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エッセイ340.書き間違いで慌てた話

去年の10月末から、「3年メモ」という3年連用日記をつけています。
うまくいけば、次の3年もと思いつつ、この3年で終わってもいいかなとも思っています。

「メモ」とあり、「スペースが少ないので続けやすい」というレビューもありましたが、書きやすい上質の紙に、万年筆でも細字なら全く裏洩れもせず、太い罫で5行。
日記として十分だと思います。

で、これを始めてすぐ、「まず〜い・・・」と思う出来事がありました。

私はそれまで、日常のほとんど全てをタブレットやスマホ入力で済ませてきていました。
手書きにするのは手紙や荷物を送る時と、買い物そのほかの短いメモぐらい。
なので、自分の手書き能力がどこまで衰えていたかに気づいたのは、この3年日記を書き始めた途端のことだったのです.

まず、漢字が出てこない。
「つくり」なら出てくる、という甘いレベルではなくて、まるきり出て来ない漢字が頻出することに、まず愕然としました。

それから、衣装・・と書こうとして、依・・と書いてしまう。
これは、共通項目が頭に入っていて、間違った方を選んでしまうのでしょうが、それが、考えての上でなく、いきなりそういうふうに間違えます。
非常〜に、慌てました。

また、「狭小 」と書こうとして、「共・・・」と、書き始めてしまう。
つまり、「同音で違う漢字に飛びついてしまう」。
全く意識せずに、とんでもない、思ってもいない漢字を選ぶわけなので、これまたパニックになりました。

パニックというのは、いよいよ、もしかしたら気付かないうちにすでに始まっていた認知症が、そろそろ表面に出てきたかと思ったからです。
(認知症は10〜20年の長い時間をかけて進み、最初は気づかれないそうです)

私の母は、亡くなるまでの10年ぐらい、最初はゆっくり、最後の1年は急激に進んだアルツハイマー型認知症でした。父もまた、最後の方は入院性せん妄のような症状を、自宅にいながら起こしていました。
そういうわけで私はここ数年、自分が認知の問題を最初に外に出すのはいつかと、恐れながら過ごしているところがあって、この漢字の書き間違いにはびびったのでした。

それから、変に飛び越えるという事象も起こり、例えば、「クリスチャン」と書き始めて、「クリチ・・」と、一文字飛び越えてしまうのでした。

私がタブレットを導入して、どうでもいいこともほとんど全て、手書きから「ローマ字入力」する世界に切り替えたのは、おそらく12年ぐらい前です。スマホが面倒くさいのと、家で2台のタブレットが置きっぱなしになっているため、漢字がわからないと当然、どこかに入力、変換して見つけようとします。
辞書を使うのはレッスン中ぐらいです。

昔は、漢字がわからないと、その都度紙の辞書で探していましたし、一度調べて書けるようになると、滅多に忘れませんでした。

私は「3年メモ」の最初の方に、
「この頃からこういう漢字やその他の書き間違いや、思い出せないことが始まった」
と、太字で書いておきました。
何かの参考になるかと思いまして。
とほほです。

という具合に、かなり悲観して、しばらくどんよりしていましたが、
毎日日記を書くようになりましたら、漢字をどんどん思い出すようになり、言葉のスキップもなくなりました。
何より、漢字を思い出せないことだけに問題が絞られ、無意識にとんでもない漢字を書き始める、ということだけは影を潜めました。

今思っているのは、

日常的に漢字仮名交じり文を書いている生活の中で漢字が出てこないのと、
入力するのが日常の生活でのそれでは、根本的に違っていそうだ

ということです。
だって、入力というのは、ひらがなで打ち、すぐに出てくる漢字を瞬間的に選び取っていくことですよね。

こういうふうにですよね?


で、自分がよく使う漢字は、変換リストの最初に出てくるわけで、どんどん、「漢字を選ぼうとする脳」も、楽になって、楽をし続けた結果、能力が減るのじゃないでしょうか。
脳も、なんか日常的に、「ひらがなでかんがえている」モードになっていませんでしょうか。

それが、手書きでは、
ステップ1   今からあれを書くぞ、と脳が思う
ステップ2  その瞬間から、脳内を一生懸命漢字探しで脳が働く
ステップ3  無意識である ステップ1とステップ2を、書きながら、
「0.01」秒ぐらいで選び取る、
という作業をしていたのではないかしら。

それをしなくなって何年も、下手したら12年とかですから、
この新しいライティング・スタイルに脳がすっかり慣れて、
手書きに必要な、大忙しの作業をしなくなっていたのではないか。

それを今頃、考えているところです。

みなさんはどう思いますか?


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