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D2C事業でもMVPで仮説検証する方法 | D2Cスタートアップの教科書

※「D2Cスタートアップの教科書の目次」にD2C関連の記事をまとめています。

D2Cなどの物販事業は、インターネット系事業とことなり、事業を開始するまでのコストが大きく異なります。

それは、
商品の「仕入れ」
にある程度資金が必要だからです。

しかし、新規の物販事業は大抵市場にまだ流通してない新商品を販売するため、
そもそも売れるのか?
いくらなら売れるのか?
どの程度のブランディングがされれば売れるのか?
といった様々な変数が不明瞭なまま事業がスタートを切ることが多いです。

結果的に「絶対売れるはず…!」と自身をもって始めた事業も、全然売れず資金・在庫・労力の無駄になってしまうなんてこともあります。


そんなわけで、スタートアップでは「MVP(≒重要な機能だけをもった最小実装)」で「仮説検証(≒需要があるかの確認)」するといった言葉が生まれ、労力をかけてリリースする前に需要があるかを確認しましょう。と言われています。


しかし物販の場合、なかなか最小限でテストするという訳にもいきません。

そもそも商品を用意せずに販売することはできませんし、クリエイティブに手を抜いてしまうと、ダサいが故に売れないこともありえます。


というわけでこの記事では、物販事業においてMVPで仮説検証する方法をまとめました。

仮説検証とかMVPとか意味無い説について

MVPで仮説を検証する行為は、最近では「意味ないんじゃない?」という派閥も増えてます。

当たり前のはずですが、企業家は「〇〇な人は〇〇を感じているから〇〇に価値を感じるはず」という強いバイアスをもって検証してしまうため、出てきた結果にも恣意的な要員が入った、結果ありきの検証が行われてしまうからということです。

インターネット系の場合は「(まともなエンジニアが一人いれば)どうせお金あんまりかからないから、最初からちゃんと作っちゃえば?」という発想になりますが、
D2Cの場合だと仕入れやデザインなどの立ち上げコストで瞬間的に数百万円が吹き飛ぶため、まだ「ちゃんとMVPで仮説検証する」という方針が優れていると感じています。

D2Cでは「お金を払うか?」までを検証すべき

仮説検証をする上で一番大事なのは、何を検証するのか?という目的の定義です。

スタートアップの事業立ち上げの際によく定義される目的は、「〇〇のことを本当に課題として感じているか?」というニーズ調査や、「課題の解決策として〇〇を求めているのか?」というウォンツ調査です。

しかしD2Cので検証すべきは、さらに踏み込んだ「適当なお金を払い売るほど〇〇を求めているか」という点です。

D2Cは必ず一定以上の製造原価が発生するため、無料で商品を配ることはできません。必ずユーザーにお金を払ってもらいます。

無料なのか有料なのかはユーザーにとって非常に高い壁です。
新しい商品を購入してもらうには、さらにハードルが上がります。

なので、D2Cで仮説検証する場合は、ニーズやウォンツが明らかなプロダクトに対して「実際にお金を払う」がKPIになっていなければ意味は無いことに重点を置くべきです。

ニーズやウォンツが明確でないのならばもはや新商品を売るには適していない領域です

最小限のコストで検証する方法1: 事前予約

製品を作る前に商品コンセプトを説明した予約用のページを作成し、申し込みだけ受け付ける。
という方法はインターネット系のサービスでもよく見うけられる方法です。

ただし、先ほど説明したとおり、D2Cの仮説検証は「お金を払うかどうか?」までが重要です。

D2Cで事前予約をする場合は、必ず金額を明示し、クレジットカードなり後払いなりで決済与信をとりましょう

事前予約で連絡先などだけを受け付けた場合と、実際に決済させた場合とでは、CVRは5~10倍ほど変わった事例も多々あります。
事前予約でとった連絡先に、最後販売開始の連絡を送っても10%以下しか決済まで辿りつかなかったこともあります。

それほど「お金を払う」という行為のハードルは高いです。

最小限のコストで検証する方法2: 家で作る

事前予約で「お金を払ってくれるユーザー」の存在がわかったとしても、実はD2C事業の検証としては不十分です。

なぜなら、D2C事業の売上はほとんど新規顧客ではなく継続顧客から生み出されているからです。
一度実物を見たユーザーが「リピートしてくれるのか?」が一番重要なKPIなのです。

ただ、商品を仕入れてリピート率まで調査しようとすると、結局販売を開始したということと同じコストがかかってしまいます。
そこで取り入れるのが、「自宅で作った商品を販売する」です。

販売を開始して事業を継続しようとすると、一定のロットを安定して生産する必要があるため、ほぼOEMで外注する必要がありますが、受注生産はもちろん、小ロット製造は受け付けてくれません。

商品を自宅等で作り販売するのであれば、受注生産で販売できるのでコストを抑えられます。

ただし気をつけなければならないのは、本当に需要があって本格的にグロースさせる時にOEM先が見つからず増産できないことや、OEMに依頼すると大幅に原価が上昇してしまう、などの事態です。

ですので、販売開始する前にある程度OEM先の目処と現実的な価格感は抑えておくべきです。
そして、リピート率の検証が確認できた段階ですぐにOEM生産に切り替えます。

最小限のコストで検証する方法3: 詰め替え販売

自家製商品の販売は食品であれば実施可能ですが、化粧品や健康食品となってくると自宅で作ることは困難です。

そこでおすすめなのが「詰め替え販売」です。

ベンチマークとなる商品がすでに存在し、訴求やコミュニケーションアイデアで差別化する場合は、競合となる商品の中身を取り出して詰め替えて販売するという方法で、自家製の受注生産体制が作れます。

アウトかセーフかギリギリの検証方法をとり、結果的に成功させた企業が存在するらしいです。

最小限のコストで検証する方法4: なるべく在庫切れさせる

「家で作れない」「詰め替えもできない」となったら、もうOEM先に依頼して商品化するしかありません。

ただしなるべく商品は極力少なめに作るべきです。

初期のユーザーは新しい物好きなので、予約販売や在庫が切れて到着日が未定になってしまってもそれほどCV率は落ちません。OEM先に依頼して最小ロットで作るべきです。

ただ一度販売が始まってからは在庫切れは継続ユーザーの満足度を大きく落としてしまうので、検証ができて販売が開始したら十分な量の商品が生産できる体制を組むべきです。


以上です。

D2Cは金銭的にも期間的にも初期コストが大きい以上、とりあえず作ってみてダメなら即撤退というスピード感が出せません。

なるべく丁寧に検証を重ねた上で商品化に踏み切る方が利口でしょう。

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