古代インドの五等分の花嫁

 どうやら「五等分の花嫁」という漫画/アニメが人気のようです。僕自身は少年マンガのラブコメにはあまり食指が動かないので、全く見ていないのですが、オタク系の情報にさらされているとあらすじとか設定くらいは目に入ってくるものです。
 なんでも主人公とヒロインの結婚式から始まって、すぐ回想シーンに移り、高校時代主人公が家庭教師をしていた5つ子のヒロインたちの誰が開幕シーンの花嫁なのでしょうか?という内容なのだそうですが・・・。

「花嫁が五等分されてる訳じゃないよね?」と僕は首を捻ったのでした。タイトルの日本語としての不自然さで興味を引く手法もありますし、このタイトルが腑に落ちるエピソードがあるのかもしれません。あるいは「花嫁」という概念が五等分されて、各ヒロインに花嫁になるチャンスが分配されているイメージなのか・・・。

 色々腑に落ちずにいる僕の頭に、「五等分の花嫁」という言葉がもっと似あうヒロインが降りてきました。彼女の名前はドラウパディー、インドの2大叙事詩に数えられる「マハーバーラタ」のヒロインです。
 王女であるドラウパディーの花婿は、父王によって強弓で的を射た者が選ばれることになりますが、この課題をクリアしたのが主人公アルジュナでした。
 アルジュナは5人兄弟と母の6人で身分を隠して逃亡中でした。喜び勇んでドラウパディーを連れて家に帰り、母に「花嫁を手に入れました」と報告するのですが、忙しく働いていた母は何か食べ物を手に入れてきたのかと思って「兄弟で平等に分けなさい」と言ってしまいました。すぐに勘違いに気づいて謝る母ですが、神々ですら一度口に出したことは取り消せないのがインド神話の世界観です。またドラウパディーも「お義母さまのいうことだから」とそれを受け入れてしまうので、花嫁は5人兄弟全員の妻となることになりました。
 現代人の感覚だと「ええぇ・・・」としか感想が出てこないエピソードではあるのですが、そのような自分の知っている価値観と全く異なる価値観に触れるのも、歴史や古典の醍醐味だと思っておくことにしましょう。

 いかがでしょうか「マハーバーラタ」の方がちゃんと「花嫁」が「五等分」になっているでしょう?

 マハーバーラタは原典は読んでなくて、イギリスの作家が小説化した「マハーバーラタ戦記」という作品を読んだだけです。それも記憶がだいぶ曖昧になっているのですが、その雰囲気は自分が書いている小説のベースの一つとなっています。

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