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サピエンス全史3

こんにちは、のぐです。今回の書籍は、ユヴァル・ノア・ハラリさんの「サピエンス全史」です。訳者の方は柴田裕之さんです。いつものように、本記事でご紹介する内容をA4にまとめてみました。全世界で1200万部売れた超大ベストセラーとなっている「サピエンス全史」ですが、その内容は非常に長いです...。しかし、人類の歴史をかつてないほど巨大なスケールで観察することで、別の視点から見つめ直すことができる、全人類必見の本です。本記事では、その内容の本質のみを切り取ってお伝えしようと考えています。

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便宜性のために具体例を混ぜながらになりますので、全ての内容をご紹介するには8記事ほどに渡る超大作となるかと思いますがお楽しみください。
本記事は3記事目です。

1つ目の記事

2つ目の記事

結論

サピエンスは今まで3つのイノベーションを起こして、地球を制圧できるほどの力を手に入れました。それが

1. 認知革命
2. 農業革命
3. 科学革命

です。基本的には全て重要な節目になっていますが、本書の本質を理解するには「1. 認知革命」を正しく認識する必要があるかと考えます。認知革命とは

あらゆる虚構(フィクション)を創り、信じることができるようになった

というものです。端的に言えば、「嘘」をつけるようになったことが人類最大のイノベーションであるということです。これによってサピエンス同士が「より多く、より強く」連携できるようになり、その団結力を武器に地球上で「敵知らず」の状態に落ち着くことができた、ということが筆者の方の主張です。具体的にどういうことなのかはこれからの記事で徐々に明らかにしていく予定ですが、全てこの「認知革命」がキーとなりますので、この衝撃を脳裏に焼き付けておいてください。

6. 神話による社会の拡大

人類は定住生活をしてからおおよそ1万年間で、現在の高度な協力ネットワークを構成しています。例えば商業ネットワークにおいては、はじめは「大きな村落」で物々交換から始まり、やがて貨幣なるものができて「町」さらには「都市」というように交換の規模が大きくなりました。この人類の驚異的な社会的進歩のスピードはとても生物学的本能では説明がつかず、筆者の方は「想像上の秩序」という概念を導入しています。想像上の秩序とは、

共有された神話を信じる気持ちに基づいた「協力ネットワーク」

のことです。一緒に人類の歴史を振り返りながら、「想像上の秩序」を具体的に理解していきましょう。

まず農業革命後、定住生活が続くにあたって「余剰食糧」が生まれます。この「余剰食糧」を、別の村の「余剰食糧」と交換して、異なるものが欲しいと考えた当時の農耕民は、別の村の農耕民と「小麦100本と肉3切れが同じ価値ね」と価値判断を共有します。これが「想像上の秩序」です。やがて、この物々交換は、「お金」という「想像上の秩序」に基づいたツールによって仲介される「商業的取引」へと姿を変えますが、本質は変わりません。

取引をする上では必ず「想像上の秩序」に基づいた価値基準が必要となる

ということです。簡単に言えば「何かを買ったり、売ったりするためには、それがどのくらいの価値かを全員が把握しておく必要がある」ということです。「お金の成り立ち」についてはまた次回あたりの記事でお話ししますが、「商業ネットワーク」においては、このことが本質にあることを頭の片隅に入れていただければ幸いです。

そして、ここからが本番ですが、このような「想像上の秩序」に基づいた価値基準は、虚構すなわち「嘘」の産物であるということが筆者の主張です。あるところでは「小麦100本と肉3切れが同じ価値ね」というルールであったのが、また別の遠く離れた地域では「小麦90本と肉3切れが同じ価値ね」と別の価値基準に沿っている可能性があったということです。つまり、客観的に一つに定まるものではないため「嘘」の産物であるということです。しかし筆者の方は、この「嘘」の産物である、「想像上の秩序」

複数の人間が効果的に協力するための唯一の方法

であったと、プラスに捉えています。画期的であったのは、「その秩序に客観的正当性がなくても、驚異的なスピードでより良い社会を作ることができる」という側面でした。

7. 書記体系の発明

東京オリンピックの延期が決まって間もないですが、その花形である陸上競技の「ルール」も想像上のものであり、これがあるからみんなで競い合ったり、応援できたりするという「協力体制」が生まれてきます。しかし、この「ルール」は一体どのようにして現代まで伝わってきたのでしょうか。

