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【Tap09】結城麦酒(茨城)

 異業種からの転身が珍しくないクラフトビールの世界ですが、結城麦酒の塚越敏典さんは、中学校の元校長先生というユニークなキャリアの持ち主です。

 2018年3月に地元の結城中学校長を定年退職し、一度は県内の美術館職員に高待遇で収まったものの、「教え子たちにずっと、『失敗を恐れず挑戦しろ』と言い続けてきたのに、自分がのんびりと第二の人生を送っていていることに疑問を感じ始めました」と一念発起。
 そこで思い至ったのが、地元・結城市に新たな名産を創り出すことでした。

「何か新しいことを始めるにしても、還暦を超えた自分が元気に動けるのは、どう頑張っても20年程度。では、たった20年でこの生まれ育った結城市に名を残すにはどうすればいいかと考えたら、まだこの地域にない新しいものを創るのが手っ取り早いと思いついたんです」(塚越さん)

 熟考を経て、流行りのクラフトビールに白羽の矢を立てた塚越さんは、栃木県のブルワリー(醸造所)で修行に励み、2019年7月に結城麦酒を設立。「味来(みらい)」という結城産トウモロコシを使った『ゆうきみらいALE』を始め、地産の食材を積極的に活用したビールづくりを続けています。

 座右の銘は、教員時代からの口癖でもあるという「NO PLAY、NO ERROR」。ビール業界では遅れてきたルーキーながら、着々とファンを増やし、存在感を発揮しています。
 塚越さんのキャリアは、人生100年時代におけるひとつのロールモデルになりそうですね。

〈Text By Satoshi Tomokiyo〉

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