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エッセイ424. 3週間の帰省の旅(10) Day 9. 山岳地帯からクライストチャーチへ戻る


Day 9. 2023年10月30日(水)

ホキティカの宿をチェックアウトし、砂利道の多い山道を上ったり下りたりして車は進みます。高低差がとても激しいです。
山は、雪を被った尖った山脈が遠くに見えたり、車が山道に入ると、右に左に、正面に、間近に低い山が迫ってきたりします。

腰痛と背中痛持ちの私にとっては、血行が良くなりそうな揺れと振動がずっと続きますが、ついでに乗り物にも弱いので、今日も車酔いです。
見晴し台で降りると、Kea (キア)という猛禽類の鳥がスタスタ歩いていました。特に寄ってもこないけれど、直近まで近づいても逃げもしません。羽づくろいをしているのを見ると、翼や尾を広げると、オレンジやコバルトグリーン、ゴールドの羽が現れてとても綺麗です。大きな望遠レンズをつけたカメラを持ったおじさんが、向こうの方で車を降りたら、なぜかトコトコと走っておじさんの側まで行き、写真を撮られていました。
「僕たちに餌を与えないでくれてありがとう」
「僕たちの野生の本性が損なわれちゃうからね」
みたいな張り紙がしてありましたが、なんか持っていたらあげたくなる可愛さでした。

そのあと、昼食のために入ったカフェのテラス席には、5羽のキアが常駐しているみたいで、お客さんがテーブルに置いた番号札を突いてテーブル下に落としたりしていました。なるほど、人に慣れすぎて、あんまりこれは良くないのかなと思いました。好奇心もすごく強いみたいです。



午後2時にはクライストチャーチに着き、車で市内を回りました。

リカトンハウスというビクトリア様式の家と、その周りの小さな森を歩いた後、路面電車が抜けて行くニュー・リージェント・ストリートという通りに行きました。30年代に一斉に開発されたようで、同じタイルの壁を持つパステルカラーの店が両側に立ち並んでいます。真ん中にはテーブル。目的は、ジェラート屋さんでした。ひとすくいが大きくて、お腹がいっぱいになりました。


修復中の大聖堂に替り、機能しているのがダンボールの大聖堂、カードボード・カテドラルです。サステイナブルなこの教会、特殊なコーティングをした強い筒状のダンボールを屋根とし、その上をプラスチックで覆っているような感じです。サンドイッチを正面から見たようなシンプルな形が可愛いです。

車で今日の宿、空港から歩いて1分の Novotelというホテルにチェックインし、明日が早いので先に荷造りをしました。それから6時半にホテルのラウンジで夫の従兄弟に会います。この人は、夫の生母の妹が養子に出した人で、立ち位置的には夫と同じです。夫もこの従兄弟も、大人になってから自分で母親を探し当てました。夫の生母は元気で、つきあいがありますが、この人のお母さんは早世しています。共通項目があるので、おじさん二人で身を乗り出すようにして、どんなふうに育ってきたか、どんなふうに生みの側の母親を見つけたかなど、話に花が咲きました。この日一緒だったうちの次女にとっては、新発見の叔父さんにあたります。「もっと何十年も前にお互いの存在を知っていたらね」「残念だよね」と語り合い、窓の外にたまに飛び立つ夜行便の飛行機を見ながら、スリー・ボーイズというビールを飲み、2時間。再会を約して名残惜しくさようならしました。



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