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日本語教師日記65. 法則がわかれば怖くない(13)日本語のアルファベット表記

今日は、英語を媒介語としたレッスンでの、超初心者の読み書きについてです。

グループレッスンで習う皆さんは、ひらがな・カタカナ・漢字を習わないことはまずないですので、今日書くことはほぼ、関係がないと思います。

個人レッスンでも、私は読み書きは普通にやってもらいます。
ひらがな・カタカナは皆さんに覚えてもらいますし、漢字の方は、「象形文字」から始まり、「使う頻度の多いもの」「日常によく見る、必要なもの」も、少しずつ入れていきます。
最初の数週間は苦労しますが、50音に撥音・拗音・濁音・半濁音などを加えたものを紹介、練習しおえますと、やがて、ひらがなの読み間違いはしなくなります。


ですので、以下は、教科書が読めるようになる以前の、全くの初心者、
一文字・一単語ずつ習っていくときに、そのストレスを少し減らす工夫です。


私がひらがなの「あ行」を教えていてぶつかったのが、
「私たちがつけてみたアルファベットだと少し問題がある問題」でした。

あ  A
い   I
う  U
え  E
お  O

で、あいうえお と読んでくれるかと思ったら、高い確率で、

あ  A  ⇨  エイ
い  I   ⇨   アイ
う  U  ⇨  ユー
え  E  ⇨   イー
お  O  ⇨  オウ

と発音する人がいたのでした。

なるほど〜、やはり「母語の発音の法則に引っ張られる」
・・のだと理解できました。

母音のあいうえおの他、濁音も要注意です。

「『さ』に てんてんは、Zの音です」

とうっかり言ってしまうと、絶対に、

za-zi-zu-ze-zo    ざ、ずぃ(zi)、ず、ぜ、ぞ  と 言います。

同様に  「た」に てんてん は Dの音、と教えてしまいますと、
da,di,du,de,do   だ、ディ、ドゥ、で、ど    というのは当然です。

カードを作るときは、その辺も注意しないといけません。

私は市販のカードを使ったり、買ってもらったりはしませんので、
Quizletというネット教材をシェアしています。

作るとき、

あ  は、  エイではなくて、あですよと言いたい、などがあるので、
カードの表裏は、こうしています。(「お」は省きます)
あくまで、英語が母語の人に使います。

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全てが間違いやすいわけではなく、気をつけて欲しいところを、英語にある音をあてはめて言ってみてください、というつもりです。

ひらがな「あ」は、あなたが Ah!  というときの音に近いです。
ただし 「あ」は「あ〜」じゃないですから、
かっこで(h)を閉じ込めてみました。

い を E、えをA、と教えたくなりますが、ますます混乱するので我慢します。

それで、とりあえずみなさん夜露氏空ね!という、苦しいところです。


子音と母音の組み合わせで、間違えることのないものは、そのままいきます。

か行、な、ま、や、わ 行は、OK。

「を」は、「助詞だけに使ってくださいね」と言わないと、
「え〜、じゃあの、せっかく覚えた「お」はどうなるの?」
と慌てる人がいます。

さ行   「し」を si ではなくて、she/shi   とすればOK
た行    「ち」=chi です。
は行    「ふ」は   fu  ではなく、hu/wh(o) とします。
            日本語に F なしの法則です。後から大事になってきます。

単純に一文字ずつ覚えていくひらがなでは、これで大丈夫です。

次に、文章作りに欠かせない、言葉増やし。
プライベートでは、最初からしばらくは、
ひらがなを組み合わせてすらすら読むことはできませんので、
どうしてもローマ字表記になります。

そのときも、「母語にひっぱられ現象」  が 普通にあります。

大阪  おおさか   oosaka      うーさか

大きい  おおきい  ookii   うーきい

そうです   so,u,de,su~      「す」を、強く言い過ぎます。
             つまり、まだ母音の無声化ができないです。(すぐなおりますが)

