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企業は何ができる?〜IT業界のジェンダーギャップについて考える〜

私たち、bgrass株式会社は《「なりたい」を解放する》というミッションのもと、日々テック業界のジェンダーギャップ解消に取り組んでいます。

さまざまな活動を行なっていますが、特に重要だと考えているのは企業や社会を巻き込み、協力し合うことです。より多くの企業がテック業界のジェンダーギャップに目を向け、DEI推進に取り組むことで社会全体が良い方向に変わっていく、と私たちは考えています。

今回は、DEI推進を積極的に行っているかつ、社内でsisterを利用してくださってる株式会社エーピーコミュニケーションズ(以下APC)様から、取締役副社長 永江 耕治さんと、社長室広報グループ 小松 千恵さんをお呼びして、bgrass代表取締役の咸(だむは)が対談を行いました。

【IT業界で働く女性向け相談支援プラットフォーム「sister」とは】

sisterとはキャリアコンサルタント・コーチング等の資格保有者や、1on1の経験が豊富なIT業界経験者や、多種多様な20名以上の女性メンターと1on1をすることができます。また、キャリシスというIT業界の女性が組織を超えて一緒にキャリア開発することができるプログラムなどを提供しています。


【株式会社エーピーコミュニケーションズ様の紹介】

【会社名】
株式会社エーピーコミュニケーションズ

会社紹介】
お客様のことを真剣に考えられるエンジニアを育成し、熱狂できるキャリアパスを創出し、パフォーマンスを最大化できる環境を創り、従来の慣例に捉われずに工夫と挑戦を行い続けるNeoSIer(ネオエスアイヤー)です。
ITインフラ自動化のプロフェッショナルとして、お客様の課題解決のためにAzure Kubernetes ServiceやAnsibleなどを用いたクラウドネイティブ環境の内製化・自動化支援や、システムインテグレーションを行うと共に、「エンジニアから時間を奪うもの」をなくすプロダクト・サービスを提供しています。


対談者紹介

取締役副社長 永江 耕治

取締役副社長 永江 耕治

【プロフィール】
Webエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、2002年に株式会社エーピーコミュニケーションズに入社。
SIベンダーでプリセールスから設計・構築までを行うプロジェクトにエンジニアとして参画しながらマネジメントも兼務。その後、人事部門に異動。業務と並行して、MBA(2012年卒。中央大学大学院/人的資源管理専攻)を取得。16年にITインフラ部門へ戻り、部下250名を抱える事業部責任者を務める。18年に取締役副社長に就任。


社長室広報グループ 小松 千恵

社長室広報グループ 小松 千恵

【プロフィール】
パティシエからネットワークエンジニアに転身し、2004年に株式会社エーピーコミュニケーションズに入社。
エンジニアからマネージャーを経て、2016年に同社の広報担当となる。

【株式会社bgrassの紹介】


【会社名】
bgrass株式会社

会社紹介】
「なりたいを解放する」というミッションのもと、IT業界のジェンダーギャップ解消を中心に活動している。「sister」というIT業界の女性向け相談支援プラットフォームを運営し、いつでもIT業界の女性と1on1やキャリア開発支援ができる環境を提供することで、IT業界で働く女性のキャリアの選択肢を増やしていけるようにサポート。さらに、企業向けにDEI推進のヒアリングや相談なども実施中で、今後は企業や業界の環境も変えていけるような活動を実施予定。


代表取締役 咸 多栄
(だむは)

【プロフィール】
bgrass株式会社代表取締役兼エンジニア。韓国生まれ日本育ち。新卒でSIerに入社。新規部署の立ち上げメンバーやグローバル案件のプロジェクトリーダーなどを経験。2020年にWeb業界にキャリアチェンジし、サーバーサイドエンジニアとして開発に携わる。現在はbgrass株式会社を設立し、自社のサービスである「テック業界で働く女性のための相談・支援プラットフォーム『sister』」を運営する傍ら、エンジニアとしても活動中。TECHPLAY女子部のコミュニティオーガナイザーとしてコミュニティー運営にも携わるなど、テック業界のジェンダーギャップ解消の活動を精力的に行なっている。

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【継続的なダイバーシティに関しての取り組み】

ーー早速ですが、APCさんは具体的にどのようなDEI推進の活動を行っているのでしょうか?

