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ニコンD300 D300S 長きに渡って愛されるカメラ

 デジタルカメラの一眼レフは登場してからしばらくはセンサーのサイズが多くはAPSだったがニコンは2007年にフルサイズでD3,APS-CでD300と別れることに。この2機種でフラッグシップ機という名が復活した感じでそれに見合った性能を持ったカメラとなった。一つ前のD200でボディの作りもしっかりとなり大きいレンズを付けて長時間撮影をしても負担にならないグリップや大きさになったがD300はそれらを継承しただけでなく様々な点で改良された。

 一番の特徴はセンサーがCCDからCMOSになったことで電気の消費が抑えられたこと。D200は電気の消費が多いうえに手ぶれ補正のレンズ(この当時は電気の使用量も多かった)を使うとさらに消費が酷くなり撮影量が多いと電池の心配も問題だった。
 CMOSセンサーになった事でライブビューが出来ることになったがモニターが固定だったのと野外では周囲の明るさで画面が見にくいことからほとんど使う事はなかった。同じ頃に友人がオリンパスのデジタルカメラを使っていたがモニターが可動式ということでファインダーが覗けない位置でもモニターを見ながら撮影していたので便利だと思ったが固定では同じようには出来ずガッカリした。

 画像処理エンジンがEXPEEDと統一された。それまでは機種ごとに色のバラツキがあったのが無くなったのは良い事だ。新たにピクチャーコントロールシステムやアクティブDライティングが搭載され後者はそれ以降のカメラでも撮影時に大きく貢献している。さらにD3にも搭載されなかったホコリ除去機能が付いたのは大きかった。オリンパスやペンタックスのような強力なゴミ取りではなかったがセンサーへのゴミの付着は削減しただろう。

 画素数は1230万画素と今の高画素機から比べればはるかに少ないが大きいファイルサイズを望んでいないクライアントからは今でもこのクラスの画素数の希望が多くある点では標準な大きさかもしれない。

 AF測距点は51点。D200の11点から大きく増えたうえにクロスセンサーも15点と増えて画面の真ん中以外でも合わせやすくなった。特に動くものを画面の中央以外の位置でも捕らえやすくなり構図の面でも被写体を画面中心から自由に配置出来るのは便利な事だ。

AF-ONボタン(右)とAE-L/ AF-Lボタン(左)。前者は通常シャッターボタンを押してAFでのピント合わせをするのを止めてこのボタンでAFを動かすことに。それによって置きピンで動くものを撮ったりするのに使う。後者はAE撮影で露出を固定して撮る時に使う。どちらも必要なボタンだが両方付いているカメラはニコンには少ない。

 2009年にD300Sが登場。D300が発売されてわずか2年という感覚の短さはデジタルならではか。細かい点の変更が主だが大きな違いは動画が撮れるようになったことか。今のカメラのように動画専用のボタンがないなど操作方法は独特のものだが動画が撮れるなら背面のモニターをバリアングルにすればビデオカメラのように使いやすい気もするが今までのカメラと同じ固定された構造。可動式にすれば静止画でのライブビューの撮影にも使えるのにと思うがビデオカメラを作っていないニコンの設計陣にはそういう考えが浮かばなかったのだろうか。
 D300Sになって一番嬉しいことはCFとSDのダブルスロットになりメディアのトラブルに強くなった事だ。D300はCFのみの1スロット。それまでも撮影時のメディアのトラブルはなかったが周囲からはいろいろと聞いているのでいつ起きるかという心配もあった。またほとんど取り上げられていないがカスタム設定でボタンを押せばjpegのみの設定時に+RAWで撮れるようになったのは便利だ。通常RAWも一緒に撮っておこうと思った時にいちいち画像のサイズを変えるボタンを押しながら何回も項目を動かすのは面倒なもの。最近はシャッター優先でも撮るので当初使っていなかったAE-L/AF-Lボタンに設定していたのをプレビューのボタンを押すと設定されるようにしたがボタンを押せば瞬時に設定されるというのは便利なことだ。使い勝手の良さからそれ以降の機種でも同じようにしたかったが設定できるボタンが少なくこの設定はできず。ニコンは今のミラーレス機もそうだが他社に比べてカスタム設定できるボタンが少な過ぎるのは困ったものだ。

 D300を購入したのは発売から1年後の2008年。今でもそうだが発売当初は初期不良が多いことから様子見をした。それまで使っていたD200に比べて多くの点で優れていることからすぐにメイン機に。撮影内容に合わせてカメラを使い分けていたが2台に違うレンズを付けて撮ることが増えたことからもう1台購入。2台使用時の相棒だったD200も悪くはなかったが画素数が少し少ないのと色味が違うことがマイナスだった。2台になったことでD300がメインの時代が何年か続いた。

