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運動療法…入院中のウォーキング

「今日は午後3時から運動療法の講習ね〜」

そういう予定は当日決まるものなんだろうか。入院中に予定なんてないから参加は問題なくできるんだけど。

5分前行動で指定された談話室に行くと、すでに待っている男性がいた。でもドクターじゃない…同じ糖尿病患者だとは後から知った。

病棟の看護師さんが何人か来て、見たことない看護師さんが何人か来て、わたしのチームドクターの1人が来て、なんだか物々しい。患者は2人しかいないのに、スタッフが10人くらいいるんだもの。

3時を少し過ぎてから運動療法を指導してくれるドクターが、バーン!と入ってきた。

ドアを乱暴に開けたのではなく、なんというか縦にも横にも大きくて筋肉質で勢いがある人だからか、他のドクターたちとは異質な感じがした。

プリントを配られて、糖尿病の管理に運動療法がどう大切かということと、そのやり方をレクチャーされた。

ではちょっとやってみましょう!と言ってわたし達の足元をみて「ううん?」と唸ったら、チームドクターが「2人とも緊急入院だったんです!」との説明。なんでも入院にあたってはかかとのある履物で、というのが規則らしい。わたしも彼もスリッパだったのだ。

病室にはありますから取ってきます、ということで仕切り直し実際に廊下をウォーキングすることになった。周りはゾロゾロと白衣のスタッフだらけ。みんな振り向くし恥ずかしい。

背筋を伸ばし、腕は軽く曲げて、目線は10mくらい先、足はかかとから下ろす。少し汗ばむ程度のスピードが理想、平常時の脈拍の1.1倍くらいで…と注文の多いこと。

15mを2回歩いた程度で解散になった。でも今日の夜から毎食後30分歩いてね!と言われてビックリ。

入院前、体が疲れやすくて近所のスーパーマーケットには自転車でしか行かなかったことを考えると、30分✖️3回は果てしない運動量に思えた。

夕食後30分休んで、ナースステーションに始めることを申告し、病棟の中をぐるぐると歩き始めたら10分も経たずに息切れしてきたし、疲れてきた。30分歩くなんてとても無理に思えた。後半の10分は足がもつれてヨロヨロしたし、喉はカラカラだし、とにかく早く時間になることだけを願っていた。

部屋に戻りベッドにドサっと体を投げ出して、アドバイス通りにたくさん水を飲んだ。

翌日から嫌でも歩かなければならない雰囲気で、ひたすら30分が終わるのを願いながら歩いた。看護師さん達はひょいひょいと避けてくれる。すごく慣れた感じで。

だけど病棟の入院患者は物珍しげな視線を送ってきた。呼吸器内科と整形外科の患者が多かったから、てくてくてくてく早足で歩いてるのは「なんだあれは」と思われていたんだろう。

目が合うのに無視もできず目礼しながら歩いた。朝と昼はお掃除係の人や介助専門の人たちもいるので、おはようございますの挨拶もしながら。

歩き始めて4日目を過ぎると少しずつ体が慣れてきたし生活の一部になってきたので、歩き出すのは苦ではなくなったけれど、やはり25分頃には足元がふらついていた。時々もう1人の糖尿病患者のおじさまと廊下で出会った。彼は食後すぐに歩くことにしているらしく、わたしが始める頃にはもう部屋に帰っていくことが多かった。足元は家族に持ってきてもらったらしいスニーカーだった。

その後日に日に慣れてきて、掃除係の方に「だいぶシャキッと背筋が伸びてきましたね」とか、介助専門の方々に「がんばってね!」と励まされたりして、気分も上向きになってきた。

チームのドクター達も廊下で会うたびにニッコリしてくれるので、ちょっと嬉しかった。褒められて伸びるタイプなのだ。

昼食後のウォーキングをした後、風呂に入るのも日課になり、食事が不自由…とても少ないこと、を除けばなんで入院してるのかわからないくらい元気に見えたと思う。

ただ、運動してる割には便秘が治らなかったし、血糖値も思うように下がらなかった。食事もガマンに我慢を重ねてるのに。一日4回の測定のたびに一喜一憂していた。


退院前に不安だったのは、運動量が減ることだった。

毎食後歩けたのは、ベッドから起き上がって部屋から出ればそこがウォーキングコースだったから。化粧もせず、日焼け止めもつけず、パジャマのままで始める気楽さがあったから。退院後は何かしら運動できる服を着なければ。でもワンピース派でインドア派なので、使えるような服を持っていなかった。

ドクターの「週に3回、30分歩くのを目標にしてください」を聞くまでは。週に3回か、それならできそう。でも血糖値は上がるんじゃないかと不安だった。

退院して次男の時計や昼食のパンなどの買い物をしてから家に帰ったのだけど、ウォーキングをしていなかったら、間違いなく病院から家までタクシーで一直線だったと思う。

14日間のうち9日間ウォーキングをしていたせいか、街の喧騒は戸惑ったけれど足元は確かだった。

翌朝から、食後1時間後にウォーキングを始めることになる。



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