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スペインで始まった”移民のための労働者協同組合”

フランスの17歳の少年を射殺した事件を機に始まった暴動は、フランスを揺るがす暴動になっている国際ニュースを観ましたが、この暴動の背景にあるのが、大都会に隣接する郊外での貧困と人種を巡る問題の根深さだということも国際ニュースで知ることができました。


このボソッとでも今まで何度か取り上げてきた”移民問題”について、今回のフランス暴動でもそうですが、私たちが目にするニュースの多くは暗いニュースが多く、そんなニュースを観ていると思うのですが、「移民問題を抱えている国は大変だな」というマイナス的な印象を持ったり、「日本でも移民を受け入れることになったらどうなるのだろうか」といった不安になる気がしませんか?

でも中には移民問題を解決してくれるのでは?というアイディアや施策が、実は数多く投入されている実態についても国際ニュースでは紹介してくれているのです。


移民問題はどうしてもマイナスなイメージを持つ方々が多いのではと想像しますが、問題とはそもそもどんな問題なのか?その問題にどう対処したらよいのか?ということをまずは知ることから始めることが大事なのではと思っております。


なぜなら、少子高齢社会が急速に進む日本において、次世代の子供たちのためを考えると、日本も移民政策などを考えていく必要があるのかもしれない、そのときに起こる問題とはどのようなものがあるのか?そのときに私たちはどのように取り組めばよいのか?を今から学ぶことも、多様性ある社会で100年生きる時代には求められているのではと思い、今回ボソッとします。


今回は移民問題に立ち向かっている移民自らが考え出した施策についてご紹介したいと思います。

それが、スペインで始まった”移民のための労働者協同組合”です。


フランス 警察への抗議活動が暴動に発展した背景とは


まずは、いま問題となっているフランスにおいて警察への抗議活動が暴動に発展してしまった、その背景を、NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「フランス 警察への抗議活動が暴動に」(23/7/3放送分より)で教わったことをまとめてみます。


フランスにおいて警察への抗議活動が暴動になった背景


深刻な貧困と失業、犯罪の問題を抱えているフランスの「郊外」の実態が大きく関わっている。さらに、フランスの植民地支配の歴史とも関わっている,ことを学びました。

植民地から独立した国の経済格差は深刻な問題を抱えていることから、多くのアラブやアフリカの人たちがフランスに仕事を求めてやってきています。その移民たちが多く移り住んだのが「郊外」です。

今回死亡した17歳の少年はアルジェリア系でした。「少年はアラブ系だから殺されたのではないか」という人種差別への怒りや、「郊外」での苦しい生活に対する不満が、人々の抗議行動の背景にあるのです。

格差や人種の問題がいかに深刻で根深いかも改めて浮かび上がらせている今回の暴動は、フランスを揺るがしています。

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「フランス 警察への抗議活動が暴動に」(23/7/3放送分より)


スペイン 移民自身による自立への取り組み”労働者協同組合の設立”


フランス同様に、スペインでも移民問題を抱えています。
しかし、スペインでは移民による移民のための政策が始まっており、この取り組みがうまく回ればもしかたらフランスなどのヨーロッパが抱えている移民問題の解決の糸口につながるのでは、期待しております。

そこで、NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)で教えてもらったことをまとめてみます。


スペインの移民問題


貧困にあえぐ西アフリカなどから移民が押し寄せるスペイン。移民の数は2022年は10年前の4倍以上である31,219人に達している。

非正規の移民は、就労・滞在などの正式許可が下りず、仕事がないまま自力で生活しなければなりません。スペイン政府はこうした移民に対して約1,000億円の予算をかけて移民の一時保護施設の開設など対応しています。

現在のスペインの政権は移民受け入れには比較的に寛容であるが、移民の暮らしは職を得られないなど不安定化を増している状態でもある。

こうした移民に対しての財政負担に関して、スペイン国内からは不満も出ています。

移民受け入れへの不満の声
「移民は税金を払わないのに保護にかかる財政負担が大きい」

移民受け入れを反対する議員
「非正規で仕事をしてきた人がいきなり滞在許可を要求するのは順番が違うのではないか」

NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)