 2014年にD7100を購入した。画素数はD300の倍近い2410万画素。ローパスフィルターが無くなったことでレンズのシャープさが増し同じレンズでもD300より良く見えるなどメインの座を譲るかという感じだったがそんな時にD300Sを購入した。理由は当時一番撮影依頼が多いブライダルの撮影。撮影時は先方のメディアを使って撮影するのだがこの会社は設備投資を抑える傾向が続いていた。年間の婚礼件数は多いがアルバム1冊の売上の6割を式場側が取るため収益がどうしても低くなる。そのために抑えているのだがここが使っているカメラがキャノンということでメディアはCFカードのみでSDカードは買わないという方針。仮にSDカードで撮った場合は撮影後のPC(サポートが切れたXP)にバックアップをした後にそこから先方から渡されたCFカードにコピーするという作業をすることに。自分一人ならその程度の時間増も我慢出来るが件数が多い時はカメラマンの数も増えるのでバックアップするだけで1〜2時間待ちという絶望的な時間ロス。そんな状況だったことからCFカードが使えて同等の性能であるD300Sを購入したのは他でもまだ使えるという考えからだが反面無駄な設備投資ともいえる。いつでもそうだが発注する側の思考が優先され受注する方が我慢するのが世の常だろう。

D300SとD7100。D7100はコンシューマー向けということでボタンやダイヤルの配置が違う。2台ともシグマの17-70mmF2.8-4(D300Sの方は初代)を付けているがレンズの方も時代が変わることで大きさも変化している。

 D300を使い続けて良かったと言えることとしてシグマの18-35mm f1.8を購入したことだ。D300Sになっても高感度はISO1600が限界。ブライダルの撮影では式前にメイクの撮影をすることがあるがこの頃でもストロボを使わないで撮影することが多い。メイクルームはあまり明るくなくISO1600ではシャッター速度を上げることが出来ない。シャッター速度を上げられないなら絞りを開けるしかないということで購入したのが18-35mm。画質優先のArtレンズということでレンズ自体は大きいがズームレンズということでレンズ交換をせずにf1.8という明るい絞りでいろいろな画角で撮れる。AFは開放では精度的にイマイチだが何枚か撮ることでクリアできる。コントラストの高さとシャープネスの強さは光が弱いと画質のメリハリさがおちるデジタルでも安定した画像を撮れる。そういったことでこのレンズは気に入ったレンズのひとつでありのちに50mmも購入することになった。

シグマ18-35mmF1.8を付けたD300S。F1.8という明るさと画質重視のArtレンズということで大きいレンズだがD300の大きさなら長時間の撮影でも負担にならない。ブライダルの撮影では大きく貢献したレンズだが野外ではD300 のISO感度が200からということで晴天時には絞りを開けることができないので最近このコンビでの撮影はあまりない。


 D300Sの後は7000番台のカメラになったがニコンの位置づけとしては違う感じだった。コンシューマー向けとしていたことからボディの作りが華奢になり操作性でも合理化されている。ボディが小さくなったことで大きいレンズを付けて縦位置で撮る時には持ち難いがSDカードのダブルスロットになったのはメディアのバックアップという点で良いことだ。さらにD7100でローパスフィルタが無くなったことと画素数が2400万画素とD300の倍の画素数になったことでの画質の差は大きく感じるし別のクラスのカメラとなってしまった。

 D7100以降の機種で画質の面で大きな差が出てしまったが全体的な面でD300の後継機となったのはD500だ。画素数はD7200より少ないとはいえ他の面ではしっかりとした作りと性能を持っているカメラだ。残念ながら製造終了となったが
D300同様長く使われることになるのではないか。

性能面では大きく進化したD500だがボディの質はD300の方がしっかりしている感じがする。同じマグネシウム合金だがD500の方がボディに傷がつきやすい。この状況はD7100、D7200でも同じで材質のコストダウンが行われている可能性もある。


 ミラーレス機が主流の時代でもD300は人気があるようだ。メーカーでの修理は出来ず中古しかないが数が多いので状態の良いものを買えば長く使える。個人的には基本的な性能はあまり変わらないがどちらかといえばD300Sの方が良いだろう。後から出たので状態の良いものは高いかもしれないがダブルスロットということでメディアのトラブルの対策にもなるし1枚はSDカードという事で急にメディアを補充するにしても手に入りやすい。今のカメラに比べて操作方法が良くないが動画も撮れるので使用範囲も広がるだろう。


 デジタルカメラが発売されてからAPS-Cというセンサーサイズのカメラは長く販売されてきたがミラーレスになってからはカメラ全体が売れなくなったことから各メーカーともあまり力を入れなくなってきた。フルサイズのカメラの方が価格も高く出来るし2種類を維持していくのは売れ行きの面でも厳しいだろう。ニコンでもAPS-C機をいくつか出してはいるがいずれも入門機クラス。レンズも絞り値の暗いズームレンズや単レンズを数本だけであとはシグマで数本という寂しい内容だ。今後もスマホで撮る人は増えていくだけにカメラの売上は伸びない。ミラーレス機でD300のようなカメラが出ることはないだろう。

タムロン90mmF2.8。原色の色が強いD300にはこの手の被写体は
合っている。レンズも大きいし被写体との距離が近い花の撮影では
大きいボディの方が使いやすい。
シグマ17-70mm
シグマ17-50mm
シグマ17-70mm
シグマ50mm
ニコン85mm
D300になって原色が鮮やかな感じになった。少し赤に寄った感じになり青空は少しアンダーにすると目立つがそれ以外は今風より少しおとなしい色合いか。

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