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ゴーストハント〜旧校舎怪談〜(オーディブル版):めちゃめちゃ焦らされるホラー小説


小野不由美さんの作品「ゴーストハント」(ナレーター:安國愛菜)を聴きました。

この作品、題名の通り霊についての話なのでジャンルはホラー小説なのかと思いますが、おそらくホラー小説の中では異質な作品なのではないでしょうか?

先に言っておきますが、私は今までホラー小説を読んだことはないので勝手な先入観で書いております。

このゴーストハントの何が異質かというと、霊が出るまで「めちゃくちゃ焦らされる」ことです。

話はよくあるもので、学校の旧校舎を取り壊そうとすると事故が何度も起き中断になる。
霊の仕業となりその霊退治のために校長先生が霊能者に依頼をする。
主人公は霊感は全くないがひょんなことから霊能者の助手になり一緒に事件を解決することになる。

あらすじだけなら本当によくある使い古された話です。

その使い古された話であるのにゴーストハントが面白かった点、異質な点は何か、それらをご紹介していきます。

バラエティに富んだ霊能者たち

作品内で霊能者は一人ではなく複数人出てきます。
その数なんと5人。(素人霊能者含めれば6人)

霊能者のジャンルはそれぞれで、主人公が仕える霊能者の「ナル」はカメラやサーモグラフィなどの機器を使って現象を解明する科学的ゴーストハンター。
他には巫女さん、高野山の破戒僧の坊さん、口寄せ師、エクソシストが出てきます。
そこに主人公とは別の一般生徒であり自称霊能力者なんかも加わります。

彼らが各々の観点から霊がいるいないについて話し合います。
話し合いというよりはディスり合い。
誰かが結論付けようものなら必ず反論が入り、誰かが除霊に失敗しようものならこれでもかとバカにする。
霊能者の誰もが自分のみが本物だという自負を持っています。

話の半分くらいはこの霊能者たちのディスり合いで構成されています。
ある意味では、霊がいる(とされている)旧校舎で霊そっちのけで話せる専門家集団が頼もしく、一般人である主人公と読者に安心感を与えてくれます。

また、ホラー小説としてはそのやりとりは異質だと思いますが、現実に霊能者を集めたらこんな感じになるんじゃないかな、という気もします。

実在しないものを実在すると証明することの難しさ、それぞれの流派の見解の違い。
私が密かに提唱している「マナー講師たちを集めたらお互いの所作を減点しまくる説」に似たものを感じました。

こう言った点ではある意味リアリティのあるホラー小説かと思います。

めちゃめちゃ焦らされる

次に面白い点は冒頭でも述べた「めちゃめちゃ焦らされる」ということです。

何が焦らされるかというと全然霊が出てこないのです。

旧校舎を調査していくうちに何度も霊現象的なものは起きます。

足音やポルダーガイスト、異臭やめまいなど様々な霊現象らしきものは起きます。
ですが、それらが起こるたびに主にナル君が科学的に霊の仕業ではないという結論をくだします。

ナル君だけではなくその他の霊能者も各々の考察から中々霊の仕業だとは断言しません。

というのは、もちろん先ほど述べた通り本当の霊能者は自分だけだと信じているからだというのもあります。
ただ、それ以上にプロとしての自負で短絡な結論づけを嫌います。

見えないものを相手にする除霊という仕事は信用が全てです。
そのため霊がいた、除霊ができたといった後に同じような現象が起きると途端に信用が失われます。
そのプロとしての意識が様々な霊現象的な物事を論理的に自然現象だと結論付けていきます。

この考え方はかのシャーロックホームズの

「全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる」

この考え方に似ているな、と思いました。

霊という現実ではいないとされるものをいるとするには、全ての不可能を断ち切った上で霊現象としか考えられない、と結論づけるしかないのでしょう。

そのような考えの霊能者の集まりのため、マジで霊現象が起きません。

最初はそれらしきことが起こるたびに緊張が走るのですが、途中から今回も違うのだろうと思うようになり、最後の方は本当に霊が出るのだろうか?という点に注目していきます。

おそらくここまで霊の出現を引っ張るホラー小説はないでしょう。

スラムダンクの題名で初っ端から素人の桜木花道がゴリにダンクをかましたのとは大違いですね。

オーディブルとの相性◎

最後にゴーストハントをオーディブルで聴いた感想としては読むよりも聴く方がより楽しめる作品だと感じました。

元々怪談というジャンルがあるとおりホラーと人の語りは相性が良いです。
そこに私が敬愛するナレーターの安國愛菜さんが朗読していることもありとてもオーディブル作品としておすすめできる作品です。

先ほど述べた通りこの話の半分は霊能者たちの会話が中心となっています。
安國愛菜さんはキャラごとの声分けがとてもわかりやすく、かつそのキャラクターたちの特徴を捉えたナレーションをしてくれます。

また主人公の女子高生の役がとても可愛らしく、自分で読んでいてはここまで彼女の心情について表現できなかっただろうな、と思います。

ホラー好きな方も苦手な方ももれなくおすすめできる作品となっておりますのでご興味あれば読むor聴いてみてはいかがでしょうか?


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