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米国の『リセッション』は織り込み済なのか?

Twitterでは週に何度か投稿していましたが、Noteでの記事は久しぶりとなります。

さて、今日は債券市場から見たときに『米国のリセッション』は織り込み済と言えるのか否かを考えてみたいと思います。

マーケットでは将来の政策金利を当てる為の先物が取引されており、その取引価格から市場が将来のFF金利(Federal Funds Rate : 米国の政策金利)をどう予想しているかを知ることが出来ます。

この取引価格から各FOMC会合の利上げ確率を計算するにはやや複雑な計算が必要ですが、実はCMEのWebページでその計算結果を公開してくれています。

それによると2022年7月1日時点での利上げ織り込みは以下のようになっています。

FF先物が織り込む今後の利上げパス

上の表の見方ですが、例えば 7月のFOMC会合でマーケットは『政策金利が2.25%〜2.50%になる可能性が82.6%』と織り込んでいることを意味します。
現在の米国における政策金利は1.50%〜1.75%ですので、『0.75%の利上げを82.6%の確率として織り込んでいる』と読み替えることが出来ます。

トレードを行う際に『市場が何を織り込んでいるか』を知ることはとても大切です。例えば、経済指標であればエコノミストが予想する中央値を事前に把握しておくことが大切ですし、選挙といった政治イベントではメディア等からどちらの政党が勝つかを予想することが大切になります。

その中でも特に重要なのが、金融政策決定会合で何が市場で織り込まれているかを事前に知ることです。特にFF先物を使うと経済指標や政治イベントとは異なり、正確にマーケットの織り込み(コンセンサス)を測ることが可能です。

例えば、7月1日の織り込み通りにFOMCを迎え、実際には0.5%の利上げしか行わなかった場合は『ハト的』と市場は捉えて株価が上昇する可能性が高いと言えますし、逆に1.0%の利上げを行なった時は『タカ的』と捉えられて株価が下落する可能性が高いと言えます。0.75%と予想通りの利上げであれば、それ以外の項目(経済に対する見方や次回FOMCの見通しなど)に関するコミュニケーションが大切になります。
事前にマーケットの織り込みを正しく把握しておくことで、イベント前後でのトレード戦略を立てやすくなるわけです。

さて、今は目先の織り込みについて説明しましたが、FF先物はもっと先のFOMC会合の織り込みについても教えてくれます。
7月1日時点のFF先物のプライスを見ると、FOMCは急ピッチで『利上げ』を行い、年内には政策金利が3.25%〜3.50%に達すると市場は織り込んでいます。
しかし、その後来年後半から徐々に『利下げ』を行うことも同時に織り込まれています。

これは何を意味するのかを考える為に、二つのパートに分けて考えてみたいと思います。
まずは、急ピッチで『利上げ』を織り込んでいる年内の見通しについてです。

現在、FOMCは高インフレに起因する利上げを行っており、年内はインフレが高止まりするということは広く知られた事実です。
しかし、利上げ織り込みから導き出されるより重要なポイントは『景気が減速しても、少なくとも年内はインフレを優先してアグレッシブな利上げを続けるだろう』と市場が考えていることです。

景気が減速しても金融環境を引き締めるということは、企業の信用リスクを増大させ、株価にとってもマイナスです。

一方、来年から織り込んでいる『利下げ』についてはどのように考えるべきなのでしょうか。

来年のインフレが利下げを正当化するほど落ちているかどうかは現時点では誰にも分かりません。しかし、少なくとも市場は『FOMCが無視できないほどの景気減速(リセッション)が起こる為、利下げを行わざるを得なくなる』ということを織り込んでいると考えられます。

その観点から言えば、市場は近い将来、リセッションがおこることは既に織り込み済みであると言えます。
だとするとこの先、重要になってくるのは『リセッションが起こるとすればどれ程深刻なものなのか?』といった景気減速のストーリーです。その回答は現時点では誰も分からないですが、大切な点はマーケットのテーマが変わってきているということです。

2022年の上半期は『インフレ』がマーケットのテーマでした。
しかし、それに対するFRBの対応方法が明確になるにつれて、テーマは『景気減速』へと変わってきています。それが如実に表れているのがFF先物の歪なカーブで、『利上げが始まったばかりなのに将来の利下げも織り込んでいる』という点です。

マーケットのテーマが景気へと変わる中、株以外のトレーダーもいつも以上に今月から始まる企業決算に注目しています。
ポイントは決算結果ではなく、『将来のガイダンス』です。決算というボトムアップの情報からリセッションの深度を確認したいというトレーダーが増えています。

さて、以上を本記事の結論として纏めると
『金利市場は既に相当のリセッションを織り込んでいる』
『市場のテーマはインフレから景気減速へと変わった』
『景気減速の深度を測る上で企業のガイダンスに注目が集まっている』
ということが言えます。

久しぶりの投稿、如何でしたでしょうか。
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