永江: 具体的な動きとしては、2年くらい前から私と小松を含めた4人で「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を考える会」(以下「D&Iを考える会」)を始めました。一番最初は、特にLGBTQに関してがメインのテーマでしたね。

ーー東京レインボープライドへの協賛も行っていると聞きました。

永江: 前々から興味を持っており、2021年から協賛を始めました。協賛特典としてレインボープライドさんから講師を派遣していただけるのですが、ここ2年はLGBTQに関する考え方や知識の不足を補い揃えるための研修をお願いしてきました。

ーーすごく良い取り組みだと思います!他にはどういった研修を行ってるのでしょうか?

永江: アンコンシャスバイアスの研修を全社で実施しました。今は「ダイバーシティを考える会」のメンバーの一人がトレーナーになって、定期的に新しく入ってくる社員たちにアンコンシャスバイアス研修を行なっています。

ーー様々な活動に取り組んでいるんですね。そういった研修に関することや東京レインボープライドへの協賛などは「 D&Iを考える会」で話し合っているのでしょうか?

永江: そうですね。アンコンシャスバイアスの研修のときは「どんな風に研修をしていくか」とか、終わった後には参加者のアンケートを見てコメントを出し合ったりしました。「 D&Iを考える会」は隔週くらいでやっていて、継続的にダイバーシティ&インクルージョンに関わるところについての話題を議論しています。

だむは: そういった議論の場があるのって大事ですよね。

【世界的に見たとき、このままでいいのか】

ーーAPCさんがIT業界のジェンダーギャップに取り組みはじめたきっかけを教えていただけますか?

永江: まず、APCは女性の比率が少ないんですよ。12%ほどしかいなくて。でも、それってIT業界、更にはITインフラという点で見ると、特別低いというわけではないんです。

だむは:12%って低いように見えますけど、IT業界ではそんなに低いわけではないですよね。

永江: そうなんです。でも、「世界的な視点で見る日本」という点で考えると「日本を基準にして考えていいのかな 」 という問題意識があったんですね。採用責任者とも「女性比率を上げるには」 ということも話し合ったりもして。でも、難しいんですよね。

ーーどういった点が難しいと思ったんでしょうか?

永江:  女性の比率を増やすには女性を採用していく必要があるんですけど、そもそも女性のITインフラエンジニアの絶対数が少ないので求職者があんまりいないんですよ。応募がゼロではないんですけど、元々少ない。そうなると新卒の採用をする以外で、女性を増やしていく方法がないんです。

だむは: 難しいところですよね。

永江: そこで、私が「採用目標みたいなのを作ったほうがいいんじゃない?」という話を、「D&Iを考える会」でしてみたんです。そうしたら小松とか、他のメンバーから「いやいや、そうじゃないでしょ」って(笑)

小松:(笑)

永江: 「ちゃんとWHYから考えないと」って言われて(笑)。もちろん考えていなかったわけじゃないんです。今のAPCは、役員層の属性がかなり偏っていて、30代後半~40代の男性がメインで、女性や20代はいません。

永江: 現状で何か不具合があるわけではないのですが、これから世の中の不確実性が高まっていく中で「同じような属性の人ばかりで大丈夫だろうか」という漠然とした不安を感じていました。

ーーそこがスタートだったんですね。

永江:  はい、この「漠然とした不安」と「女性比率を上げること」の関係性を言語化する、というところから始まりました。

【そもそも何でだっけ?から考えていく】

だむは: 小松さんに質問なのですが、小松さんは永江さんが「ジェンダーギャップの問題」を取り上げてきたとき、どう思いましたか?

小松: 正直、私自身はこの業界で働く上で、女性としての不自由さをあまり感じてはいなかったんです。ただ、IT業界に女性の人数が少ないことの他に、ライフイベントとキャリアの両立という点でも難しい業界であることは間違いないという認識はありました。

小松: 最初に永江が「女性の活躍を推進する」という点でKPIを設けるという話をしたとき、まだ「何で女性なんだっけ?」が明確になっていなかったんです。なので、世の中的に「女性推進」という流れがあるから言い出したのかなと思いました(笑)

