物を売る事業を始める前に絶対読むべき9冊 | D2Cスタートアップの教科書
※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています
前回は「すぐに倒産しないためのざっくりPLの引き方」ということで、大まかな売上予測と必要な資金繰りを把握するための事業計画の引き方をまとめました。
D2Cに関しては、インターネット系事業とは違って起業家も少ないし、潜りがちな人が多め。情報もまだあまり出回っていないので、始めようにも始め方がわからない人が多いと思います。
そこでこの記事では、自分がD2Cを始める前に読んだ本の本で、参考になった書籍を紹介します。
D2Cやるなら通販から学べ!
D2Cっていけるかも!?と考え始めたのが事業を始める約8ヶ月ほど前でしたが、自分自身はエンジニアだしWeb系アプリ系のスタートアップに関わった経験しかなかったために、
とりあえず勉強しなきゃ!
と考え、手当たり次第に「通販」の情報を漁り始めました。
どの本がおすすめなんていう話を聞ける相手もいなかったため、資金調達する前に30冊・リリースする前に20冊もの関係しそうな本を読み漁りました。
ちゃんと調べてからD2Cを始める人もあまりいないようで、前提知識で認識の差があり、コミュニケーションが逆に大変なんてこともありました。
しかしその一方で、「この人通販を知らなそうだなー」というところは、だいたい数ヶ月でフェードアウトしています。
そんなめちゃくちゃ重要な通販の基本的な知識を学べる書籍を、自分が読んだものの中で特に役にたった9冊紹介します。
通販を知らずに陥るD2Cの落とし穴
先ほど通販ノウハウを知らずにフェードアウトした事例が多いと書きましたが、典型的な落とし穴がいくつかあるので先に紹介します。
落とし穴1: 売れない
物販系のビジネスをやって一番手前にある落とし穴がこれ。単に売れない。
アパレル系D2Cのブランドをはじめとした、ニッチな商材やサスティナビリティなんていったエモい系のブランドが真っ先に落ちる落とし穴です。
売れているブランドのほとんどは、外から見ると非常におしゃれに作られているので、おしゃれな写真におしゃれな文言を添えたサイトを作れば売れると思っている人が多いようですが、
いくらおしゃれでイけていていも、基本的に、聞いたコトないブランドの商品なんて人は絶対に買いません。
これは、Webサイトを誰でもリッチ作れる様になった最近の話ではなく、2000年くらいから始まった通販界隈でも皆が一度は落ちたことのなる落とし穴でした。
通販事業は(立ち上げ時は特に)「ブランド」ではなく「課題解決」が重要だと言われています。お客さんが絶対に買わなきゃいけない理由があるか?というはD2Cにおいても重要な問いです。
落とし穴2: オペレーションが回らない
通販界隈では「桶の理論」という言葉がよく使われます。
これは、
製品・マーケ・サポート・オペレーションなどのあらゆる業務で桶が作られているとして、1つ業務でも穴が空いていると、利益という水がたまらない
というたとえ話です。
Web系・アプリ系の企業の場合、重要なのは製品作りとマーケくらいで、サポートなりオペレーションは優先度がかなり低くなります。
インターネット事業の様なノリで通販事業のサポートとオペレーションを捉えてしまうと、
「ミスが多発しお客さんに届かない」
「クレームが殺到して対応しきれない」
といったことが起きて破綻します。
商品やマーケだけではなく、サポートからオペレーションまで、全ての業務が成長に耐えられる仕組みを作っておくことが重要です。
落とし穴3: 黒字化しない
通販事業は「年商が3億円を超えるまで、儲かっているのかどうかわからない。」とよく言われます。
PLを引いてみればわかりますが、毎月の固定費を考えると、月商数千万円を超えるまで単月黒字化しません。
また新規獲得かけた広告費がペイするまで時間がかかります。
確かに売れているし伸びている、数百万のお金が毎月出たり入ったりしているけど赤字。
そんな期間がしばらく続くので、なかなか不安になります。
ここでKPIの改善をしっかり続けると、月商が数千万円を超えたあたりから黒字になってくれます。
逆に甘んじていると、いつまでたっても赤字のまま帰ってこれません。
