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食料問題、子供にどう伝える?

前回のボソッとでは、VUCA時代を生き抜く子供たちに「フェイクニュースにだまされないで!社会の分断に巻き込まれないで!」というメッセージを伝えるために、大人として子供たちに日々のニュースをどのように教えていけばよいのかを考えてみましたが、今回は実際にどう伝えていくかを考えていきたいと思います。

この数日間、国際ニュースのトップニュースで報道されている「ロシア 黒海経由の輸出合意 履行停止」について取り上げていきたいと思います。




ロシア 黒海経由の輸出合意 履行停止


まずは、この「ロシア 黒海経由の輸出合意 履行停止」について、いまどのようなことが起こっているのかをご紹介したいと思います。

ロシア大統領府のペスコフ報道官が、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐるロシアとウクライナの合意について「合意の履行を停止した」と発表。

黒海経由の輸出合意とは、昨年2022年2月の侵攻開始後にロシアが黒海を封鎖したことにより、ウクライナ産農産物の輸出が滞りだしたことによって、途上国を中心に食料不足が起きたことへの打開策として去年7月に国連などが仲介して結ばたという合意です。


履行停止に関する各国の主張


この履行停止の措置に関して、各国が主張していることをまとめてみましょう。

ロシア側による「履行停止」の主張
欧米の制裁措置によってロシア産の農産物などの輸出が滞っていると主張していることです。つまり、ロシアへの制裁解除が実現して輸出が実現されない限り、合意に復帰することはないとしている。

ウクライナのゼレンスキー大統領
「ロシアは明らかに政治的な問題を解決するため圧力をかけている」と述べ、合意の履行をカードに制裁解除の要求を欧米側に受け入れさせようとしていると非難した。

国連のグテーレス事務総長
「世界は今日、小麦価格の顕著な上昇を目の当たりにしている」
「提案が無視されたことに深く失望している。ロシアの決断は困窮している全ての人々に打撃を与えるだろう」

アメリカのブリンケン国務長官
ロシアを強く非難している。「ロシアが食料を武器として利用しているために食料を切実に必要とするところで入手が困難になるだろう。許しがたいことでありあってはならないことだ。」


このニュースの出元


以上のように、私がこの「ロシア 黒海経由の輸出合意 履行停止」のニュースを知り、上記のようにまとめましたが、これらの内容は下記の日本の報道内容によるものです。

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』
NHK番組『国際報道2023』

この番組でキャスターさんによる解説もありましたので、ご紹介させていただきます。

「ロシアの主張は”途上国の食料不足は西側の制裁のせいで起きている”というもの。そもそも軍事侵攻が無ければロシアに制裁が行われることはなかったので、問題の責任を転嫁して、被害者のようなふるまいをしていると言えます。」
ロシアは食料を“外交の道具”にしてしまっている。食料までも自らの利益のための外交の道具にしてしまうロシアの狙いをしっかりと観ていく必要があります。」

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』より

「”輸出合意停止”で食料危機 深刻化の懸念。世界的な食料危機の深刻化や、食料価格高騰を防ぐため、国際社会がいかに働きかけることができるか?」

NHK番組『国際報道2023』より


ロシアのニュースはどう伝えているのか?


一方、ロシアのニュースサイト『スプートニク』によれば、このような内容でロシアでは報道されていることが分かります。

産経新聞によると、米国のトーマス=グリーンフィールド国連大使は「ロシアは人類を人質に取った」「(ウクライナ産穀物への依存度が高い)中東やアフリカで子供や授乳中の母親らが実際に苦しむことになる」などと主張した。だが、穀物合意で輸出されたウクライナ産穀物の内、最貧国に渡ったのは全体のわずか2.3パーセント(76万8600トン)であるほか、ウラジーミル・プーチン露大統領は「ロシアは最貧国に対し無償で穀物を提供する用意がある」と表明しており、米国連大使の発言は的外れだ。

ロシアのニュースサイト『スプートニク』


子供にどう伝えるか?


日本に住んでいる私たちが日本の報道番組で知った内容だけ踏まえれば、今回の「ロシア 黒海経由の輸出合意 履行停止」はロシア側が一方的に悪いと思うことでしょう。

それをそのまま子供たちに伝えてしまっても良いものか?

ロシアのニュースサイト『スプートニク』で報道されている「ロシアは最貧国に対し無償で穀物を提供する用意がある」というロシアの主張を踏まえるのならば、ロシアは途上国支援として食料を供給しているということ、つまり、ロシアの支援によって救われている人がいるならば、ロシアは決して悪いことをしているわけではない、ということ。


しかし、ロシア以外の各国の主張やニュースキャスターの解説を見ると分かりますが、食料を外交の手段に使って、ウクライナが供給できる食料を止めてしまい、そのことによって世界の飢えがひどくなるのは大問題である。


しかし、この世界では果たして「食料を外交の手段にしてはならない」という理念を押し通すことができる世界なのかを考えると、決してそうはならないと思います。
仮のお話ですが、もし日本とアメリカが戦争したら、制裁としてアメリカの食料は日本に供給されず、食料自給率の低い日本は食料を確保することができないということにもなりかねないということ。

「食料を外交の手段にしてはならない」という理念を現実的なものとするのは、【食料は国連が全て仕切る】ということにしないといけないのでは?

命に係わる食料を外交の手段にさせないためにも、国連が世界の食料を全て管理、生産も供給も管理する社会にしないといけないのではとも考えられます。

そして、そもそも”食料をビジネス”にしても良いものか?という資本主義社会への究極的な問いも自然発生するのではとも思います。

このようにいろんな視点を踏まえて、いろんなことを考えたうえで、大人から子供に教えていく。

ホント、教えるだけでもここまで複雑になるのですから、世界は複雑になったというのを改めて実感しますね。

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