だむは: そこから「WHYから考えないと」という話に繋がるんですね。

小松: そうです(笑)やっぱり、「そもそも何でだっけ?」から考えないと、納得感が得られないと思うんです。そこから考えましょうよという話をしました。

だむは: いいですね。「そもそも何でだっけ?」から始める。実際に「どうしてやるのか?」を考えずにとりあえず研修する、という会社さんも多いと感じています。研修が終わった後どうしていくかが大事だと思うのですが、「どうして?」を考えられていないと上手くいかないことが多いんですよね。

だむは: あと、トップに「そうじゃない」とはっきり言える環境っていうのもすごいですよね。なかなかトップには言いづらいと思うので。

【誰が語るか、当事者の信頼性】

ーー続いて、APCさんとsisterの繋がりについて伺っていきたいと思います。永江さんのツイートが発端になったと聞いていますが、実際どういった流れだったのでしょうか?まずはだむはさんからお話お願いします!

だむは: sisterをリリースして会社も立ち上げたばかりの頃、何か反応あるかな?ってエゴサをしてたところに、ちょうど永江さんがツイートをされてたんです。これはもう行くしかない!という感じで声をかけさせてもらいました(笑)

一同:(笑)

だむは: 「うちの会社でも、sisterに興味あるのかな?」って言ってくれる企業さんって、きっとまだまだ多くないと思うんです。そのため、永江さんのツイートを見た時は「IT業界のジェンダーギャップに関して課題感を持って考えているんだな」と思いました。

ーーアンテナを貼ってないと気付けないところでもありますもんね。永江さんは、どういったきっかけでsisterを知ったのでしょうか?

永江: 実は前からだむはさんのことを知ってたんですよね!

だむは: え!そうだったんですか?

永江: 1年くらい前から知っていました(笑)sisterをリリースすると知って「うちの女性社員で、sisterに興味がある人がいたら支援しようかな」と思ってました。

ーーありがとうございます。嬉しいですね、、、
永江さんと小松さん、お二人のsisterに対する印象をそれぞれ聞かせてください。

永江: 意外と似たようなサービスってないですよね。現役の女性のエンジニアが相談に乗ってくれるみたいな。当事者意識というか、誰が語るか、みたいなところは結構大事だと 思っているので、女性のエンジニアであるだむはさん自身がsisterみたいなサービスを立ち上げている。そういう点が印象に残ってました。

小松:  女性のエンジニア同士で相談ができたり、コーチングし合える環境っていいなと思いました。 本当は社内でそういった環境を作れれば良いのですが、社内に相談できる人ってあまり多くはないんですよね。

だむは: やっぱりIT業界は女性が少ないですもんね。

小松: そうなんです。だけど、当事者にしか相談できないことやアドバイスってあるじゃないですか。だから、sisterの「同じ女性エンジニアという立場で、同じ経験をしていて、ロールモデルになる人が話を聞いてくれる、今後困った時に頼れる場所である」という点がすごく素敵なサービスだなと思いました。


【多様性のある組織は働きやすい】

ーー先日、sisterから数名APC様向けにオンラインでsisterの説明会と座談会を行いました。その時のお話を聞かせてください。参加した社員からの反響などはありましたか?

小松: 終了後のアンケートでは好評でした!やっぱり「ロールモデルが見つからない」「どうやってライフイベントとキャリアを両立させるか悩んでいる」という理由で「sisterを使ってみたい」と興味を持った人が多かったです。

だむは: 実際に、座談会をきっかけにsister 1on1を始めた社員さんもいますよね。嬉しいです。

小松: そうですね。他に「女性社員で集まって話す機会も作ったらどうか」という声もあったので今後実施したいと思ってます。

ーー良いきっかけになったようで良かったです!次にsisterを実際に利用してみた後で、APCさんがsisterに期待していることなどあれば教えていただきたいです。

永江: 大きな話からいくと、会社として女性の割合が増えたらいいと考えているんです。もっと言うと、女性に限らず多様性のある組織が良い。多様性のある組織って大変なことも多いとは思うのですが、乗り越えてしまえばジェンダーやマイノリティ関係なく働きやすい環境になると考えているんです。

だむは: その通りだと思います。働き方の選択肢の多さって大事です。

永江: だけど、現状私たちの会社には多様性があるかというと、そういうわけではないんです。そうなると、できることとできないことが出てきます。先ほど話題に出たように、当事者にしか分からない悩み相談とかですね。社内で全部なんとかするよりも、社外のサービスも 積極的に活用 したほうが良いと思ってます。

だむは: sisterのようなサービスってことですね。

永江: はい。sisterでは社内で出来ないことをやってもらっています。それで結果的に、APCの女性エンジニアに「すごくサポートしてもらえてる」と感じてもらえて、定着が進みつつ、新しい女性社員が入ってくる 、というように繋がっていくのが理想です!