通販事業の全体像がわかる本3選
「売れない」「回らない」「儲からない」などの通販の落とし穴を避けるために、まずは通販事業の全体像を把握することが重要です。
そんな時におすすめの書籍を3冊紹介します。
通販の仕組みを知りたかったらこの一冊で読めばOK!というほど内容の詰まった、まさに教科書的な一冊。
事業計画の引きかたやマーケだけではなく、「フルフィルメント」や「コールセンター」などのオペレーション業務をカバーしているのはもちろん、ブランディングなどの現代っぽい内容も十分に記述されています。
なかなか読み応えのある本ですが、通販で物を売ろうとするなら絶対に読むべき本です。
自分的に「あーこの人通販知らなそうだなー」と思うラインは、この本を読んだか読んでないかです。
全体像を机上で知りたかったら通販ビジネスの教科書で十分ですが、この本は安定した利益を得るために必要なKPIの具体的な数値をまとめてくれている1冊です。
通販事業は、端的に言えば「CPAを下げて、LTVを高める」につきます。
CPAを下げる方法は数あるマーケティングの書籍が大いに語ってくれていますが、LTVの方はノウハウがあまり公開されていません。
LTVを因数分解していくと、商品価格・継続率・原価などとなりますが、LTVの変数は山ほどあるので、現実的なところで、どのKPIをどこまで目指すべきなのかがわからなくなります。
この本は、
・原価率はこの〇〇%が理想
・コールセンターは一件〇〇円が普通
・配送費用は、だいたい〇〇円
・初月の解約率は〇〇%を目指して、2ヶ月目は〇〇%まで頑張る
といった、超現実的で実現可能なKPIが目白押しです。
この本のKPIを参考に、自社商品の特性を踏まえたKPIも引いて、事業計画を引いたら、だいたいその通りに実現できました。
通販においてフルフィルメントとは、仕入れ・物流・サポートなどのオペレーション周りの業務全般のことをさします。
多くの起業家がやっぱり憧れるのは「かっこいいマーケティング!」「ブランディング!」みたいなところなので、多くの書籍がそういったニーズを満たすために、マーケティング周りの情報が多く掲載されています。
しかし前述の通りフルフィルメントが欠けていると、利益が溜まらず漏れ続けてしまいます。
この本は、
・みんなこんな感じでやってるよー
・このくらいの金額感だよー
・こうやって交渉できるよー
という、フルフィルメントに特化した通販事業の基本をまとめてくれています。
マーケティングがわかる本3選
通販事業が成長するためには、新規顧客を獲得していくしかありません。
高騰し続けるネット広告からお客さんを獲得し事業の採算を合わせるには、マーケティングの1%の改善が最重要であり、十分に勉強できてしまう内容でもあります。
ですので、通販の先人たちが積み上げた広告マーケティングのノウハウをまとめた書籍を3冊紹介します。
顧客に直接のアクションを促す様な広告、通称「ダイレクトレスポンス広告」の初期の初期から活躍した神、ジョンケープルズ氏のノウハウを丸っと詰め込んだ1冊。通称ザコピ。
数十年前に書かれた本であるにも関わらず、現役で使えるノウハウしかありません。
筆者はインターネット以前の新聞広告時代からABテストを繰り返しており、通販で物を売り続けてきた経験から、「どんなコピーを使うとアクションをする確率が高いのか?」というABテスト検証済みのパターンが大量に詰まっています。
とりあえずこれを丸っとパクって自分の商品の広告に使ってしまえば、CTR・CVR改善間違いなしです。
また、
「ブランディング広告なんてやめておけ」
という通販における重要な示唆も提供してくださっています。
日本のマーケティングの第一人者神田昌典氏は、ザコピ以外にも伝コピ(伝説のコピーライティング実践バイブル)とザマケ(ザ・マーケティング)の2冊もおすすめしており、これらと合わせて読みたい本です。
前述のザ・マケと比べてこの本はかなり最近の本です。
ブランディングや全体のデザインや写真など大きな部分を変えるのは大変だけど、ボタンの下に書いてあるようなちょっとした文字(マイクロコピー)を変えるだけで、こんなにも成果って改善するんだよー
という本です。
・ボタンの色は〇色が一番押される
・ボタンの下に〇〇の画像を入れるだけでCTRが10%アップ!
