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フィッシュマサラクラブ

私の祖父は漁業に興味を持ち、戦後間もない日本にインドからやってくることにしたらしい。

日本の色々な漁港を視察して、興味を持ったのは「かまぼこ」だったらしい。故郷のインド西部にあるグジャラート州でも4隻の船を購入し漁業を始めたがそこまで上手くはいかなかったらしい。

意識したわけではないが、鎌倉という海の近くで育ち、海がある環境に縁を持つことが多くなった。最近では広島県の尾道に10年近く通っている。ポコポコとした瀬戸内の島々を巡ってみたいと思い「フィッシュマサラクラブ」なるものを勝手に作り、仲間たちと島々で勝手にカレーを作って提供している。作れば作るほど面白く興味が湧いてくる。スパイスも魚も。こんなにも身近に海があるのに、魚についてあまり知らないことをクラブ活動をするたびにまざまざと突きつけられる。

年も変わったし何か新しいことをやろうということで、鎌倉でもフィッシュマサラクラブを立ち上げることにした。スパイスを通して魚を知ることが目標の一つである。常に挑戦的で向上心があるようなクラブ活動にしたかったので、第一回目のテーマを「マグロ」としてみた。これもここ数年なにかと縁がある三浦半島の三崎からマグロを仕入れてもらうことにした。挑戦的な会なので赤身とかトロだとかいう部位ではなく「ハラワタ」「心臓」「尾の身」「卵」「カマ」「うらほほ肉」「目玉」といった部位を仕入れてきてもらい、それぞれを様々なスパイス料理にしていく活動としてみた。

油が多い目玉や尾の身はじっくりと煮込んで作るニハリにしてみたり、卵は刻んでキーマカレーにしてみた。心臓はアチャールに、うらほほ肉はヴィンダルー、ハラワタはチャートサラダにした。どれも思っていたより美味しく、良い感じになり経験と自信が付いた。さらなる向上心が増すような結果となった。

縄文時代から日本ではマグロが食されているらしい。鮮度落ちが早いマグロは扱いづらく、長い間あまり人気がある魚ではなかったといわれている。それは戦国時代も江戸時代も明治や大正時代になってもあまり変わらなかったそうである。江戸時代になり醤油が広まると漬けにして食べる食文化が広まった。マグロをある程度保存できるようになるが、今のような高価で人気が高くなったのは昭和の時代、1960年ごろだといわれている。冷蔵技術が発達し、鮮度を保てるようになったのがきっかけなのだとか。脂身が多く人気がなかったトロも今では高級食材である。スパイスの歴史から見ると対照的でとても面白い。高価だったスパイスは冷蔵技術が進歩したことによって保存する術や、流通手法が変わっていき昔ほど重宝されなくなった。それに伴い価格も下がっていったそうである。

歴史的に価値が伸びていったマグロ、下がっていったスパイスがフィッシュマサラクラブで交わった。冷蔵技術がトロの価値を高めたように、目玉や尾の身、心臓などの部位もスパイスと一緒になることで価値が上がっていくかもしれない。

ますます「魚」が面白い。今後のフィッシュマサラクラブが楽しみである。

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