小松: 私としても、sisterには女性社員の拠り所になることを期待しています。あと、別の視点からだと色んなステークホルダーに対して会社の思いを伝える一つの要素 になりえると思ってます。

だむは: 会社の思いですか?

小松: 「社内で解決できないことを社外のサービスを利用してでも解決する」という姿勢というか、思いですかね。こういう姿勢って、これから入社する社員だけではなく、社員の家族を含めた周りの人も安心できると考えています。

ーーありがとうございます。ここまでsisterの良いところばかり聞いてしまっているので(笑)不安要素などもあれば教えてもらいたいです。sisterを利用する上で懸念点などはありましたか?引き抜きや転職のリスクなども考え方によってはあったと思います。

永江: あるなしでいったらリスクはありますよね。でも、私の考え方としては、あまり考えすぎてもしょうがないなと思ってます。私が経営的にできることはより会社を魅力的にしていくことの努力で、sisterはどちらかというと魅力的にしてくれる要素になり得る

永江: sisterに限らずそういったサービスを使っていくという選択をしていきたいと思ってます。

【まずは現状を把握する】

ーーだむはさんに伺いたいのですが、今後sisterの1on1を導入しようと考えている企業にどのようなことを期待していますか?

だむは: sisterを導入したいと考えている企業さんって、社内のジェンダーギャップや多様性の部分に課題感を持ってると思うんです。なので、まずは自分の会社の現状や、「どうしてsisterを利用したいと思ったのか」「どういう課題があるのか」みたいな根底の部分を理解してほしいです。

まずは現状と照らし合わせて自分の会社に何が必要か、どういう制度や研修が必要なのかを考えていく。sisterはここも一緒に考えて行けたら良いと考えています。その結果、利用してもらえたら嬉しいんですけどね(笑)。

ーーまずは現状を知ること。確かにその通りだと思います。その考えでいくと、今回の対談を通じてAPCさんはその点がとても上手くいっていると感じました。何か工夫されている点などあるのでしょうか?

永江: ここ5年くらいで言うと、情報の透明性を高めてますね。あとは、構造的にも自己組織化を目指してます。すぐに達成することは難しいので、状況に応じて課題感の把握をするようにしてます。

永江: 状況の可視化という点では、私自身が毎週何かしら情報を発信して、そこにレスポンスを返してもらったり、社員と話したりなど探りながらやっています。状況を把握して、課題が見つかったらそれに対して手を打ち続けるみたいな感じが工夫点ですかね。

だむは: 毎年同じ手は打たずに状況に応じて変えていっているんですね。

永江: そうですね。一応そうできてるつもりなんですけど、社員視点だとどうだろう(笑)
小松: できてますよ!(笑)
永江: 褒められた!(笑)

【人を育てて、母数を増やしていく】

ーー最後にIT業界のジェンダーギャップについて、企業側でできることがあれば教えてください。

永江: まずは社員の比率を変える努力が一番ダイレクトに響くんじゃないでしょうか。短期的に女性の社員を増やしていく、っていうのはどうなんだろう?というころがあるので、色んな場所で母数を増やしていくことが大事だと思います。

だむは: 確かに、母数が増えれば必然的に女性の数も増えると思います。

永江: そうなんですよね。でも、これは女性に限らないのですが、IT業界全体で人手不足ではあるけど、楽して人を雇いたいという企業が多いんですよね。大きな企業とかでも、人を育てるというよりも、育った人を引き抜いていく所が多い。たけど個人的にはそのやり方はしたくないんです。人を育てていきたいですね。育てることを諦めたくないし、こだわっていきたいです。

だむは: 育てることを諦めない。とても、重要なことだと思います。

ーー永江さん、小松さん、だむはさん本日はお時間いただきありがとうございました!

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bgrass株式会社では、ジェンダーギャップやDEI推進をに取り組もうとしている、IT企業の考えやご意見、課題などのヒアリングをさせていただきたいと考えています。また、一緒に課題を解決するために伴走したいと思っています。

もし興味を持っていただいた企業様はぜひこちらのお問い合わせからご連絡ください。


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