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日本語教師日記124.インドの師匠(2)体にいい飲み物のことなど

親からもらった名前が長すぎて、親御さんにさえ、本名で呼ばれたことがないという生徒、インドのデリーに住む、イニシャルが通称になっている、JPさんのお話の2回目です。

いつもにこやかで、勉強熱心、毎回たくさんいい質問をしてくれます。

実況中継をさせていただきますね。



「JPさん、おはようございます」

ーー先生さん、こんにちは。こんにちはですね?

「そうです。日本はもう1時半だから。
あとJPさん、「先生」だけで十分ですよ。

ーーあっ、そうでした、
すみません先生さん、いや、先生。

「JPさん、私、ニュースがあります」

ーーはいどうぞ。

「上の娘が、先週、コロナにかかりました。
京都に住んでいるのですが、行こうかなぁと思いましたが、やめました。
今は元気になりましたが、最初はけっこうひどかったようです」

ーーそうですか。大変でしたね。
どんなsymptoms(症状)がありましたか?

「頭と喉と筋肉と節々が痛くて、39度ぐらいの熱が4日ぐらい続いて、
鼻水もすごかったと言っていました。
オミクロンじゃなくて、デルタじゃないかって言っていましたね
味も変に感じるそうです」

ーー先生、娘さんは何を飲んでいますか?

「さあ・・。近所の友達が飲み物と食べ物を運んでくれているそうですけど。
ポカリスエットや、水なんかを飲んでいるのじゃないでしょうか」

ーー娘さんの家に、シナモンがありますか?

「ないと思います」

ーーターメリックはありますか?

「もっと、ないと思います。それを飲むんですか?」

ーーはいそうです。水を温かくします。
そのことを、なんと言いますか?

「温かくするんですか? 熱くするんですか?」

ーーあっつく、あっつく、します。

「《お湯を沸かす》と言いますね。
水を沸かすとは言わないです。
《お湯を沸かすと、
蒸気になって、なくなってしまうじゃないか》
という、つまらないジョークが昔ありました」

ーーなるほど。
たしかに、お湯を沸かすと、なくなりますね。
それはともかくですね、お湯を沸かして、このぐらいのシナモンか、ターメリックを入れます。
このぐらいのことを、なんと言いますか?

「《一つまみの何々》、と言ってください。
《つまむ》はこうする、このアクションです。
《おつまみ》は、動詞の《つまむ》から派生した名詞で、 お酒と一緒に軽く《つまんで》食べるもの、という意味ですね」

ーーなるほど。ありがとうございます。

「どういたしまして」

ーーそれで、そのひとつまみのシナモンとかターメリックを入れたお湯を、飲むんですか?

「はい。コーヒーのように、飲んでください」

ーーコーヒーのように、おいしいのですか?

「いいえ、全然おいしくありません」

ーーあ、そう、おいしくないんだ。
砂糖を入れてもいいですか?

「はい、いいですよ。少し少しですね。
ひと・・ひとつまみ・・入れてください」

ーーわかりました。
疲れていると甘いものは美味しいので、
砂糖をいれるつもりです。

「先生ちょっと待ってください。
砂糖はsalt(塩)ですね?」

ーーいいえ、砂糖はsugar です。

「すみません間違えました。
塩を入れてください。
砂糖は絶対に、入れないでください。
特に、シナモンには砂糖は、絶対だめです」

ーーなぜですか?

「お腹が痛くなります。
あと、朝と晩には飲んでもいいですが、
その間はなんと言いますか?」

ーーその間? 昼間?

「いいえ、夜の少し前です」

ーー 4時とか5時ごろ?

「そうです」

ーー夕方、と言います。

「夕方に、シナモンもターメリックも、
絶対飲まないでください。体に悪いです」

ーー え、そうなんですね。
シナモンとターメリックを入れたお湯は、
朝晩は良い飲み物だけれど、
夕方に飲むと体に悪いんですね?

「そうです!気をつけてください」

ーーわ・・わかりました。
なんか、私間違えそうです。

「先生、絶対に間違わないでください」


この人からは、体にいいことをよく教わっています。

なにしろ、インドはいろんなものの本場。
ヨガも食事療法も、全て正しいように思えるではありませんか。
なんにでも従うつもりで、いつもメモを取っています。


「先生、最近、ヨガはどうですか?」

ーーヨガですね。
それが、二月から再開して、行き始めました。
ヨガの先生がどこかでレッスンを撮影してストリーミングっていうんですか、
同時的にあちこちのスタジオと、オンラインの生徒が見ながらやります。
生徒はスタジオに入って、スクリーンを見ながらやっています。
今は、大きなスタジオに、十人定員です。
みんなマスクをかけてやっています。
しゃべってはいけないので、ずっと静かです。

「そうですか。今日はどんなヨガでしたか?」

ーー今日はプラーナヤーマのクラスで、呼吸法の他に、
鳩のポーズ、牛の首のポーズ、スリーピング・スワンのポーズ、
戦士のポーズ・・いろいろやりました。
最後は、シャバーサナですね。いつもそうです。

「シャバーサナというのは、なんですか?」

ーーシャバーサナはヒンズー語ではないですか?
シャバーサナは、しかばね、つまり、死んだ人の体のことだそうです。
そういうふうにじーっとして、体を休めます。

「シャバーサナは聞いたことがありません。あと・・・」

と言ったなり、本名がすごく長いJPさんは、
なんとなく笑っています。

ーーJPさん、なぜ笑っているんですか?

「ヨガで、鳩とか、牛とか、スワンとか、全然聞いたことがないです」

ーーえ? そうなんですか?
JPさん、毎朝ヨガしてるでしょ?

「しています。インドでは、ポーズにそんな名前は全然ついていません」

そうなんですか😲

美人の先生たちの流れるようなアーサナ(ポーズ)を見ながら、

鳥のポーズ・・コブラのポーズ・・とかげのポーズ
うさぎのポーズ・・と見よう見まね。
さすが神秘の国インド、自然界からインスピレーションを得て、ポーズにしたのね・・

と、ずっと感心していました。

ないのね?
なかったのね?

いやいや、知らないことは多いんですね。

JPさん、

世界を騒がせた元祖ホットヨガのチョードリーは、
インドでは誰も聞いたことがないと言うし、

大勢の人がひたすらガンガー(ガンジス河)に水を汲みに出かけ、死者も出てしまうという変なお祭りや、

モディ首相が、次々とやたらに大きな神様の像を立てている話や、

日本で報道されているだけでは知り得ないことを、いつも話してくれます。

インドの師匠、と尊敬する所以ゆえんです。


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四年前に完成して、ものすごく不評だった、インドの初代の副大統領の銅像。
たしか今も、世界一高いのではなかったでしょうか。

モディ首相は税金を使って、コロナの時代の今も続々と、巨大銅像を作っているそうです。
JPさんに、その写真を送ってくれるように今頼んでおきました。
そのうちにお見せしますので、お楽しみに。


おまけ:チョードリーをJPさんにぜひ知ってほしい。

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あと、ご興味があればこれも濃いぃですのでいかがですか。私はすごく楽しめました。


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