--SS|春暁
ああ、春の眠りは何で心地いいんだろう。
最近は寒い日ばかりだったから尚更だ。
布団の中から窓の外に目をやると、もう陽は昇っている。
夜明けにも気づかないほど気持ち良い眠りだったんだな。
アラームを止めて静まり返ったこの部屋。
耳をすませば、あちこちから小鳥のさえずりが聞こえてくる。
なんてのどかな朝なんだ。
記憶を辿ると、昨夜のことを思い出す。
毛布にくるまっていても、激しい風雨の音が僕の耳には届いていた。
花はどれほど散ってしまったんだろうか。
そんなことをぼんやり思いつつも、布団のぬくもりに屈した僕は、再び目を瞑った。
四月上旬の朝。
昨夜の風雨で散った桜を惜しみつつ、学校には多くの親子の姿が。
春の眠りに沈み、入学式に遅れた彼の有り様には、杜甫も絶句することだろう。
- Fin -
モチーフ:春暁 - 孟浩然
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