長母音は全員が区別できませんので、

おおさか Oh-saka
おさか  O!saka    (小坂さんという人が身近にいる人はほぼいませんが)

います E!mas
いいます  E~mas

私の変なスペルでは ! は、「短くお願い」という意味です。


このレベルですが、

「今だけの近道ですよ。ひらがな読めるようになったらなしですよ」

と前置きをして、こんなふうに書き換えます。

おおきい  Ohーkey      

ちいさい  chea-sigh

そうです   soh-des

つまらないです   tsーmah-rah-neigh-des

ややこしくなってきましたね。

もちろん「間違えようのないひらがなの組み合わせ」が多いので、
実際には相手に発語してもらい、どうしても間違えるものだけ、こういうことをしています。

O-key は、なんとよむ?   
おきー?   おきーって読みたくなる?
 だめか・・Ohーkeyなら?  
言ってみて?
あ、できたね!

というふうに、生徒とコツコツ、これならいけるというスペルを積み上げてきています。

彼 は  kare   とすると、人により違いますが、
けいれ、かりぃ と読む人がいます。
なので最初は Car-ray  と見せます。
すると、ちゃんと「かれ」と読めます。


下にお見せする表ですが、これは、ティーショップのオーナーと、
大学教授を、0から同時に教えていたときに使った教材で、
この段階では、2日目です。

「私は〜です 」の文型を入れていますので、
職場のことなども、どんどん入れていきたいので、こういう語彙になります。

人間、自分の言葉で、あれ、なんていうの、と思うのが普通なので、
英語が左、日本語を右にしています。

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こんなことしてるの! と驚かれたり、
もしや、がっくせいとか、言ってしまわないのこれで?と
ご心配になると思いますが、これでまず、大丈夫なのです。

語頭の H, TS, K, T その他や、語尾の母音は消えやすいです。
ひらがな通りにいちいち律儀に発音していると、現実と違いますし、
第一、日本人が言っていることをキャッチできないままです。

聞こえるように言おう
言ってる通りに聞こう

というのが私の発音指導のキモです。


一緒に何度も発音しますので、

なるほど先生が、こんな変な書き方をしているのは、
こういう音をなんとか表現しようとしているのですね😭

と、わかってくれるのです。

「いかにも、な、外国人ぽいアクセントになるのは嫌!」
という人は普通に多いですので、
こんなやりかたで、正しい発音に近づいていってもらいます。

ひらがなが読めないこの頃に、復習のためにテキストを一人で見直す場合、
母語に引っ張られた発音に変わっていってほしくない、
ということもあります。

そういうわけで。このまま読めばほぼ日本語に聞こえる、
という、オリジナルなスペルを繰り出していくわけです。

自分で使う言葉、使いたい言葉はどんどん覚えますので、
初級の頃には毎回、進出語は3〜5、いける人は7ぐらい紹介します。
もちろん忘れますが、授業中何度も出しますので、じわじわ覚えていきます。

いろいろなことが、正しい発音で言えるようになってきたころ、
ひらがなは最低、ゆっくりでも読めるようになっています。

そのときには、何十度も繰り返し発語してきた「大きい」は、
たとえ、「おおきい 」 と書いてあっても、「お・お・き・い」
と言う人はいません。
発音はすでに身に付いているからです。

すでに覚えて使っている言葉と、その正しい発音、それが、
読めるようになったひらがなと、やっと繋がる頃だというわけです。
気持ちいいです!
この辺がまた、生徒も教師も一緒に嬉しくなって喜べるところです。


実際は、ひらがなを独習してから来てくれる人も多いですし、
出会ったときにすでに中級・上級の人たちもいますので、
これをする生徒は多くはありません。
でも、大人の学習者は日本語だけ勉強して生活しているわけではないので、
近道できるところはしていきたいなと思います。

へんてこスペルは、
どうしても耳が捉えられなかったり、舌が再現できない
そんな言葉を教えるときにも役に立ちます。

旅館・布団・津波・机・・などですね。

発音の練習についてはまた改めて書いてみたいと思っています。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。