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瀬戸内海の小さな楽園

穏やかな海に浮かぶ小さな島々を眺めるような斜面に畑はある。その土地で育てられる野菜やハーブたちが眩しい日差しと優しい潮風を浴びてすくすくと育つ。羊や豚たちがともに暮らしている環境は誰もが世界の一部である。

「Pitchfork farm」(ピッチフォークファーム)と名付けられた土地はまるで小さな楽園のようだ。植物も動物も環境もそれぞれが与えられた役割を、与えられた環境で自然体に全うしようとしている姿がいつか聞いたアメリカのケイジャン料理を思い出させる。

ケイジャン料理は「素朴な料理」として紹介されることもたまにあるが、今の東カナダ、アカディア(Acadia)と呼ばれた土地から迫害され南部アメリカのルイジアナに移り住んできた人々が作りあげた料理である。元々はフランスからの移民、17世紀初頭にアカディアに移り住み、18世紀中頃に南部アメリカへと移り住んで行った。気候や環境の変化により現地に住んでいた人々の料理手法や現地の食材を活用して新たな料理を生み出していった。それが今に伝わるケイジャン料理(cajun cuisine)だとも言われている。小麦粉と油で濃い色のルゥを作りシーフードやソーセージ、野菜などを一緒に煮込む「ガンボ(Gumbo)」。米、野菜、肉で作られるスペインのパエリヤが起源とも言われている「ジャンバラヤ(jambalaya)」。玉ねぎ、セロリ、ピーマンはケイジャン料理には欠かせない3種の野菜たちであるそうだ。

そしてどの料理にも欠かせない、そしてケイジャン料理をケイジャン料理たらしめているのは独特のスパイスの配合で作られているケイジャンスパイスミックスであろう。カイエンペッパーを効かせ、オレガノやパプリカ、塩、胡椒、タイムなどでミックスしてあることが多い。

羊たちが開墾していく島の畑を見たときに、ケイジャンのようなスパイスミックスが作りたいと思った。移り住んできたアカディアの人々がフランス、スペイン、西アフリカの料理の知識を元に現地で採れるものを活用して新たな料理の文化を作っていったように。フランスから移り住み、もともと住んでいた人々と調和し共生していったアカディアの人々の歴史が料理の背景にも見えるように。共生と尊敬が環境を豊かにしてくれるのであろう。

スパイスと料理には食、人、土地、環境を活かす力があるのだと思う。

世界の様々なスパイスを使った料理や配合を知り、体験し様々な環境や土地に活かしていく。

私もいつかは小さな楽園の一部になりたい。

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