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03.明けない夜〜辞める辞める詐欺〜

昨夜のシャットダウン、再生回数136回の悪夢から目覚めたMISAKIは朝の日課であるパソコンの電源を入れた。

恐る恐る自分がアップロードしたオリジナル曲のページへアクセスした。

再生回数:138回 コメント:4

何度「再読み込み」を押しても数字はピクリとも動かない
もう一度寝たらこの悪夢が醒めるか。

よく歌の歌詞に「止まない雨は無い、明けない夜は無い」ってでてくるけど
MISAKIの人生には当てはまらない。

昨日の後悔が、今日残っている
昨日やり残したことを、今日思い出している。

「ああ、なんであんなミスしたんだろう」
「ああ、なんであの時言い返さなかったんだろう。」
「なんでそんなこと言わなきゃないけないんだ?」
「こうすればよかったなあ」

昨日が終わらないのだ。

MISAKIの人生を歌にしたらきっとサビは「明けない夜があるよ」だろう

取り返しのつかない過去の事にエネルギーを使うことほど無駄なことはない。


昨日は来ないのだから。

でも。なんとなくわかってはいても。負のループから抜けられない。

そのループから抜け出したくて作ったボーカロイド曲。
代わり映えのしない日常を変える為に勇気を出してネットに発表した。
だけど数字は残酷で、変わらないということを再度教えてくれただけ。

「これが最後…」
「これで最後にする…」

またいつもの辞める辞める詐欺を呟くMISAKI
自分に言い聞かせるように。


「ちょっとMISAKI…」

朝からベットに寝転び、もう一度夢の世界に逃げようとしていたMISAKIを呼ぶ声が。


MISAKI「ん?」
HIKARU「また寝るの?私、今日仕事終わりに会社の飲み会あるから」
MISAKI「うん…」
HIKARU「昼ごはんと、夜ごはん冷蔵庫にあるから温めてね」
MISAKI「ん…」
HIKARU「じゃ、いってきまーす!」
MISAKI「…」

鍵を閉める音が消えるのと同時に彼女の音も部屋から消えた。
部屋から彼女の明るい気配が消えるとちょっとだけ寂しい気持ちになる。

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