ると、まずミュージアムショップ兼受付に。
入場料は無料。係の人から、住んでいる場所の郵便番号(または来た国)を聞かれるので、答える。
オーディオガイド(英語またはフランス語)が必要かどうかも聞かれる。こちらも無料。
館内の説明の文章はほとんど全てフランス語なので、フランス語が読めない人は英語のオーディオガイドを借りるが吉。フランス語が読める人も、たくさんの解説がオーディオガイドの中に入っているので、受け取ったほうが楽しい。
オーディオガイドを受け取ったら、見学経路の説明を受けて、見学を開始する。
館内
順路は1階から順番に上に上がっていくので特に難しいことはない。
1階(仏式0階)は、ベルリオーズの生涯についての展示がある。
これはベルリオーズがどんな時代を生きていたのか? のまとめ
上の階に上がると、実際にベルリオーズ一家が使っていた部屋を見ることができる。
少年エクトルの部屋。卒業証書が貼ってある。
(これは何の部屋だったっけな……)
この右に進むと、エクトル・ベルリオーズが生まれた部屋に。
その上にも、まだまだ展示室がある。
録音メディアの発達について、と思しき展示室。いろいろな蓄音機・レコードが展示してある。ファウストの劫罰のレコードがあったので写真を……
最上階にはベルリオーズが書いた手紙、執筆した本、取材したコンサートのメモ書きなどが大量に展示されている。ものすごい量。
オペラ「トロイアの人々」のイメージ
全て見終わったら下まで降りて行き、地下1階の企画展へ。
我々が行ったときはTrop fort Hector ! という企画展が開催されていた(2019年12月31日まで)。
この企画では、世界各地で作られたベルリオーズの彫刻、肖像画、その他色々なものが集められている。ベルリオーズの顔だらけの企画展。
その他にもチラシなど、こまごまとしたものがこれでもかというくらい大量に並べられている。すごい。
第一次世界大戦の追悼のためのコンサートの招待状。
1927年5月28日、ガブリエル・ピエルネ指揮、ベルリオーズのレクエイム。パリ・ノートルダム大聖堂にて
こちらも第一次世界大戦の追悼のためのコンサート。1927年11月11日、ガブリエル・ピエルネ指揮コロンヌ管弦楽団がレクイエムを演奏している。
企画展を見終わったら、1階へ。
扉を開ければ、中庭に出ることもできる。
中庭から建物を望む
建物に戻り出入口へ向かうと、寄付用の募金箱がある。
すごいボリュームの展示を無料で見せてもらえるので、楽しかったら寄付なりして出ていくのがよいと思う。当方はかわりに(?)ミュージアムショップで買い物をして帰った。
さようなら
全てをさらっと見るだけで、所用時間は2時間半くらいだった。
2時間半楽しんでも、前述の通りバスの本数はかなり少ないため、ちょうどいい時間のバスはない。この後我々はカフェでお茶をした後、バスに乗って帰った。
ベルリオーズ博物館は展示物の量が本当に多いので、好きな人にはたまらないと思う。ただ、主要都市から遠くアクセスも悪いので、観光のついでに行くような場所でもない。ここに来るために、ほぼ丸1日潰す覚悟が必要だ。
ラ・コート=サン=タンドレでは毎年夏にベルリオーズ音楽祭が行われている。もしプログラムを見て気になるコンサートがあれば、それに合わせて行くと楽しいかもしれない。
おわり。
■基本情報
📍Musée Hector Berlioz
69 Rue de la République
38260 La Côte-Saint-André, France
☎︎(+33)4 74 20 24 88
入場無料
開館時間(2019年11月現在)
9月1日~6月30日:火曜定休。10時~12時30分、13時30分~18時
7月1日~8月31日:毎日10時~12時30分、13時30分~18時
ベルリオーズ音楽祭期間中:毎日10時~20時
休業日:1月1日、5月1日、12月25日
■ベルリオーズ博物館公式ページ
■ベルリオーズ音楽祭公式ページ