遺伝子情報と想像上の秩序とそれらの伝え方

ハチやアリを観察していて、ある一定の法則に従ってそれぞれが力を合わせているように見えます。そして重要なことが、そのルールは「ゲノムにコード化されているのか」それとも「ゲノムにはコード化されていないのか」ということです。ハチやアリなどサピエンス以外の動物は、「ゲノムにコード化された情報」のみを頼りに生きています。しかし、サピエンスは「その情報」だけでは物足りず、「自身のゲノムにはコード化されていない情報」までも想像して後世に伝えていく道を選びました。このような「ゲノムにコード化されていない情報」つまり「想像上の秩序」(陸上ルールなど)を後世に伝えるシステムが「書記体系」でした。

高度な情報保存処理システム

記憶するためには脳では限界があり、人はいずれ死ぬために、「想像上の秩序」を後世に伝える情報保存処理システム「書記体系」を導入したという説明は先ほどしましたが、この「書記体系」は当時の人類の社会体制まで変えていくことになります。一つは「官僚制の誕生」です。書記と呼ばれる役職には全ての情報がゆき届きますので次第に権力を持つようになります。文字を読み書きできる人がエリートという時代が長く続きます。二つ目は「数の言語」です。それまで「話し言葉」しかなかった世界では、世の中の物理現象や工学についてあまり進歩が望めませんでした。そこに数学的に処理しやすい書記体系が確立されたことで、「処理が容易になり」、何より「共有が容易く」なったことが、その分野の進歩に少し貢献しました。

8. 想像上のヒエラルキーと差別

人の階層「ヒエラルキー」ももちろん「想像上の秩序」です。見ず知らずの人同士が互いに「どの階級に属するのか」を外見により一瞬で判断することで、『どのように扱うべきなのか』を時間とエネルギーのコストをかけずに知ることができ、大きいな社会を保つ上ではメリットを感じます。ただし、このメリットを受けるのは、あくまで「時の権力者」であり、「その社会に住む個々人」ではないことは問題ですが...。

男女間の格差

筆者の方は、男女間の区別について大きな疑問を提示されています。

男女間の区別は
「生物学的差異から」なのか
「文化的概念や規範から」なのか

この疑問は非常に奥深い内容かと思います。性染色体の組み合わせが「XX」であれば本当に女性なのか?という凡人の常識を覆してくるものだと感じています。筆者の方は、以下のようなことを仰っています。

歴史には有用な経験則がある。
「生物学的作用は(あるタスクを)可能にし、文化は(あるタスクを)禁じる」

(あるタスクを)の部分は自分のオリジナルですが、例えば、「生物学的作用は『女性が子供を生むこと』を可能にし、一部の文化は『女性が子供を生むこと』を強いる」という経験則があるということです。その末路には「前者は男性同士のセックスを可能にし、後者は、この可能性を禁じる」という事態が起きてしまいます。

話がややこしくなってしまいましたが、整理すると、

生物学的作用は、ある可能性を広げることしかしないのに対して
人間が想像するイデオロギーや文化によって、
その可能性を禁じてしまったり、逆に過度に強いてしまったりしてしまう

という歴史がよく見受けられました、というお話です。余談ですが自分は、この文章だけでも、本書は3000円以上の価値があると感じております。圧倒的な知識量と客観的な伝え方で、読者を常識の枠から引きずり出してくれる、筆者のユヴァルさんに感謝したいです。

生物学的性別と社会的性別 sex and gender

先ほどの議論を踏まえて、筆者の方は、生物学的性別と社会的性別について以下のような区別をしています。

生物学的性別...客観的で歴史を通じて不変。遺伝子が定める
社会的性別...共同主観的で、絶えず変化。神話が定める

ここで「共同主観的」とは「みんなが信じている」という意味です。ただし、少し言葉足らずなのは、ここでの「みんな」は「ある一集団内」に限定しています。

次回予告

今回は、文字がなぜ生まれたのか、ヒエラルキーや社会的性別は想像上の産物でしかない、というお話ししてきましたが、次回は

貨幣もまた、想像上の産物
一味違うグローバル化の見方

というテーマを軸にお話を進めていこうと考えております。


本記事を通して皆様のお役に立てたなら幸いです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
それではまたの出会いを楽しみにしております。

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