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一乗寺ブリュワリー(京都)

 つくり手の側に注目してみると、クラフトビールには脱サラ起業の手段であったり、地方創生の一端を担ったり、その発端にはさまざまな背景があることがわかります。
 京都市左京区にある一乗寺ブリュワリーのそれは、“福祉”でした。

 オーナーの高木俊介氏は、ACT(Assertive Community Treatment)と呼ばれる日本初の往診型精神科診療を実践した医師。一乗寺ブリュワリーは将来的に、精神病患者の雇用の場として活用する狙いから立ち上げられたブルワリーなのです。

「精神障害者への社会復帰支援は、大きな社会課題の1つ。そこでこのブルワリーを解決の足がかりにしたいとオーナーは考えたわけですが、なぜビールだったのかといえば、ほどなく全国的なクラフトビールブームが到来するであろうことを予見していたからでした」

 そう高木氏の先見の明を語るのは、ブルワーの横田林太郎さんです。実際、一乗寺ブリュワリーは2011年の創業以降、着々と存在感を増し、中京区に開いた公式タップルーム「ICHI-YA」も大盛況。今後ますます存在感を増していくことになるでしょう。

 なお、一乗寺とは左京区の北東部にあたるエリアで、平安中期に存在した天台宗の寺院に由来する地名です。
 そんな由緒に相応しく、一乗寺ブリュワリーではこれまでほぼ全量を輸入に頼らなければならなかったビール醸造において、麦芽やホップなどの主原料の地産化を目指す「京都産原料100%ビールプロジェクト」に参画中。
 その成果の一端を、「ビビビ。」で提供する京都テロワールシリーズで味わうことができます。

〈Text By Satoshi Tomokiyo〉


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