このような国内事情がある中で、移民団体の代表のサールさんは、スペインに正規の手続きを経ずにやってきた非正規移民の地位向上を訴えている。

サールさん(セネガル出身の移民団体代表)
「移民も人として働き、自由に移動し、住まいを得て、好きな場所で生活するといった基本的な権利が全て認められるべきです。」

NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)


スペインで始まった”移民のための労働者協同組合”


このような状況において、移民自身による自立に向けた新たな取り組みが始まろうとしています。

現在、非正規滞在の移民は50万人を超えると言われる。
就労許可がない人ができる仕事はスペイン語で「マンタ(MANTA)」、いわゆるマントのような布を広げて無許可でコピー商品を路上販売する「マンテーロ」という仕事をするしかない彼らには、あらゆる人種差別の標的にされているということです。

移民が安心して働くためにはどうしたらよいのか?

移民たちが考えたのが”労働者協同組合”という仕組みの活用でした。

こんななか居住許可を持つ移民たちが、合法的に働く場を生み出そうと、雇用契約を結ぶための労働者協同組合を立ち上げる活動が始まっています。

サールさんたち仲間5人が300ユーロずつ出資して労働者協同組合「トップ・マンタ」を設立。労働者協同組合では働く人全員が対等な立場で運営に携わり安定した収入を得ることができますし、組合にすることで金融機関からの融資も受け入れられるになるだけでなく、政府からも工場スペースなどの貸し出しなどの”行政の支援”も受けることできるという、つまり『移民のための持続的な経済支援を行う活動』となっているのが”スペインの移民のための労働者協同組合”です。

更に、スペインでは非正規移民でも3年以上滞在し1年の雇用契約があれば滞在許可を取得できるということもあって、トップ・マンタで働く大半が雇用契約を得ております。
そして、移民の地位向上のため、地域とのつながりを深めるために、トップ・マンタでは社会貢献にも力を入れているそうです。コロナパンデミック当初、トップ・マンタは医療機関にマスクや防護服を無償で寄付した活動も行っていたため、トップ・マンタにはスペイン市民からも後押しの声があがっている。


サールさん(セネガル出身の移民団体代表)
「トップ・マンタとは社会が私たちから人間性を奪うためにつけた呼び名です。それをあえてブランド名にして価値を与えたかったのです。」
「社会貢献をする理由は、私たちはこの国の一員として経済や社会、文化に貢献していることを示したかったからです。」

市民の声
「メディアには移民反対の人ばかり登場しますが、移民に正規の滞在許可を出すことに賛成です。」
「政治はもっと思い切った政策で多様性を受け入れる社会を築くべきです。」

NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)

行政も補助金の提供などで移民の就労支援を後押ししている。
市民としての権利を与えることで地域がより公平で持続可能な社会になるという。

行政担当
「移民は国の経済問題を解決し、経済を活性化する助けになると考えています。」
「大切なのは行政面で正規の滞在者になる手続きに寄り添い、生活と労働面で先の展望が見えるように支えることです。」

NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)

この”移民の自立を支援する労働者協同組合の設立”は、スペイン各地に広がっておりますが、実は、スペインでは労働者協同組合の先進国ともいわれています。こうした取り組みがヨーロッパに広がっていくのかが今後の課題でもあります。

協同組合に詳しい専門家
「スペインでの取り組みで移民が生み出すものは社会にも還元されるという認識が広がるか、どうかがカギ。」
「社会にとってのメリットが大きいと認識されれば広がっていくのではないか。」

NHK番組『国際報道2023』「スペイン 移民自身による自立への取り組み」(23/6/30放送分より)

社会的に排除されてきた人々が自立し、誇りを持って働ける社会を創ろうとうする取り組み、移民自身で自らを ”自立”させる取り組み、それがスペインで始まった”移民のための労働者協同組合”です。


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