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日本語教師日記73.一度に教える必要はない(3)=法わか(15)「と」と「たら」の重なるところ

「みんなの日本語」での「と」「ば」「たら」の提出順ですが、
初級Ⅰ    21課で 「〜と」、同 25課で「〜たら」
ここでもうこの本はおしまいで、「〜ば」が出てくるのは、
次の初級IIの35課です。

「もし〜たら」「もし〜ば」の いわゆる条件文は、
初心者でも日常的に使いたいものですから、私は早いうちに教えます。

けれど、詰め込みすぎで大混乱祭にならないよう、一つ一つです。
十分間を開けても、必ず疑問は出ますので、それを分かった上で、
一つずつ丁寧に教えたいところです。

そしてその後で、疑問・質問が出されても(どう違いますか問題)、
一度に全て教えることはしないということを、いつも気をつけています。




一方、よく勉強をして、自然に疑問質問が出てきた人に対し、
「同じです」や、「あとで」は酷ですね。

そこで私は次のようにすることが多いです。

step 1    「と」の一つ目の働き:Aをすると必ずBがついてくる文
                  について、確認します。

step 2   「と」の二つ目の働き:A とBのタイミングがとても近いか同時
                  たぶん、導入されていないことが多いので、
                  教えます。

step3      その「と」に似ている「たら」の使い方(AとBの間が近い)
                を、まだだったら、導入します。

step4      もう一つの「たら」:
               出来事が確実に起きるのが承知のときに使えることを確認します。


このの順番でお話ししています。

飲み込みのいい人でも、授業でやったからといって、即使えるわけではありません。

しかし、「同じです」「だいたい同じです」と聞かされていても、
ニュアンスや、与える印象が違うから「違う言葉」があると思えますから、
違いがあるなら、一度ははっきりと知りたいと思うのは人情です。

そこで、「違い」のエッセンスをお話しするわけです。


① 秋になると涼しくなる。

この「と」はわかりました。

② 前半と後半の起きる時間が、同時か、とても近い場合の「と」です。
・窓を開ける猫が入ってきた。
・彼女の顔を見る、目に涙があふれていた。
・彼の部屋に行く、ドアが開いていて、彼が倒れていた。

AとBの間の時間的な近さ・または同時制の他に、
主体Aが、「Bについて自然に気づく、気づいてしまう感じ」がします。
そして、「意図せずして」「ふと・・」な感じを私は受けます。
そのことを、生徒にはここで話すことにしています。

注意点は、「B部分は意思表現は使えない」ということ。
❌ドアを開けると空気を入れ替えましょう。
❌秋になると家に帰ってきてください。

③「たら」には、if/thenの他に、②の「と」 と近い使い方ができることをお話しします。

・実際に起きたことは同じです。
・しかし、「たら」の方が、もう少し意外な感じ、
   驚いているニュアンスを感じます。

窓を開けたら、猫が入ってきた。
彼女の顔を見たら、目に涙があふれていた。
彼の部屋に行ったら、ドアが開いていて、彼が倒れていた。

(注:ば・たら・なら は、使い方に地域差が大きいそうです。
私は関東圏の生まれ育ちである語感をもとに感じ、考えています。
異論はあると思いますが、このまま続けますね)

ここでは、

A(発端)+と+B(すぐに起きる)

A(発端)+たら+B(すぐに起きる)

多少ニュアンスが違うが、ほとんど同じ使い方ができる。
と知っていただけたら十分だと思っています。

さらに、「たら」には、今まで習った 条件の文、

( もし )A「たら」Bだ   
     (そんなことを彼に言ったら怒るよ etc.)

と、今確認した、「Aと Bがほぼ同時に起こる」

の他に、「Aが起ることが確実・承知の上」⇨で、そうなったらB

という文を作る働きがあることも教えます。

駅に着いたら電話してね
ご飯ができたら起こしてね

英語では、whenを使いますが、when=日本語の「とき」 と思ってしまうと、

じゃあ、「たら」と「とき」はどう違う、どう使い分けるの?

というふうに思いたくなってしまうので、やはりここでは、
こういうときには「とき」は使えませんと強調しておきたいところですね。

そこで生徒が首を傾げていたら、どうしましょう。
そのときは、「とき」の復習をすると落ち着きます。

「とき」の方は、使うときに自由度が高く、
英語の when と同じように使えることを確認するのがいいですね。

「とき」は、習慣的に行うことや 遠い過去、一般的なことに広く使えますし、
「と」と違って、後半に人の意思が入っても大丈夫です。

・学校に行くとき、たいてい自転車に乗っていく。
・車を運転するときは十分気をつけてください。
・今度行くときは一緒に行こう。
・株は、安いときに買って、高いときに売るものだ。
・雨のときは いい靴は履かない。
・赤ちゃんは食べるときはベビーチェアに座る。
・彼を見たとき、様子が変だった。


下のは、これを見せたらざっくりわかるかなと思って作ってみた表です。

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「この場合は、これは言えません」ということはたくさんありますが、
その一覧表を作っても、一度に覚えて、それを見ないで、
さらに、うーむ🙄と考えないで喋れるようになる人は稀です。

なので、一度に教えるのはここまで。

これを教えて以降の授業の、自由会話の部分で、
こちらが意識して正しく使い、生徒にたくさん聞いてもらう。
自分でも言ってみてもらう、ということを、重ねていきます。

情報量は少なく、教え方はシンプルに。


一度に全部投入しなくても大丈夫。


生徒頑張ってください!

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。