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日本語教師日記 71.タブーを持たない日本語教師(4)仏教


すごく面白いキリスト教・ユダヤ教・イスラム教についてお話しする気まんまんだったのですが、ふと昨日、神道について少し書きましたので、仏教を飛ばすわけにいかないと思いました。

最近、日本語が流暢すぎる宣教師さんの希望で、
仏教について 一から一緒に勉強を始めることになりました。
今日はその辺をお話しさせてください。

この方は、ご夫婦揃ってプロテスタント教会の宣教師さんで、
礼拝も日本語でされますので、 勉強することがいっぱいです。
でも、いつかは日本の宗教について学びたいとおっしゃっていたのでした。

お説教で使う日本語の練習などを半年以上続けてきて、大分いい感じになってきていましたので、いよいよ仏教と神道について、レッスンを始めることにしましたが、さて、教材にはとても迷いました。

私が読み散らかした仏教関係の新書(猿でもわかるぐらいの、仏教の入門書)は、いろいろすでに、知っているものとして書かれていたり、それから、
上から諭すというか、言って聞かせてくる感じの書き方が多かったです。

いい本たちではありますが、0からしっかり仏教をわかっていただきたいこの生徒には、これは合いません。

日本人で、仏教を知りたいと思う人向けの本は、

「高層ビルなのに、3階までは階段もエレベーターもエスカレーターもない」

っていう作りでした。


かといって私の頭もバラバラ。

小さい頃から社会科や、子供向けの仏教絵本(そういうのが家にあった)、
手塚治虫先生「ブッダ」、お寺のパンフ・・あたりから読みかじり・聞き齧ったことが、漫然とばらまかれている状態です。

花祭りって、お釈迦様のお誕生日だったっけ。確かそう・・
ちっちゃい赤ちゃんなのに大人みたいな、腰巻きのお釈迦様が
天井天が唯我独〜🌸 って、上と下を指していたよね?
あの時に飲む「甘茶」ってなんだ?

とか、

お釈迦様がハンガーストライキ・・じゃなくて、
あれなんていうの、食べない修行をしているときに、
もう死ぬってなったときに、はいどうぞって牛乳のお粥をあげた娘がいたよね、え〜〜〜〜〜と、スジャータ?
だから、スジャータって、ポーションミルクに命名したんだよね。
スジャータってまだあるの?
ちなみに東海地方では、ポーションミルクをコーヒーフレッシュと呼ぶの。
だから喫茶店でコーヒーを頼むと、
「フレッシュお使いになりますか?」と訊かれることがあり、
他県からきた人はとまどってしまうのである。

とか、

仏陀が亡くなるときに、弟子たちとか動物が集まって、横になっているお釈迦様の周りで泣いている絵があるよね。
あれが「涅槃」。
沖雅也さんが残した「おやじ、涅槃で待つ」って、
これ読んでいる人の誰も知らないよね。

とか。

お母さんの名前は摩耶夫人・・・まやぶにん・・ていう人多いよね。
私の親友の子供の名前も摩耶ちゃん。

インドの王子様で、人生ってなんだろうと思って、東西南北の門から出て、
いろいろ見て・・・なんちゃらかんちゃらで・・

これだって、寄せ集めればなんちゃってガイドはできるかもしれませんが、
体系立てては、全くわかっていませんでした。
愕然・・。


しかし、アマゾンありがとう。

ちょっと探してみたら、いい本が見つかりました。



みうらじゅんさんの「マイ仏教」。
ちょっと読んだけど、面白いです。
今の若者だと、「マイブーム」生みの親がみうらじゅんさんだと、知らない方の方が多いかもしれません。
みうらさん、大好きです! 特に、「もらって嫌になっちゃうお土産=お嫌げ」の本とか。

「お嫌げ展」、見に行ったなぁ。



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これは私が読みたくて買いましたが、もう一方の、「だれでもわかるゆる仏教入門」を読み終えたら、続いてレッスンで使おうと思っています。

「だれでもわかる仏教入門」は、私の実家の属する浄土真宗の大谷派の若き僧侶・松崎智海さんの著書で、長年高校生に仏教を教えてきた経験から、とても読みやすくて、現代人の悩みもこの本に出てくるし、日本語の教科書としては最高でした。


私がよく生徒に出す質問の一つにこれがあります。

「お釈迦様の言う四苦八苦のうち、
   最初の4つのメジャーな苦しみとはなんだかわかります?」

みなさん、病気・死・貧困・・まではすらすらと挙げ、最後の一つに迷いますので、最後の一つはあなたの苦しみを言ってちょうだいとお願いします。
いろいろ出ますよ。

不眠・孤独・日本社会が息苦しい・転職が難しい などなど。


お釈迦様が仰った、人間の非常な苦しみのトップ4、いやワースト4でしょうか、
それは、

生     病    老    死

なのだそうです。

宣教師さんとの今日の会話。

「えっ、生きることが? 苦しみ?」

「そう、生きることが、苦しみのトップなんですって。深くないですか?」

「深いですね! 哲学ですね! いや参った」

「参ったでしょうとも。私も参りました。
  このへん、おたくのイエス様はなんと言っていますか?」

「あ、これは私の説教でもよく出すのですが、・・・」


私の生徒たちは大体全員がおしゃべりなので、
このようにどんどん本筋から外れて行ってしまいます。

しかし、半数は日本語だけで授業のできる上級者なので、
自由に会話を広げることもまた、楽しくもあり、勉強にもなります。

彼も今日、

「ほら! 日本語だけでこんなに喋れるようになって・・素晴らしい」

と私がヨイショ・・じゃなくて、心から賛嘆すると、にっこりしてくれました。


彼は、遠藤周作の「沈黙」を読み、非常に感銘を受けたそうです。
神様のことを語る前に、日本の皆さんの宗教についての思いをよく理解したい。
そう言ってレッスンを始めてくれた彼です。
応援しないわけにいきませんね。

私も改めて、細切れのエピソードではなく、仏教を一緒に学べそうです。



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