フィリップ・カリー博士とすれ違った思い出

 SF作家でサイエンスライターでミステリ作家でもあり科学者でもあったアイザック・アシモフは、若い頃に一度だけアルバート・アインシュタインを見かけたことがあるとエッセイに書いています。
 そのエッセイによるとアシモフが博物館を見学していたところ、展示室にアインシュタインが入って来たそうです。若い学生だったアシモフはアインシュタインから目を離すことができず、さりとて近寄って話しかけるようなこともできず、博物館の人から説明を受けながら進んでいくアインシュタインの後ろを距離を取ってふらふらとついていくことしかできなかったのですが、ふと気づくと同じようにアインシュタインを遠巻きに眺めている人が何人もいたのだという話です。記憶に頼って書いているので、もし覚え違いがありましたらご容赦下さい。

 さて、実は同じような経験が僕にも一度だけあります。それは福井県立恐竜博物館開館1周年記念の行事として、フィリップ・カリー博士の講演が行われた時のことでした。首尾よく申し込みを済ませて、福井へ!当時は名古屋から日帰りで勝山市まで行く体力があったんですよね。ともかく恐竜博物館のこけら落としイベントだった恐竜エキスポから1年ぶりに恐竜博物館を訪れました。恐竜エキスポの際、あれこれブースが立ち並んでいたところが、あるところは駐車場に、あるところは公園の広場になっていた様子は面白かったです。
 大学の教室のような部屋の中ほどで講演を聞き、講演が終わるとカリー博士にサインをいただけるということだったのですが「そこまでミーハーじゃないし」と会場を後にしました。今にして思えば、カッコつけてないでもらっておけよ、という感じですが。
 その後、普通に館内を見て回り、エスカレーターの吹き抜けの脇にある廊下にいた時、たぶん他の博物館や今後の企画展などのフライヤーの類をナップサックにしまおうとしていたんだと思います。とにかく僕はその時、かがんで下を向いていました。するとすぐ横で英語の会話の声が聞こえます。はっと顔を上げると、まさにそのフィリップ・カリー博士が遠ざかっていく背中が見えました。博士が僕の真横、10cmくらいのところを通り過ぎて行ったのだと理解した途端、心臓が止まるような気がしました。で、冒頭のアシモフのエッセイの内容を思い出し「これかぁ!」と思った次第。

 ついでに言うと講演の時「ここ空いてますか?」と聞かれて、僕の隣に座った方が居たのですが、その方もひょっとしたら、当時、個人サイトで恐竜情報を発信していらした「恐竜の楽園」さんだったのではないかと後から思ったりしました。これは確認もできないのですが、サイト内にあった写真に雰囲気が似ていたかな、と。
 講演の中身?あまり覚えてないですが、その頃の恐竜知識として当たり障りのないものだったかと。
 博物館のサイトにはまだイベントのページが残ってました。恐竜の狩りについての講演だったようで、カリー博士ならそりゃそうかというテーマですね。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。


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