・「無料で今すぐ」と「今すぐ無料で」はどっちが優秀?
というまさにマイクロなノウハウが学べます。
そういった細かいABテストは実務では検証しきれないので、この様な細かいテスト済みノウハウは非常にありがたいです。
この本は、通販界隈で有名な売れるネット広告社さんが書いた、単品定期通販のマーケティングノウハウに関する書籍です。
前述の2冊は、文言だったりクリエイティブだったりと汎用的なノウハウでしたが、この本は「単品定期通販」というビジネスモデルに絞った具体的なマーケティング戦略を書いています。
ここで書かれている内容は、システム設計や価格などの通販事業の基幹部分からテコ入れの必要な施策が書かれているので、すでに事業の運営を始めてしまっているとなかなか方向転換で気なくなってしまいます。
「100%確実に」といっているので実践できればどんなジャンルでも効果は出るはずですが、最初からやらないと切り替えが大変なので、ぜひ始める前に読み、従うか従わないかを決めましょう。
その他のおすすめ本3選
通販全般とマーケティングに関するおすすめの本を3冊づつ紹介しましたが、その枠に入らなかったけど読みがいのあった書籍を追加で3冊紹介します。
ネット通販の一番の成功者といえばもちろんアマゾンですが、米国の靴専門ECのザッポスも別の意味で成功を納めています。
この本は、ザッポスのCEOであるトニーシェイが、いかにしてネット靴屋ザッポスがアマゾンの1000億円で買収されるまでに至ったかを書いた自伝本です。
スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグなどの成功者の伝記は、ビジネスマン向けの自己啓発本的位置付けであり、この本もその一面が大きいです。
しかし、事業内容が靴ECであるがゆえに、通販が拡大するために必要なこと、今後起こりうる課題、どうやって乗り越えてきたか、が赤裸々に書かれているので、自分としてはもはや通販本とカテゴライズしています。
この本は、現存する有名ブランドがどの様に育ち、崩壊し、立て直したかを具体例で語った本です。その中で、ブランディングを成功させるために必要な要素を22個挙げています。
マーケティングやコピーライティングと違って、ブランディングはアート的な側面が多く再現性がないと考えられています。
成功例のパクリは難しくても失敗例はサイエンスできそうなので、独りよがりで誰得なブランドを作ってしまったり、せっかく育ちつつあるブランドを崩壊させてしまう前に、ぜひ一読するのをお勧めします。
PRが上手いから売れた!という話を聞いたことはほとんどありませんが、売れているブランドはPRがしっかりしていて、メディア露出しています。
きっと、勢いを落とさずマス市場に広げるためには戦略的なPRが重要になるのでは?と考えています。立ち上げ時というより成長時に重要になるはずだと信じています。
この本は、コンセプト作りとメディアの当たり方を中心に、PR戦略の方法について書いてあります。
たとえすぐに活かせなくても、事業設計の段階で、「このプロダクトはメディア受けするか?」「どんな輪郭を作ればメディアが取り上げやすいか?」を考えることはとても価値があると思うので、早めに一読することをお勧めします。
以上です。
なお、「この9冊を読むとD2Cの成功確率が上がるのか」はまだABテストしていません。
本を読みすぎると固定観念に縛られてしまい新しい発想に行き着かない場合もありますが、読んだ上で信じるか信じないかを決めた方が利口だと思うので、ぜひ9冊をお試しください。
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