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「潮風と砂のあるところ」について

 noteの企画「創作大賞2022」に応募するため、旧作「潮風と砂のあるところ」をほんのちょっと手直しして、再アップしました。

 この作品は今から20年ちょっと前に書いた作品で、サイト閉鎖や、パソコンの故障などで他の小説が消えてしまっても、この作品ともう一つの書きかけの作品だけは生き残ってくれています。
 noteも元はと言えば、これらの小説の行き場所として登録したものです。(その前には「小説家になろう」にも載せたりしたこともあるのですが、その後「なろう系」などという言葉が聞かれるようになって、「ちょっと違うかな」などと思って、移ってきました)
 最近では歴史エッセイ中心になってますが、小説にも未練があるので、プロフィールの文章などはまるで小説メインのようになったままです。

 さて、この作品は直接的にはサン=テグジュペリ生誕100年で書店などがちょっと盛り上がっていた約20年前、テレビでテグジュペリにちなんだ特集が放映されていて、北アフリカの海岸線を空撮で延々映していたのを見たのが直接のアイデア元となっております。地中海の強い陽光に照らされた岩と砂の地形は、本作の第3部や5部の描写に繋がっています。
 他に子どもの頃の遠い記憶なのですが、アメリカで郵便飛行機のパイロットが酷使されて過労で事故が多かったため、パイロットのストライキがあった、という内容を何かのドキュメンタリーで見た覚えがあって、それもこの小説の元となった大きな要素です。
 さらに吾妻ひでおの漫画「銀河放浪」の1エピソードに、借金して宇宙船を買って運送業を始めた女性パイロットが遭難してしまう話があって、その描写も直接的にこの作品の元となっています。
 これらの元ネタに僕自身の世捨て人趣味があわさって、「潮風と砂のあるところ」という短編小説に結実しました。ざっとでも目を通していただけたら、これに勝る喜びはありません。

 複葉機および飛行船のメカニックについては、かなり適当です。メカニック的に正確であるより「絵になる」ことを優先しました。これについては、考証の無限の沼に陥って本編が一行も進まなくなる事態が容易に予想できたので、歴史小説ではなく架空世界の歴史を描くファンタジー小説を選択したのだから、と言い訳させて下さい。
 例えば3部で、自動車でいうクラッチを繋ぐような描写をしましたが、実際の複葉機がそういう構造になっているのか、知らないまま書いています。

 作品自体のテーマは、現代で言う「やりがい搾取」に近いものです。これは当時の自分自身がストレスに感じていたことがストレートに反映した結果ですが、「やりがい搾取」なる言葉を聞いたこともなかった時代にテーマに据えることができたことだけは、ちょっと誇ってもいいかなと思っています。

 この作品は最初は自分のサイトにアップしたものです。当時交流のあったネット友達数人が読んでくれて、感想をもらいました。ただその中に、自分としては絶対に言われたくない言葉がありました。複葉機や飛行船の出てくるお話というだけでその言葉は言われかねないので、言われないように慎重に雰囲気を作り、使う言葉を選んだつもりでした。それでも言われてしまったのです。「ジブリっぽい」と。

 若い頃に書いた小説の思い出話は、ここまでにします。繰り返しになりますが、ちょっと目を通していただけたら、少しでも楽しんでいただけたら、これに勝る喜びはありません。

 リンク、もう一回貼っちゃいます。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。


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